インフルエンサーマーケティングが拡大している。初期にみられた価格の高騰がひと段落したおかげだ。
また、Facebookやインスタグラム(Instagram)の改変によって、メジャーなインフルエンサーより小規模なインフルエンサーのほうが効率よくリーチを獲得できるようになったことも一因となっている。ほとんどのインフルエンサーマーケティング費用は、この2つのプラットフォームで使われているようだ。
75%のブランドがすでに活用
米国広告主協会(Association of National Advertisers:以下、ANA)が158のブランドを対象に行った調査によれば、75%のブランドがインフルエンサーマーケティングを活用しているという。その半数近く(43%)が、今後1年間でインフルエンサーマーケティングの予算を増やす計画だと回答した。
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一方、インフルエンサーを活用していないと答えたブランドは全体の19%で、そのうちの46%は今後1年以内にインフルエンサーマーケティングをはじめる予定がないと述べている。
46%のブランドが1年以内にインフルエンサーマーケティングを実施する計画がないと答えた理由のひとつとして、米食品医薬局(Food and Drug Administration)による規制など、政府関連の問題があるとANAは報告している。とりわけ、ヘルスケアブランドは、医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)を懸念していた。ほかにも、リスクの問題やブランドセーフティの問題が懸念材料として挙がっている。
インフルエンサーマーケティングでは、きわめて大きな変化が起こっている。それは、標準化を目指す動きが拡大していることだ。ブランドが、自社に適したインフルエンサーを探したり、価格やブランドセーフティについて調べたりする手段として、セルフサービス広告ツールの利用を検討しはじめている。
数百人にも及ぶ多数のインフルエンサーと仕事をした経験をもつ企業の数も減っている。ANAの調査に参加した企業のおよそ58%は、一緒に仕事をしたことがあるインフルエンサーの数が25人未満だった。
マイクロインフルエンサーが主流
また、回答者のほとんどは、フォロワーの数が10万人に満たない小規模から中規模のインフルエンサーを活用している。このことは、インフルエンサーマーケティングで起こっているもうひとつの変化だ。従来は、膨大な数を抱えるインフルエンサーほど多くのリーチを広告主にもたらすと考えられてきた。だが、いまでは、エンゲージメントのほうが重要だという認識に変わりつつある。
Facebookやインスタグラムといったプラットフォームがアルゴリズムを変更し、いわゆる「質の高い」コンテンツを優先するようになったため、マイクロインフルエンサーの投稿が友人や家族の投稿と同じように扱われる可能性は高まっている。たとえば、インフルエンサーマーケティングエージェンシーのコレクティブリー(Collectively)では、ブランドがフォロワーの多さを求めなくなっているし、実際そうすべきではないと、同社の共同創業者であるアレクサ・トーナー氏は語っている。数百人のインフルエンサーを抱える同社によれば、もっとも成果を上げるインフルエンサーは、コンテンツの出来によって自身のキャリアが左右されるクリエイティブ系の人たちだという。
87%が専門企業を活用
クライアントにとってもっとも大きな悩みは、インフルエンサーマーケティングをどのように管理し、実施すべきかという点だ。企業のあいだでは、インフルエンサーマーケティングのテクノロジー企業が開発したセルフサービスツールを使って、クリエイティブ資産を直接インフルエンサーに提供するする例が増えている。ANAの調査によれば、87%の企業がインフルエンサーマーケティング専門企業を活用していた。ただし、社内のマーケティングチームと社内リソースを活用すると答えた企業と、外部のエージェンシーを活用すると答えた企業も、同じくらいの割合だった。
また、自社でインフルエンサーマーケティングを行うブランドが増えている。インフルエンサー分析プラットフォームであるハイパー(Hypr)のCEO、ギル・エヤル氏によれば、業界でもっとも大きなトレンドは、インフルエンサーマーケティングチームを社内に抱えることだ。たとえば、積極的なインフルエンサーマーケティングで知られるロレアルパリU.K(L’Oréal Paris UK)は、社内のチームが見つけたインフルエンサーと直接仕事をしている。これは、インフルエンサーに1回限りのキャンペーンや投稿を依頼するのではなく、インフルエンサーと長期的な関係を築く方向へ舵を切る動きだ。こうしたアプローチがブランドにとって魅力的な理由は、インフルエンサーにそのブランドへの関心を高めてもらい、取引関係以上の関係を構築できることにある。
報酬の面でも複雑化
報酬の面でも、インフルエンサーマーケティングはますます複雑化している。ブランドは、以前より長期的で標準化された契約をインフルエンサーと結ぶようになっている。ANAの調査によれば、およそ62%のブランドがインフルエンサーと「ブランドアンバサダー」契約を結び、その対価としてインフルエンサーにお金を支払っていた。ブランドアンバサダー契約を結んだインフルエンサーは、そのブランドについて好意的な発言をすることを求められる。また、およそ3分の1の企業は、インフルエンサーへの対価として自社製品を無料で提供している。一方で、およそ30%の企業は、いまも投稿の対価としてお金を支払っている。その金額は、CPMやエンゲージメント1件あたりのコストに基づいて計算される。
予算は10万ドル未満
インフルエンサーマーケティングにどれくらいのお金を費やしているかという問いに対しては、およそ62%の企業が年間10万ドル(約1000万円)未満と回答した。ただし、その金額はエージェンシーによってかなり異なるのが普通だ。多くのエージェンシーは、クライアントまたはキャンペーンごとにインフルエンサーを確保するのではなく、一括で確保している。全体的にみると、インフルエンサーマーケティングのコストは、以前よりきちんと管理されるようになった。あるインフルエンサーエージェンシーの幹部によれば、初期の頃は基本価格が3万ドル、5枚の写真のセットで最大10万ドルだったという。「そうなっていた理由の1つは、業界の標準がなかったからだ。だが、時代は変わっている」と彼女は語った。
Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)