密約に関する調査については、外務省の内部調査チームにより、関連する公文書、協議記録などから抽出整理された報告書が纏められ、更に文献その他資料を追加収集するとともに関係者への聞き取りも実施して、先の外務省の報告書の内容の検証作業を行った有識者委員会の報告書が纏められ、2010年3月9日に外務大臣に提出された。
密約調査に関して外務大臣から委嘱されて発足した有識者委員会は、調査対象の密約事案4項目に関して、その存否と内容に関して検証を行い、更に外交公文書の公開のあり方について提言を行うことを目的としたものです。
有識者委員会は、北岡仲一(東大教授)を座長とし、波多野澄雄(筑波大学教授)、河野康子(法政大学教授)、坂本一哉(大阪大学教授)、佐々木卓也(立教大学教授)、春名幹男(名古屋大学教授)の6名で構成されています。
一般的に文章の扱いに関しては、公開可能とするもの、非公開扱いとするものがあり、非公開とするものについては、文章・資料等の重要度に応じて「極秘」、「秘」と表示されるものがあります。 諸外国との合意取決めにおいて、内容について明らかにされない秘密の協定・合意などを、一般の国民はこれを密約と呼びます。
しかし、この委員会でいう密約とは次のように定義しています。
”二国間の例の場合、その二国間の合意あるいは了解であって、国民に知らされておらず、かつ、公表されている合意や了解と異なる重要な内容を持つものであるとし、合意内容を記した文章が存在する合意や了解を「狭義の密約」といい、暗黙のうちに存在する合意や了解を「広義の密約」という” と扱っている。
一般の日本国民が考えるところの秘密に結ばれた協定、合意 了解を単に密約と呼ぶのとは若干意味が異なっていることを注意しなければなりません。 有識者委員会がいう密約と一般の国民がいう密約との間には、密約の語彙の捉え方にかなり観念的なギャップがあります。
一般の国民から見た場合、「沖縄返還時の有事の際の核持ち込み密約」について、日米の両首脳と、総理の密使及び大統領補佐官との4人が中心になって、日本の外務省を蚊帳の外において核持ち込みに関して最終案としての日米両首脳の極秘合意文章を草案し、極秘の署名を演出したものであることが明らかになっているのですが、これは、正に外務省、国民に知られないようにした密約と思えるのですが、委員会がいう密約の定義にはあたらないことになるようです。
この評価基準に基づくと、意図的に根拠の資料を外務省の関係者によって処分されてしまうと、もはや密約が存在したとは言えなくなります。 いずれにしても事実は闇の中に葬られるのですが・・・。
密約に関する外務省の報告書・資料について精査と外交文章の公開についての提案が示されましたが、これで核密約問題に幕が降ろされてしまってはなりません。 まだ核持ち込み事案が解消されたことにはならないのです。 核持ち込みに関する実態がどのようであったのか、更に、今まで曖昧にされていた内容を、今後においても日米間で認識に差が生じた状態で継続されないように改める必要があるので、日本から明確に通達する必要があるでしょう。
日本国民は戦後から日本政府、外務省、防衛省に騙され続けてきた。 政府は騙してきていることを認識しており、国民も騙されていることを認識しており、日本国民の自民党議員や外務官僚、防衛官僚に対する信頼は失墜してしまっているのです。 この信頼の失墜に対しては、密約の報告書が出たからといって、日本国民の信頼は容易に回復するわけではありません。 この信頼を回復するには、失った期間と同様の長期間が必要とされるでしょう。 50年以上もの期間を通じて日本国民を愚弄し続けてきた行いに対し、その行為を行ってきた政府高官は真摯に反省するべきでしょう。
このサイトは、筆者が外務省の資料整理の報告書や有識者委員会の報告書の内容について詳細に説明するものではありません。 調査報告書の内容を必要とする場合は、外務省の核密約調査の該当項目を閲覧してください。
筆者が委員会の調査報告書に目を通して先ず感じたことは次の通りです。
調査資料では、米国に資料が存在していることが明らかであるにも関わらず日本側に資料がないとか、あるいは、関係者の発言では本来は存在していたはずの資料がリストに無いなどが見受けられ、また、極秘の外交関係の合意に関して公開できない指定を受け表に出ないものが存在します。 よって、資料が完全とは思えないので、日本国民は、これらの密約調査については、とにかく報告を受けたものとして捉え、核の持ち込み問題に関しては、日本政府に対して、現在の曖昧な日米間の認識の違いを解消するため、明確に書面による的確な語彙を用い、核持ち込みを容認しない日米間の合意を得ることが必要となると強く要請します。
また、日本のとるべき核持ち込み対応方針に関して、政府と国民総体の意思との整合をはかり、合意を得なければなりません。
