「niconicoの本気を見た」「未来感がある」――ドワンゴが打ち出した新サービス「バーチャルキャスト」は、ネット上の評判も上々だ。VR(仮想現実)空間のスタジオでバーチャルキャラクターになりきり、ライブ配信やコミュニケーションを楽しめる。高まる「バーチャルYouTuber」(VTuber)の需要にフィットし、新しい人気サービスに育つか。
ユーザーがVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被ると、そこはVR空間のスタジオだ。VR HMDで首の動きを、両手に持ったコントローラーで手の動きをトラッキングし、バーチャルキャラクターに反映させる仕組み。キャラクターを切り替えながら、生放送番組を配信できる。他のユーザーは、視聴者として番組を楽しめる他、自らもVR HMDを装着し、その放送に乱入(凸機能)してコミュニケーションも可能だ。
連携できる動画配信プラットフォームは、ニコニコ生放送、YouTube Live、ツイキャス、Twitch、OPENREC.tvなどに対応する。ニコニコ生放送の場合は、視聴者が書き込んだコメントがオブジェクトとしてVR空間のスタジオに雪のように降り、キャラクターが触れたりつかんだりできる。配信者と視聴者の双方向的なコミュニケーションを重視した機能だ。
4月13日に無料提供を始めたところ、Twitter上では「ドワンゴ」「バーチャルキャスト」がトレンド入りするなど反響を呼んだ。同社の助田徹臣さん(VR文化推進室 副室長)は「例えば、企業がプロモーション番組でゲームキャラクターなどをそのまま登場させ、世界観に合わせた配信が可能になる」と、法人向けのニーズも見込む。
法人向けにキャラのカスタマイズ、運営ノウハウのアドバイスなど、コンサルティング事業を展開する他、ニコニコ本社(東京・池袋)のサテライトスタジオに、VTuberと出演者が共演できる設備を追加し、機材を含め収録用に貸し出す。透過型ディスプレイにキャラクターを映し出し、別部屋のアクターが動きを演じる。ディスプレイの裏側に設置したカメラがキャラクターの視点になり、出演者を追うことで「目線が合うコミュニケーション」が可能という。
「動画文化から生放送へと移り変わっているVTuberの潮流の中で、企業も一緒にVR文化を盛り上げたい」(助田副室長)
バーチャルキャラクターの外見をまとい演じるVTuberは“YouTube発祥”とのイメージもあるが、niconicoにもその下地はあった。同社は、モーションキャプチャー用のスタジオを都内に複数構える他、ライブハウス「ニコファーレ」(東京・六本木)でバーチャルキャラクターを投影する試みも披露してきた。
培ったノウハウを生かし、事業を本格化させるVR文化推進室は、4月1日に立ち上がったばかりだ。まずは質の高いVTuberを、同社プラットフォームに集めるところからスタートするという。配信に必要なVR機器と高性能PCは、合わせて十数万円からと比較的高価だが、そうした機材を購入しているほど熱心なクリエイターに、配信のしやすさ、「コメントが降る」など独自機能を訴求し、取り込みたい考えだ。
niconicoは、正念場を迎えている。2017年11月に発表した新バージョン「く」にはユーザーから「新機能より基本機能の改善を優先すべき」と批判が集まり、画質や読み込みの高速化など改善を進める難しい局面だが、今回のバーチャルキャストには温かい意見が目立った。助田副室長は「あくまで個人的な意見だが」と前置きした上で、「ユーザーにとって存在感がある独自機能を生かし、マインドシェアを取ることが、niconicoの復権につながると思っている」と話した。
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