「ミレニアル世代」の3割、一生借家で暮らす可能性=英シンクタンク
カマル・アハメドBBCビジネス担当編集長
「ミレニアル世代」と呼ばれる若年層の最大3分の1が、一生借家で暮らす可能性がある――。英シンクタンクのレゾリューション財団はこのほど、こんな予測を発表した。
同財団が出した住宅改善に関する報告書によると、1980~1996年に生まれたミレニアル世代の40%は、30歳になった段階で借家に住んでいた。これは、1965~1980年に生まれた「X世代」の比率の2倍となっている。
英政府は、住宅市場の問題改善のため、すでに取り組みに着手済みだと説明している。
報告書は、一次取得層向けの手頃な住宅の建設や借家人の権利保護の強化など、「借家世代」への公的な支援を大幅に拡充する必要があると指摘する。
しがらみが少ない人にとっては借家は多くの場合、合理的な選択肢だ。しかし、子育て世帯となると、民間の借家は不安定なため、「理想的とは言いがたい」と報告書は言う。
報告書によると、民間の借家に住む子育て中の家族の数は180万と、過去最高で15年前の60万から増加している。
財団で政策シニアアナリストを務めるリンジー・ジャッジ氏は、「英国の住宅問題は本格的な危機に発展している。一番の打撃を受けているのが、若年層だ。借家で、かつ以前より狭い住宅のために払う家賃が収入に占める割合は、過去最高に達している」と話す。
「住宅建設および一次取得を後押しする政策が一部、最近実施されている。それでもなお、ミレニアル世代の最大3割が終生、ゆりかごから墓場まで、借家住まいを続ける可能性がある」
「英国の住宅危機を解決したいなら、民間の借家に住む大勢の家族の状況を改善しなくてはならない。そのためには、賃貸物件の水準を改善して、賃借制度の改革を通じて借家に関係するリスクを低下させる必要がある」
報告書は、住宅を1軒だけ所有する人の印紙税を下げ、セカンドハウスの所有者への増税をするという、セカンドハウスの所有を抑制する税制の導入を求めている。
賃貸料の上昇を3年間、物価上昇率以下に抑えるという「軽程度」の安定化策も呼びかけている。
借家住まい人口が増えるにつれ、政治的な課題としての重要性も大幅に高まっている。
大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PWC)は、住宅価格の上昇に伴い、2001年に230万、現在は540万と増えてきた借家住まい世帯数は、2025年には720万に増えると予想している。
野党・労働党はすでに、賃貸料の上昇幅の上限設定に加えて、3年間の借用期間や大家の認可制を提案。公営住宅の建設増も政策に掲げている。
同じく野党の自由民主党は、居住する借家の買い取りを促進する制度や、共同で所有する住宅や福祉住宅の大幅増を打ち出している。
英住宅・コミュニティ・地方自治省の報道官は、「我々の住宅取得補助制度や最近の印紙税減税は、より多くの若い一次取得者が不動産すごろくを始められるようにしている。統計数字は、一次取得者の数が過去10年以上で最高に達しているのを示している」と述べた。
その上で、「しかし、我々は同時に(中略)不良な大家の取り締まりや、借家人自身を保護を強化するための助言の面で、地方自治体の権限を強めている」と説明した。
(英語記事 Up to a third of millennials 'face renting their entire life')