核密約等に関する調査を行ったけれど、政府は現行状態を変えるつもりはないことを表明している。 何も変わらないことが明確になった。 つまり、核兵器の持ち込みが事前協議なしで可能であり、米軍は核兵器の持ち込みや存在を明らかにするつもりはないので、日本の「非核三原則」は機能していないということが判明した。
■ 今回対象とされる密約といわれる内容項目は以下の4項目:
・日米安保条約改訂時の核持ち込みに関する項目 (核兵器搭載艦船等の寄航時における核兵器の持ち込みに関する項目)
・朝鮮半島有事の際の戦闘行動に関する項目
・沖縄返還時の有事の際の核持ち込みに関する項目
・沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する項目
■ 日米安保条約改訂時の核持ち込みに関する項目 (核兵器搭載艦船等の寄航時における核兵器の持ち込みに関する項目)について
日本は、核持ち込みに際しては、事前協議を要するとしている。 しかし、アメリカ側は、核搭載艦船の寄港・通過は核持ち込みに関する事前協議には該当しないとしており、駐日大使が解釈を日本側に伝えたにも関わらず、日本政府は継続して国会答弁などで、必要な事前協議を受けていないから核搭載艦船の寄港・通過はない、核の持ち込みは無いと説明してきたものである。
これに関して調査を行う有識者委員会は、米国のこの解釈の連絡を受けて日本の外務省が認識し、この対応を協議していた記録が見つかったこと、及び米国で公開された公文書などをもとに広義の密約があったと判断したもの。
つまり、これの意味するところは、事前協議条項があるが、日本語でいう核の持ち込みは事前協議無しに持ち込みができることが明らかにされたものです。
そもそも、この事前協議の根拠は何か。 それは、日米安全保障条約の第6条に関する別途付属の文章に「事前協議」について書き記している内容があり、これで規定されるものです。 国民の多くはこの文章自体よく理解できていないのです。
これは、米軍が日本において基地を使用するに際しての条件を記したもので、事前協議の対象として、核を搭載した艦船の寄港、領海内通過、核搭載機の飛来が、この装備における重要な変更内容と規定されている要件にあたるのかどうかであるが、日本政府が核の持ち込み { 日本で意味する ”持ち込み”の英単語 = entry (しかし、付属公文では:introduction と表示 、注意すべきことに、外務省の非核三原則の英文説明には introduction を用いている) }は事前協議の対象としているが、一方、アメリカ政府は、核の持ち込み( entry )は事前協議対象には当たらないとし、このアメリカ側の解釈を日本政府高官に伝え、そして日本政府も理解・認識していたにも拘らず、日本政府は嘘の説明を続けてきており、日本でいう核持ち込み( entry )は事前協議の対象外とされている日米合意があったことをいう。
そして、この問題は、日本国民が目指している核兵器の日本への持ち込みを容認しないことを掲げる「非核三原則」を、日本政府自体が持ち込みの事実を認識しながら、いまだに鸚鵡返しに「非核三原則」を変えませんという主張を繰り返すのみで、国民への裏切りを平気で行っている姿勢が許せないということです。
核配備という扱いでなければ事前協議対象外として処理が可能であり、核持ち込み・長期間核兵器を一時的に貯蔵を可能にしているのであって、何時でも自由に核兵器の持ち込み、持ち出しができ、日本は核兵器を保有しているのと同じ状態が存在するにも拘らず、日本人は「灯台下暗し」で、イラン、インド、北朝鮮の核による抑止力を批判しているのです。 日本政府、我々日本人はこのような態度を恥じるべきです。
この信頼できない、虚偽で固められた日本の対米従属姿勢は、1967年時点で沖縄に1300発もの核兵器が配備されていて、沖縄返還に伴い撤去されたことになっている事に対しても疑念を抱かせる結果に繋がっているのです。
第6条に関する別途付属の文章の内容は次のとおり。
付属合意の内容:
「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動(前記の条約第5条の規定に基づいて行われるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前協議の主題とする。
この英文: Major changes in the deployment into Japan of United States armed forces, majore changes in their equipment, and the use of facilities and areas in Japan as bases for military combat operations to be undertaken from Japan other than those conducted under Article V of the treaty, shall be the subjects of prior consultation with the Government Japan. 」
