職場で泣くのがタブーな理由。それでも泣きたくなったときの上手な対処法3つ
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新しい環境で働きはじめる人の多い季節。新入社員は、だいたい次のようなアドバイスを受けるのではないでしょうか。職場ではきちんとした態度で臨むこと、できるだけ余分な仕事も引き受けること、そして、職場では決して泣かないこと。でも、人間である以上、泣きたいときもあります。無理やり泣かないようにして、感情を抑えきれない自分を責めるより、万が一泣いてしまったときの対処を考えておく方が賢明かもしれません。
職場で泣いてはいけない本当の理由
職場で泣き出してしまう理由としては、私生活でストレスを抱えている(家族に病人がいて心配だとか友人を亡くしてショックだなど)、職場に失礼な人がいる、仕事の業績があげられなくて辛い、などがよくあげられます。
果たして職場で泣いても「大丈夫」でしょうか。一言で言うと、泣かないにこしたことはありません。カリフォルニア大学ヘイスティングス法科カレッジの著名教授ジョアン・ウィリアムズさんによれば、泣いてしまうと、優位な立場で交渉できなくなるからです。さらに、自分の感情の対処を他人にさせてしまうので、社内で借りを作ってしまいます。
特に女性が職場で泣くと、女性は感情的で仕事のプレッシャーに対処できないといったステレオタイプな見方をされるので不利だとウィリアムズ教授は指摘しています。一方で、男性は女性に比べて感情表現の幅がかなり狭いと思われがちなので、男性が職場で泣いているのを見られると「弱い人間」だと思われる危険性があります。
「とは言え、誰にでも起こり得ることなので、職場で泣いてしまっても、適切に対処しさえすれば、絶望する必要は無いということです」とビジネス情報サイトFitSmallBusiness.com.の共同設立者であるマーク・プロッサーさんは言います 。
自分で事態を収拾できる心の余裕を周囲に示す
たとえば、Harvard Business Schoolに掲載されたある論文によれば、自分が泣いている理由をうまく置き換えると有利に働くことあるようです。泣き出してしまったときに「すみません。私は本当にこの件に情熱を注いでいるんです」と言うより、「すみません。私は単にこの件に気持ちが入っているんです」あるいは「すみません」とだけ言う方が有利になることが研究によりわかっています。
ウィリアムズ教授も同じようなアドバイスをしています。彼女は『What Works for Women at Work』という本を執筆中に、ある女性管理職から職場で「ひどく不愉快な」男性2人と会議をしているうちに泣き出してしまったと打ち明けられました。
「彼女はその男性たちにこう言いました。『私は気が動転して泣いているのではありません。あなたたちがしたことに泣きたいぐらい腹を立てているからです』これはとても賢明な言い方でした。彼女がしたことは、「弱さ」や「感情的」と受け取られがちなことを「強さ」の表現に置き換えてしまったからです」とウィリアムズ教授は当時のことを振り返り語っています(怒りが他の感情より「強さ」をアピールすると思われるのは、残念なことですが、その話はまた別の機会に譲ります)。
このやり方は、相手が誰であれ効果的です。同僚や上司を気まずくして、ネガティブな印象を残したくはないでしょうから、自分がその場の舵をとるようにするのがベストです。たとえば、『ちょっと反応し過ぎました。2、3分猶予をもらえれば、続行できます』というふうに言ってみましょう。今起こっていることを認識すると同時に、すぐに自分で事態を収拾できることを伝えるのです」とプロッサーさんは言います。一度や二度のことなら、周囲はすぐに忘れてしまうはずです。
1人になれる場所に行く
会議中や周囲に人がいるときに泣きたくなったら、トイレや階段の踊り場など人がいないところに行くか、スナックを買いに外出するなどして、自分を立て直すことが適切だとプロッサーさんもウィリアムズ教授も提案しています。まず、自分に1人になれる場所と時間を与えることです。
「職場で泣きたくなったら、人前では泣かないようにしましょう。たとえば、『ごめんなさい。どうしてもトイレに行きたいんです』と言えば、自分を立て直して、何でそんなに気が立っているのか考える時間を確保できます」とプロッサーさんは言います。
職歴が比較的浅く、職場のストレスや批判に初めてさらされる人の場合は、気持ちが追い詰められることがあっても当然です。「これは、仕事の仕方が悪いわけではありません。慣れないことをしている印です」とプロッサーさん。この種のストレスと不安は誰もが経験することですが、辛い気持ちになり過ぎない方が良いので、定期的に感情を開放しましょう。
ですから、泣きたくなったら、散歩に出かけて、この先こういう状況になったらどう対処するか考えてください。たとえば、上司に問題があるなら、自分は今、新しい仕事を探しているから、近いうちにこの職場を脱出できるはず、と考えましょう。でも、当面は今の職場でできるだけ礼儀正しく真面目に仕事をしてください。私生活の問題なら、セラピーを受けるなり、別の解決策を取るなりして、職場の外で心のガス抜きをしてください。何が感情の引き金になるか見極めて、それに対処するのです。
管理職なら、涙も全体のためになるように振る舞う
管理職についている人なら、職場全体のために会話の価値を転換する力があるはずです。「FacebookのCEO、シェリル・サンドバーグさんになら、私は職場で泣くことを勧めるでしょう。彼女が泣いたら、他の社員にも同じように振る舞う余地ができるからです」とウィリアムズ教授は言います。
それにより、社員はリラックスできてストレスが軽減されます。どんな人も、ほんの少しの同情や自分を立て直すための数分が必要なときがあります。それは、仕事ができない人だからではなくて、単に人間だからです。
ウィリアムズ教授は最後にこう結んでいます。「職場で泣いたからといって、大したことではないと思います。誰でも気持ちが高ぶって泣くことはあります。肝心なのはそれにどう対処するかです」
image:KieferPix/shutterstock
Alicia Adamczyk – [原文]
訳・春野ユリ