普段は、彼はひとりでAVを観ているけれど、この日は「観てもいい?」とからかうように訊いてきたから、あまりいい気持ちはしないけれど「いいよ」と答えた。
嫉妬深い私を気にして「怒らないの?」と訊いてきたが、「大丈夫」と答えた。本当に大丈夫だと思ったから。
私も隣りで横になりながら一緒に観た。AVとは不思議なもので、男性は興奮するのだろうけれど、女性の私は何も感じない。ただただ、女優の容姿と自分を比べてしまう。私は胸が小さいのだ。
飛ばし飛ばし、いろんなAVを物色していた彼が、ひとりの女優をゆっくり観始めた。美人で巨乳で足の長い女優だ。複雑な気分になる。私とは真逆のような気がしてくる。あぁ、本当はこういう女性が好みなのかな、と。
敏感な彼は、私が不機嫌になったのを、言葉を発していないにもかかわらず、すぐに察知した。
「怒ってる?」
「大丈夫」
「隠してもわかるよ」
「うーん、ちょっとだけ複雑」
「なんで?」
「なにが?」
「そっか」
会話をしながら、頭ではわかっているけれど嫉妬心は消えない。ああ、私って本当に嫉妬深い。
ほかの女性はどうなんだろう? 私の友だちはサッパリした性格の女性が多く、私の嫉妬深さは彼女たちの会話のネタになるくらいだ。おそらく私は一般的な女性より嫉妬深いのだろう。
機嫌を損ねた私を気遣ったのか、彼はAV鑑賞をやめた。
「おやすみ」
「おやすみ」
いつもならお互いくっついて眠るのに、そっぽを向いたまま。ケンカをした夜にはよくある体制だ。あーぁ、しょうもないことでケンカになっちゃうパターンかな。でも……AVを観てほしくない……いや、一緒に観なければよかった。
気持ちを切り替えて寝てしまおう、と思ったときに、彼が寝返りをうって、横を向いて寝ている私の横腹あたりにそっと手を乗せた。「仲直りしようね」の合図。わかっている。
けれど、すぐ意地になってしまう私は、無視して寝たふり。いつも後悔するくせに、意地になってしまう私の性格は、もう治らないのだろう。
そうこうしているうちに眠ってしまい、朝になる。起きてからはお互い(少なくとも私は)、いつもよりテンションが低い。
いってらっしゃいと見送って、帰ってくる頃にはお互い元通りになっているといいな、と思いながら仕事をする。
すると、彼からLINEが来た。普段は仕事が終わるまで私用でスマホを触らない真面目な彼。「お!」と思って開いた。
が、事務的な内容だった。
付き合って2年が経つのに、LINEひとつにドギマギしてしまうのは、本当に彼のことが好きだから。
部屋にひとり。はぁ。
そうして過ごしていたら、さっき彼からまたLINEが来た。もうぬか喜びはしたくない。慎重にスマホの画面を覗く。
そこには「なにしてる?」の文字。
あぁ、愛おしい。あぁ、大好きだ。
気にしてくれていたんだ。私だけが彼のことを大好きで、私だけが空回りしていたわけではないんだ。そう思えた。
でも、やっぱり意地になってしまう私は、まだ返事をしていない。でも、これを書き終わったら返信しよう。
うんち
えいえい!怒った?