協議の対象に関しては、当時駐日大使であったライシャワー氏が交わしたとされる内容は以下であろうことが知られている。(委員会の報告書によると、討議の記録の内容を記したものが見出されている。 原本ではないらしい。)
装備における重要な変更は:
「 Major changes in their equipment understood to mean the introduction into Japan of nuclear weapons, including intermediate and long-range missiles as well as the construction of bases for such weapons, and will not, for example, mean the introduction of bases for such weapons, and will not, for example, mean the introduction of non-nuclear weapons including short-range missiles without nuclear components. 」
つまり、核兵器及び中長距離ミサイルの日本国内への持ち込み{(introduction)= 武器配備}並びにそれらの兵器のための基地の建設を意味する・・・(略)・・・
また、大使は次の提示を行っているという。
「 Prior consultation will not be interpreted as affecting present procedures regarding the deployment of United States armed forces and their equipment into Japan and those for the entry of United States military aircraft and the entry into Japanese waters and ports by the United States naval vessels, except in the case of major changes in deployment into Japan of United States armed forces. 」
つまり、事前協議は、米軍の配置における重要な変更になる場合は除外するが、米軍やその装備の日本への配置、米軍機の飛来(entry)、米海軍艦船の日本の領海内航行や港湾への寄航(entry) に関する現行の手続きに影響を与えるものと解されない、としている。
委員会は、種々の資料を検証し、時代の背景を説明している。 筆者はここで、その項目のうち、いくつかを以下に羅列するにとどめる。
・大平外相・ライシャワーの会談での内容について、明確な米側の解釈を示した「討議の記録」に関する
資料やこれに関して日本が受け入れた合意に関する資料が日本側に見当たらない。
・ライシャワー大使から米国の持ち込みの解釈の違いを説明されて以降、米国に日本が異議を唱えた様子
が見受けられない。
・大平外相・ライシャワーの会談の後、当時の東郷文彦北米局長による現在の立場を続けるより他ないと
思われるとする内部文章が見つかったとして日本側が黙認している状況が存在した。
・政府がこの解釈の違いを敢えて持ち出さないで済ますことを得策とし、核持ち込みを黙認せざるを得ず、
日米間に暗黙の合意が存在した模様である。
・この密約問題に関する日本政府の説明がうそを含む不正直な説明に終始し、民主主義の原則からは本来
あってはならない態度である。
・不正直な態度について、冷戦下における核抑止戦略と日本国民の反核感情との調整が容易でなかったこと
を考慮にいれて論じるべき。
・重要文章についての行政者の管理の不備に対して事情調査や反省の必要性を指摘した。
( 英語の専門でない筆者でも、持ち込みが「introduce の 名詞形である introduction 」を用いており、これが製品や装備や宗教・思想などに対して用いられる場合には、単なる entry ( = bringing )ではないことは理解できます。 そして、兵器の場合に "introduce" を用いると、「導入」の意味ですが、例えば、駆逐艦にイージス装置を "introduce" の意味は、装置を装備・配備する意味です。 単に甲板に entry して、置いてあるのではないのです。 基地にPAC3迎撃ミサイルを "introduce" と用いると、明らかに配備する意味です。 英文の"introduce"を、外務省の外交官僚達が認識していなかったとするのは到底理解できません。 虚偽としか思えないというのが筆者の見解です。
