クローズアップ現代+「なぜ相次ぐ?公文書問題 省庁幹部が実態証言 現場で何が」[字] 2018.04.17

174月 - による admin - 0 - 未分類

きのう、防衛省が公表した435日分およそ1万5000ページの日報。
自衛隊が派遣されていたイラクのサマーワで戦闘が起きていたことが記されていました。
その現場の実態を知るための貴重な記録が存在しないとされていたのです。
森友学園を巡る決裁文書の改ざん。
ないとされていた加計学園の獣医学部新設に関わる文書も発覚しました。
公文書は国や行政が政策決定のプロセスをありのままに記録し後世に残すためのものです。
この民主主義の根幹が今、大きく揺らいでいます。
今回私たちはイラク派遣の日報について自衛隊の幹部たちの証言を独自に得ました。
このイラク派遣の日報は公表の機会が何度もあったにもかかわらず見逃されてきました。
そもそものきっかけは去年2月防衛省が南スーダンPKOの日報を「破棄した」としていたことが国会で問題となっていたことでした。
このとき、野党の議員からイラク派遣の日報の調査も求められていたのです。
取りまとめに当たる統合幕僚監部は2月16日陸上自衛隊などに調査を依頼するメールを送りました。
実際に送られたメールの文面です。
「議員より資料要求がありました。
該当する日報が行政文書として保管されていないか確認をお願いいたします。

