辺りはあまり人気がなく、何となく帰り道で歩いていた矢先だった。
そのまま個室に追いやられ、脅された。
「黙ってれば殺さない」
自分よりも背が高く、とても抵抗出来る力は持ち合わせていなかった。
男性ホルモンの投与をしていれば女性よりも体は筋肉質になると言われているが、
日頃から鍛えているわけではなかったので、圧倒的に負けた。
大声を出すということが思いつかないくらいには、パニックだった。
人間、びっくりすると力も声も出なくなる。
体を触られ、股間に手が伸びた時点で、体が女性だということがバレた。
「お前女なのか」
男は私を男だと思って、襲ったようだった。
そんな希望的観測は、一瞬にして砕け散った。
「妊娠させてやる」
「女で生まれてきたくせに」
たくさんの罵詈雑言が降っていたが、私の防衛本能のせいか途中から聞こえなくなった。
ただ、屈辱的だった。
男性器を口に無理やり入れられた。
殴られるような衝撃と不快感が一気に襲ってきた。
男はいつのまにかいなくなっており、私は何とか家に帰ったようだった。
多少は受け止めて慰めてくれるかと思っていたが、恋人は怒りのあまりそれどころではなかった。
話したのは失敗したと思った。この件は自分の心にそっと閉じ込めておこうと思った。
しかし、自分の性別をカミングアウトすること、事の顛末を事細かく警察に話さなければならないことは、警察へ行くのを躊躇う要素になった。
先日、以前からかかっていた精神科の主治医が私の様子を察してくれ、話を聞いてくれた。
「警察にとっては、あなたのような被害があると知るだけでも情報になります」
声変わりをしているため、電話をかけた時点で男性だという認識で話が進んだが
根掘り葉掘り聞かれ、状況を喋っている途中で自分の性別を話すことになり、声が震えた。
名前や住所を聞かれたが、伏せた。
更に戸惑った声が聞こえた。
「大丈夫です」
自分のセクシャリティを名前とともに公表することは、簡単に譲れることではなかった。
電話を切り、一気に体の力が抜けて、震えた。
その日の夜は恋人と会って抱きしめてもらったが、何も言われなかった。
ただ寝る前に、「頑張ったな」と言われて頭を撫でられ、初めて泣いた。
何も言わずに怖い顔をしていた恋人は、加害者に対する怒りに震えながらも、それを私にぶつけることをせず
ただ冷静にじっと我慢し、現実を受け入れることに徹していたのかもしれないと、ふと思った。
もう泣くのも、この件で悲しむのも、この日で終わりにしようと思った。
女性の方も、男性の方も、私のような性別の方も、そうでない方も
性被害に遭い、声を上げられない方は、たくさんいるのかもしれません。
必ずしも声を上げることが正解ではないと思います。
得られるものが、失うものよりも必ず大きいとは言えないからです。
でも、声を上げれば、世界が変わるかもしれないというのも、また事実だと思います。
私は、この件を乗り越え、そして受け入れるべき過去として抱えながら、前を向いて、生きていこうと思います。
性的少数者であるかどうかはあんまり関係ない事件だよな・・・^^;
性的少数者だから余計にきつかったということだろ? ただ強姦されるだけでなく、制同一障害であることをなじられながら強姦される方が何倍もきついのは想像に難くないし、 性的少数...