ライシャワー元駐日大使が説明する核兵器を積載した米軍の航空機の飛来に伴う核兵器持ち込みや核兵器を艦載した米軍艦船の寄航に伴う核兵器持ち込みについては、事前協議対象外の日米合意の手続きであるとしているのです。
また、委員会報告で冷戦下における核抑止政策と反核の国民感情に配慮したことにも考慮すべきである旨挙げていますが、核拡散防止条約が1970年に発効している現実があり、特に日本は、全国的に核廃絶に向けての運動を支持していかなければならない立場であると思われることより、単純に核抑止力として日本に核を持ち込むことを容認すべきではなかったのです。 民主主義というが、何をもって民主主義とするか議論を深めないといけない。 これからの本当の民主主義の社会を目指して、この虚偽、隠蔽を政府、官僚の支配的構図において必然、正当とする間違った認識に染まった日本の政治や社会のあり方を正すことから始めましょう。 よりよい未来の民主主義のために。 )
「委員会の定義する意味の密約」に対して、外務省の資料の不利益な内容や極秘とされるものは表に出ないので、「狭義の密約」を証明することは至難の業であり、予想通りの結果とも言える。
公文書資料や内部の協議記録の全部の掲載が無い条件では、国民には評価・判断できないのです。 これが国民の委員会報告の捉え方です。
筆者が理解したことの集約は、次のとおりです。:
核持ち込みに関して、「ああだ、こうだ」と言っているが、何度も繰り返して言うが、早い話、米国は核持ち込みについて、あるいは核の存在については明らかにしない政策をとっていることを考慮して、米軍による日本への核の持ち込み( bringing ) を日米合意の事前協議の対象とするなら、核持ち込み( bringing ) を行っていたと種々の関係者の発言があった事実より、米国側がこの合意内容に違反していることになるし、もし、日米で持ち込み( bringing ) は事前協議の対象外とする解釈・認識が存在したなら、核持ち込みが行われていた実態が知られるようになった現在、日本政府高官が国民に説明し続けてきたことは嘘であり「有事でない通常状態で、核持ち込みは可能である」ということが成立していたものであり、現在もこの手続きが維持され、核兵器の持ち込みが容認されていることになる。
いずれの規定が存在していようが、運用で現実の状況に合わせて双方の都合のよいように処理がされて、現実に核兵器の持ち込みという黙認状況が存在している事実があるということです。 これは、日本の「非核三原則」で規定する核を持ち込ませずは成立しないもので、究極は「核拡散」を隠蔽していることが証明されたといえる。
同じ手法によれば、世界のどの国も核兵器国と核持ち込みに関する日米安全保障条約と同様な安全保障条約を締約し、核兵器国の基地を誘致するだけで、核兵器の持ち込みが可能になり、容易に実質的な核兵器による抑止力を得ることができるようになるのです。
しかし、これは、人類が未来志向で進む道とは決して言えないのです。
■ 朝鮮半島有事の際の戦闘行動に関する項目について
調査報告書では、「日米両国は1960年の新安保条約締結の際、岸・ハンター交換公文により、在日米軍が日本から行う戦闘作戦行動を事前協議の対象とすることで合意した。 それと同時に、両国は非公開の議事録により、朝鮮半島の際、国連軍の指揮下で行動する在日米軍が在日米軍基地を使用して直ちに(つまり場合によっては事前協議なしに)出撃できることで合意していたことが今回の調査で確認された。」 と結論した。
■ 沖縄返還時の有事の際の核持ち込みに関する項目について
外務省の調査報告書では、「この「密約」問題は、沖縄返還後に重大な緊急事態が生じ、米国政府が核兵器を沖縄へ再び持ち込むことについて事前協議を提起する場合、日本側はこれを承認するとの内容の秘密の合意議事録が、佐藤総理大臣・ニクソン米大統領両首脳の間で作成されたのではないかというものである。」
と記している。
有識者が評価するこの密約の評価基準:(既に記術済みであるが、)二国間の合意あるいは了解であって、国民に知らされておらず、かつ、公表されている合意や了解と異なる重要な内容を持つものであるとしている。
よって、外務省の表現する単に秘密裏に作成されたかどうかではなく、一般的に言う密約が存在しても、それを意味するのではない。 (しかし、国民は、この非公開、秘密に行われた協約や約束や合意の問題を重要視します。 後述。)
ここで対象とする案件は、有事の際の核の持ち込みに関しての内容であるが、委員会は、沖縄返還の日米共同コミュニケで、米国が核を持ち込む必要に際しては事前協議において米国の立場を害することはない趣旨の声明を行っているのであるから、核持ち込みの容認は、周知、自明の事柄であり、既に公表されている内容と両首脳の密約とされる合意文章の内容とは踏み込み方の程度の差はあっても、大差は無いと判断されたものである。