返答の期限はこの日の午後3時。
メールが送られてから僅か3時間半後でした。
限られた時間の中、各自衛隊ではイラク派遣部隊と直接連絡を取っていた部署だけを調査。
「存在しない」と回答しました。
その4日後。
当時の稲田防衛大臣は、国会でイラク派遣の日報について問われ次のように答えました。
稲田大臣は防衛省に「イラク派遣の日報は存在しない」と断言したのです。
ところが、2日後の2月22日。
稲田大臣は国会答弁の打ち合わせの際に「イラク派遣の日報は本当にないのか」と発言します。
再び統合幕僚監部から自衛隊にメールが送られました。
「皆様からは保管されていないとの回答を頂いたところですが大臣より「イラクの日報は本当にないのか?」とのご指摘がありました。
探索いただき無いことを確認いただいた組織・部署名をご教示いただけますでしょうか」
防衛省は「稲田大臣がイラク派遣の日報を探すよう指示したものだ」としています。
しかし、調査を指示する明確な文言はなくすでに調査を終えた部署名の問い合わせだと受け止められる内容でした。
現職の自衛隊幹部は大臣の指示は通達などの正式な文書で出すことが多くメールで伝えられることはほとんどないと言います。
指示があいまいだった結果調査が一部の部署でしか行われず日報を見つける最初の機会を逃していたのです。
国会で「存在しない」とされたイラク派遣の日報。
実際にはその翌月に見つかっていました。
南スーダンPKOの日報が隠蔽されていたことが発覚し大規模調査が行われたときのことでした。
海外派遣の検証などを行う陸上自衛隊の研究本部でこれまで調査していなかった外付けハードディスクから電子データで見つかっていたのです。
しかし研究本部はこれを報告しませんでした。
その理由について防衛省は……としています。
ところが、この理由では説明がつかない対応をしていたことが明らかになりました。
研究本部で日報が見つかった去年3月27日。
実は防衛省に対してイラク派遣の日報の情報公開請求が行われていました。
しかし、その3日後研究本部は「存在しない」と回答していたのです。
なぜ誤った対応をしたのか。
防衛省は「詳しい経緯は調査中」としています。
現職の自衛隊幹部はそもそも情報公開への対応は本来業務ではないという意識が根底にあると証言します。
浮かび上がってきたのは公文書管理や情報公開への意識の低さでした。
去年7月以降南スーダンPKOの日報問題を受けて再発防止策が始まります。
しかし、一部で見つかっていたイラク派遣の日報が公表されることはありませんでした。
防衛省は再発防止策として全自衛隊のあらゆる日報を過去のものも含めて統合幕僚監部で一元的に管理することにしました。
しかし、そのとき出された通達の文書では「今後派遣される部隊の日報」という記載もあり対象の時期が過去を含むのか明確ではありませんでした。
指示を出す側も受け取る側も認識があいまいだったため過去にさかのぼった調査が十分に行われなかったのです。
また、一元的に管理するとした統合幕僚監部もそうした実態を把握していませんでした。
南スーダンPKOの日報問題を受けた再発防止策も機能しなかったのです。
VTRで見てきた去年7月以降も、自衛隊の上層部に日報が見つかったことが報告されながら、防衛大臣に伝えるのが遅れました。
一連の経緯について防衛省は、調査チームを立ち上げて調べています。
組織的な問題に加えて、公表しなかった背景に意図的なものがなかったかどうかも調査のポイントになります。
日報問題の取材に当たってきた宮原記者に聞きます。
南スーダンの日報を巡る問題が、あれほど取り沙汰されている中で、なぜまた、こんなことが起きたんでしょうか。
取材をしていて率直に感じるのは、防衛省内部で、公文書に対する意識が低いということです。
幹部を取材すると、公文書管理や情報公開は、本来業務ではないといった思いがあるとか、日頃、公開できない防衛上の秘密を扱っているため、情報公開への意識があまりないといった声が聞かれます。
去年、防衛省は、南スーダンの日報問題を受けて、再発防止に取り組むと宣言しましたが、今回、ないと言っていたイラク派遣の日報が8つの部署で次々見つかっていて、対策が十分であったとはいえない状況です。
再発防止策を打ち出したことで、もう終わったことになっていないか、徹底した検証が必要だと思います。
きのう公表された日報の中には、戦闘ということばが、複数、記されていましたね。
当時の小泉総理大臣が、自衛隊が活動している地域は、非戦闘地域だと、国会で発言していますけれども、このことが今回の公表の遅れに、なんらかの影響を与えている可能性はないんでしょうか。
日報には、自衛隊が活動したサマーワで、戦闘が拡大したなどの記載があり、現地の厳しい治安情勢が詳しく分かる内容でした。
ただ、それが公表の遅れにつながったかどうか、現時点では分かっていません。
今回、政治家など文民の統制に従うというシビリアンコントロールに問題がないか指摘されていますが、自衛隊はこの原則は絶対だとしています。
しかし、こうした指摘が出ること自体、防衛省・自衛隊は反省すべきで、今回の問題を重く受け止めて、今度こそ実のある再発防止策を徹底する必要があります。
行政学が専門で、公文書の管理に詳しい牧原さん。
この防衛省の日報問題だけでなく、財務省の決裁文書の改ざんなど、文書管理の問題が相次いでいますけれども、これ、何か共通する背景があるんでしょうか。
やはり対外的には廃棄したと言っても、実は持っていたと。
つまり、それは必要であったということだと思います。
やはり、それを考えるときに大事なのは、行政の文書の出発点は、ふだん使いの現在用いる文書、われわれ、現用文書といいますが、そこなんですね。
これを公文書管理制度の枠にのせるときに、管理簿に載せて一定の年数がたったあと廃棄か保存かを決めるということになります。
その廃棄か保存かというところに、恣意的でルールどおりに行われていないということになるんだと思うんですね。
どういう場面で、恣意的な判断がはいりこみがちになるんでしょうか
例えば政治家案件とか、国会対応でいろいろ質問されるとか、あるいはメディア対応で、いろいろ質問されることを、それを避けたいということがあるんだと思います。
公文書を巡る問題が相次いでいることを受けて、政府は、公文書管理についてのルールを定めたガイドラインを改定して、今月から新たな運用を始めています。
新たなガイドラインでは、例えば、行政の意思決定が適正かどうか検証できるようにするため、それに必要な文書は原則1年以上保存するなどとしました。
しかし、今、新たな問題が浮かび上がっています。
そもそも何を公文書として残していくのかということです。
NHKが独自に入手した原発事故からの復興に関する内部文書です。
環境省が3年前に作成しました。
当時、まだ方針が決まっていなかった帰還困難区域の除染を全域で行えば3000億円かかるという試算が示されています。
政府が除染の方針を決めるまでの議論の一端を知ることができるこの文書。
復興庁や一部の与党議員とも共有されていました。
NHKが環境省にこの文書について問い合わせたところ公文書だが保存期間は1年未満で廃棄したと説明しました。
ところが、この文書に関わった10人に取材した結果そもそも公文書かどうか職員によって認識に違いがあったことが分かりました。
「行政文書の体裁をしているいわゆる公文書。

