中村幸嗣(元自衛隊医官)

 また痛ましい事故が起きました。(釧路通り魔1人刺殺、3人けが 殺人未遂容疑で本紙配達員を逮捕)被害者にお悔やみ申し上げます。今回の事件を元に考えていきたいことがあります。
6月21日、男が女性4人を包丁で刺す事件が起きた「イオンモール釧路昭和」。1人死亡、3人が負傷した
6月21日、男が女性4人を包丁で刺す事件が起きた「イオンモール釧路昭和」。1人死亡、3人が負傷した
 犯人は精神疾患(統合失調症?)を患い通院中。普段は新聞配達、以前は食堂でしっかり仕事もされていたようです。原因は家族との口論というネット記事もありました。最初名前は出ていませんでしたが途中から実名で報道されています。

 『とくダネ!』でデーブさんがアメリカ銃撃事件を例に出し解説した後、小倉さんが「勝手に死ねばいいのに」と発言されていました。私も疾患がどうあれ被害者のことを考えると本当そう思いますし、刑法を改正することも検討すべきだと思います。人権派弁護士は当然反対でしょうが。

 それでもこういう事件でよくある動機が以下の発言です。「僕の人生を終わらせたくて、殺人が一番死刑になると思って、人を刺した」。

 深澤真紀コメンテーターが「死刑制度が問題、死刑制度があるからこのような無差別殺人が起きる」と発言されていました。殺しても死刑にはならないとなれば、死刑を受ける目的での殺人がなくなるという発想です。まあ平和な方ですね。

 「殺人をしても死刑にはなりませんよ。だから殺人はやめましょう」と言って殺人をやめるような人なら、最初から殺人はしないでしょうに。まして罰が軽ければ、別の殺人が増えるでしょうに。

 まず精神疾患の程度はどうであったのか。それこそ淡路で起きたように服薬ができていなかったことはないのかなども問題としてでてきます。(治療を受けない自由;加害者の人権と被害者の人権 精神科医療と情報)でも正直病のコントロールは難しく、(それこそこの間書いたキラーストレスの影響もあるでしょうが)しっかり服薬していても個別の突然の悪化を防ぐことはほとんど不可能です。

 では周りのサポートはというと、家族も行方がわからなって心配してすぐに捜索していたとのことですので、今回の事案は正直防ぐことが難しい一つの思想のないテロ事案と考えていいと思います。そうするとソフトターゲットのテロ防止みたいに、外国のようにモールに入るのに金属探知機が必要でしょうか。(それでも包丁でしたからこの被害者の人数ですが)警備員の配置をもっと増やすべきでしょうか。新幹線事案と問題は共通です。(新幹線炎上自殺 防ぐことは可能?

 ISの時、常識が通用しない人に倫理を求めても意味がないと書いてきました。彼らにとってジハードは聖なる行為であり、西洋の常識の押し付けに防御効果はありません。また本日北朝鮮が2発ミサイルを打ち上げました。世界の常識が通用しない国にいくら倫理を求めてもやめてくれません。

 もう一度言います。常識は各国、各地域、各人で異なりその中で世界があるわけです。自分たちの常識の押し付けで他国、他人を制御することは基本できません。ました常識が通用しない人に他の常識を持ってきても何の解決にもなりません。ただ常識を共有化できれば本当に社会の安全は担保できます。それが今までの日本でした。

 自分たちが相手を傷つけなければ相手も傷つけたりしない、戦争しなければ他国も戦争しなくなるという憲法9条の理想と現実と少し似ていると思っています。