そして、その有効性について、外務省にこれに関する根拠となる議事録がないこと、この内容について佐藤総理以降の総理に引継ぎが為されている根拠資料がないことより、必ずしも密約とはいえないとし、また、拘束する効力については否定的に考えざるを得ないだろうと結論づけた。
この件に関して、筆者は次のように考えます。
沖縄返還や核持ち込みという日本国の将来を左右する重要な事項が、日本の担当所管大臣、官僚及び議会にも何の情報を与えず、決定内容を秘匿できる状況が存在することが非常に危険な状態であると思います。 日本は、専制君主の独裁国家では無いのです。
単純に知らなかったでは済まされないのです。 このような概念が政界、役人に蔓延しているなら、一体国民はどうすればよいのでしょうか。 アメリカは日本を民主国家から外れることを良しとしないのであり、少なくとも現在日本は民主国家としての制度が敷かれているのですから、首相が最終決定を行うことができる特権を有していたとしても、決定内容はすべて政府、官僚も責任を持って対処する責務があります。
このようなことを決定し、後年に何等かの疑念が生じるような事態が発生していた時には、少なくとも担当所管内で対応を協議し、その記録が残るはずです。 危惧すべきは、そのような証拠が省内に無いということは、危機管理に関して全く認識が欠けているようだ。
核持ち込みに関する両首脳間の合意に関して、担当所管に記録が無く、認識がなかったことを報告していますが、もともと、沖縄返還にむけての核兵器の扱いに関する合意のとりつけに当たっては、外務省とは別に、ニクソン大統領、キッシンジャー大統領補佐官、佐藤首相、若泉氏の4人が、有事の際に米国が日本に核を持ち込むことを条件として沖縄返還を認めることとし、その合意文章を両国の国民・議会に説明できるように如何に作文するかを協議していたのです。
そして、協議の過程は若泉氏はメモとして残すのみで、外務省との協議は行わず、佐藤総理に直接報告していたのです。 ですから、佐藤総理が政府高官に経過を説明して明らかにしていない場合は、外務省に記録が残されていないのはもっともなことなのです。 若泉氏は当時、協議結果のメモをアメリカ側に渡しており、アメリカ側は経緯を認識しているはずです。 若泉氏は後に自らの協議メモや外務省の内部文章、日米交渉時の日米のメモをもとに自らの著書を記しているのであるから、それ自体が記録簿なのです。 そして、日米合意文章自体が合意の記録といえるのですから、沖縄の核貯蔵施設の維持管理や核の持ち込み貯蔵についての合意した内容は、単に共同コミュニケより踏み込んだ内容ではすまされないのです。 なぜなら、政府から国民が受けている説明内容「非核三原則」の説明と異なるからです。 政府は当時において、共同コミュニケの内容についても報道機関を通じて国民に非核三原則を堅持する旨の”虚偽の説明”をしていたのですから。
下記の沖縄返還時の核持ち込み密約では、核兵器の貯蔵施設を維持しておくことが盛り込まれている。 日本国民は、核兵器の貯蔵施設が存在していることを知らされていないので、この施設が存在していない場合、新たにこの施設を建設する場合には、既に記した日米安保条約の事前協議の対象となるもので、これがなければ核兵器の持ち込みが生じても一時的なもので、長期間の貯蔵などできないと理解できるのです。 しかし、日米の秘密の合意により核貯蔵施設が既に維持継続されている内容であるから、核兵器が長期間貯蔵されている疑惑が現実味を帯びてくるという理由により、共同コミュニケの内容とは根本的に違うのです。
【(参考)沖縄返還時の核兵器持ち込みに関する日米首脳合意密約文章:
極秘
1969年11月21日発表のニクソン米合衆国大統領と佐藤日本国総理大臣との間の共同声明についての合意議事録
米合衆国大統領
われわれの共同声明に述べてあるごとく、沖縄の施政権が実際に日本国に返還されるときまでに、沖縄
からすべての核兵器を撤去することが米国政府の意図である。 そして、それ以降においては、この共同
声明に述べてあるごとく、米日間の相互協力及び安全保障条約、並びにこれに関連する諸取り決めが、
沖縄に適用されることになる。
しかしながら、日本を含む極東諸国の防衛のため米国が負っている国際的義務を効果的に遂行するため
に、重大な緊急事態が生じた際には、米国政府は、日本国政府と事前協議を行った上で、核兵器を沖縄に
再び持ち込むこと、及び沖縄を通過する権利が認められることを必要とするであろう。 かかる事前協議
においては、米国政府は好意的回答を期待するものである。 さらに、米国政府は、沖縄に現存する核兵