職員の一人はこう証言。
しかし、ほかの職員は…「公文書という部類のものではない。
」「頭の体操のための資料だ。

職員の多くはこの文書を共有していながら公文書という認識さえなかったのです。
公文書として保存するかどうかの判断は担当した職員に委ねられているのが現状です。
個人的なメモと判断されれば公文書ではなく保存の義務はないとされます。
取材の結果除染費用の試算が記された文書は現場レベルでは公文書として扱われず廃棄されたと見られます。
こうした事態をどう見るのか環境省に問いました。
環境省は今職員を対象に研修を行い公文書と個人メモの線引きを適切に行うよう指導しています。
しかし、官僚からは公文書の管理を厳密にすればするほど形骸化するという声も上がっています。
新たなガイドラインでは外部との打ち合わせの公文書を作成する場合発言内容をできるだけ相手に確認することが求められています。
中央省庁の現役幹部はこの新たなルールによってかえって公文書の内容が薄まるのではないかと明かしました。
さらに公文書管理に関わった官僚は森友学園などの公文書を巡る問題を受けて特に政治家が関わる案件はそもそも公文書として残さなくなるといいます。
このままでは政策決定の過程を検証するという公文書本来の意義が失われると専門家は懸念します。
牧原さん、こうして見てみますと、残すべき情報が、公文書として保存されない、いわば抜け道がまだ残っているようにも見えるんですけれども、この公文書管理を適切に行うためにどうすればいいんでしょうか。
まず公文書管理の制度というものの前提にあるのは、やはり行政の文書、それは現場の行政官がどういう文書があるか、一番よく分かっていて、情報公開であれ、公文書の保存であれ、適切にそれをやってくれているという、そういう性善説に立っている制度なんです。
外からはそれがいいかどうか分からないんです。
悪いことやってるか、分からないわけです。
それが裏切られてるってことが今回分かってきましたので、やはり望ましいのは、できるだけ多くの文書をきちんと保存する、個人メモも含めて、基本は保存すると、そういうことだと思います。
そうなると、文書は大量なんですね。
非常に大量の文書がどこかで保存か廃棄かを選別しなければいけません。
そうなると、これを選別する専門家、アーキビストがやはりきちんとそれを見ながら、どれを残すべきかということを選別していくということが必要になると思います。
これ、諸外国ではそういう例があるんですね?
あるんですが、日本は諸外国に比べて、アーキビストの数が少ないんですね。
ですからもっと多くのアーキビストがこれに携わるということが必要になると思います。
公文書問題の取材に当たってきた志賀記者にも聞きたいと思いますが、一連の問題では、官僚だけではなく、政治にも責任があるのではないかというふうに問われているわけですが、政治の側はどう対応しようとしているんでしょうか。
国会では連日、一連の問題が取り上げられ、野党だけでなく、与党内からも、国会軽視は許されないといった、厳しい指摘が出ています。
安倍総理はきょう、責任を持って、うみを出し切っていくと強調しましたけれども、各社の調査で、内閣支持率が低下する中、政府が問題に危機感を抱いているのは間違いありません。
今後、新しいガイドラインに基づく、規則の運用を徹底し、より厳格に公文書を徹底する電子決裁システムへの移行を急ぐほか、公文書管理法の改正も含めたさらなる再発防止策の検討を進める考えです。
ただ、ルールをいくら厳しくしても、守られなければ意味がありません。
実効性のある対策に加えて、公文書がいかに大事なものなのか、再認識させる地道な取り組みも求められます。
こうした中で、残すべき公文書が廃棄されることがないよう、取り組みを進めている自治体があります。
保存期限を迎える公文書をどう残すのか。
相模原市では、その判断の際外部の目でチェックする仕組みを導入しています。
委員会のメンバーは行政や歴史の専門家そして公募で選ばれた市民。
専門性や市民としての感覚から文書を見ていきます。
この日は災害時の市の活動記録が書かれた文書などを残すかどうかが議論されました。
歴史資料の専門家からは東日本大震災に関わる文書は資料として貴重だと指摘されました。
委員会でチェックされた公文書はこれまで3万8000件。
このうち400件余りが保存されることになりました。
公文書管理先進地のアメリカでは、大統領などがホワイトハウスで残したメモは、個人的な走り書きでも、すべて公文書として保存されます。
また行政機関の高官がやり取りしたメールは、すべて公文書とされ、国立公文書館のサーバーに、自動的に保存される仕組みも導入しています。
公文書を適切に管理するということが、ひいては民主主義の基盤になるんだということを、政治も行政もそして私たち国民も、認識を深める必要があると思うんですが、いかがですか?
やはり、行政が文書を作っていく行政活動、それを文書に関して市民が検証していくということ、このプロセスが回るということは、実は行政も歴史を作っていく。
その歴史を、市民が検証していくっていうことだと思うんですね。
ですから、ネガティブにお互いチェックするよりは、共に歴史を作っていくという、ポジティブに歴史を作り、ポジティブに市民がチェックするという、そういうサイクルが必要だと思いますね。
ただ監視されているということではなく、前向きに歴史に参加していくというような。
市民も行政も、あるいは政治家も、歴史に参加していくということが必要だと思います。
今求められているのは、公文書がそのときどきの政策決定の過程を検証するための重要な財産だという認識を改めて共有することです。
今夜は!うお〜!うわっこういう感覚なんだ!2018/04/17(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「なぜ相次ぐ?公文書問題 省庁幹部が実態証言 現場で何が」[字]

財務省の決裁文書の改ざんや、自衛隊のイラクの日報など、相次ぐ公文書の問題。背景には一体何があるのか?省庁幹部が、実態を証言。再発を防ぐには何が必要か考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学教授…牧原出,【キャスター】武田真一,田中泉
出演者
【ゲスト】東京大学教授…牧原出,【キャスター】武田真一,田中泉

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 定時・総合

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