器の貯蔵地、すなわち、嘉手納、那覇、辺野古、並びにナイキ・ハーキュリーズ基地を、何時でも使用で
きる状態に維持しておき、重大な緊急事態が生じた時には活用できることを必要とする。
日本国総理大臣
日本国政府は、大統領が述べた前記の重大な緊急事態が生じた際における米国政府の必要を理解して、
かかる事前協議が行われた場合には、遅滞なくそれらの必要をみたすであろう。
大統領と総理大臣は、この合意議事録を二通作成し、一通ずつ大統領官邸と総理大臣官邸にのみ保管し、
かつ、米合衆国大統領と日本国総理大臣との間でのみ最大の注意をもって、極秘裏に取り扱うべきものと
する、ということに合意した。
1969年11月21日
ワシントンDCにて
(署名) リチャード・ニクソン
(署名) 佐藤 栄作 】
【(参考)有識者委員会の報告書の中で、日米首脳会談の共同コミュニケよりも踏み込んだ内容であるが、共同声明の内容を大きく超える内容ではないとして、”本調査における密約の定義”においては必ずしも密約といえないであろうとしている。 また、この文章が後の政府に引き継がれた様子がないようなので、長期的に政府を拘束するものではないであろうとしている。】
【(参考)沖縄返還にむけての1969年11月の共同コミュニケでは、核持ち込みに関して、”・・・(略)・・・日米安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく・・・(略)・・・日本国政府は、大統領が述べた前記の重大な緊急事態が生じた際における米国政府の必要を理解して、かかる事前協議が行われた場合には、遅滞なくそれらの必要をみたすであろう。”】
などと宣言している。
つまり、日本政府はアメリカの日本への核持ち込みを最初から容認しているのです。
沖縄返還当時に合意した文章内容は、両首脳が政権期間であれば、明らかに日米間で核政策を規定するものであったと思われます。 現在の拘束性については、この資料が有効であれば、有効であり、無効であれば無効になるというものです。 但し、無効であれば、無効の宣言はできますから、それができなければ、有効性は高いと言えるでしょう。 ((追記) 後日、外務大臣は、核兵器持ち込みを拒否する発言を行うのではななく、有事の核兵器持ち込みを容認する発言を行った。 これは即ち、核兵器持ち込み事案のかっての首脳間合意が有効であることを物語る。 核貯蔵地として維持整備の態様が現実であることを証明したもの。)
外務省が提出した資料に議事録が無いとしていますが、少なくとも、当時の日米のトップが署名したのですから、この署名の記録自体が日本では意味が無いと扱っても、果たして米国側に存在する署名の文章はどのような意味を持つのかは米国次第といえるでしょう。 アメリカ政府高官と佐藤総理の信任状を提示していた若泉氏との交渉と議事メモやこの両首脳の核兵器持ち込みに関する合意内容は、当時の米軍幹部や議員の代表者にも承認を得ていることになっているものですから、米国には米国で議事録が残され、日米合意について歴代の米国の政府高官に引き継がれている可能性があるので、安易に効力がないと評価を下せないと筆者は考えます。
しかし、日米安保条約改正時の核密約問題でも明らかなように、有事でなくとも、米軍による日本への核持ち込みが可能となる手続き上の合意が成立しているので、ここで特に有事の際の核持ち込みを採り上げる意義はなくなったといえる。
■ 沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する項目について
沖縄返還時に米側が自発的に支払うとした返還土地の原状回復補償費400万ドルであるが、日本側は米資産買い取り費など3億2000万ドルを一括決済し、米軍用地の原状回復補償費400万ドルを留保する旨の内容を米国に送った外務大臣名の秘密の書簡が外務省の内部資料に存在した。
(参考)米側関連の資産買取等についての取決めを定めた沖縄返還協定を参考に示す。:
沖縄返還協定(琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定)
第7条
日本国政府は、合衆国の資産が前条の規定に従つて日本国政府に移転されること、アメリカ合衆国政府が琉球諸島及び大東諸島の日本国への返還を1969年11月21日の共同声明第8項にいう日本国政府の政策に背馳しないよう実施すること、アメリカ合衆国政府が復帰後に雇用の分野等において余分の費用を負担することとなること等を考慮し、この協定の効力発生の日から5年の期間にわたり、合衆国ドルでアメリカ合衆国政府に対し総額3億2千万合衆国ドルを支払う。日本国政府は、この額のうち、1億合衆国ドルをこの協定の効力発生の日の後1週間以内に支払い、また、残額を4回の均等年賦でこの協定が効力を生ずる年の後の各年の6月に支払う。
■ (重要)今回の核密約項目の調査で何が変わるのだろうか?
外務大臣が有識者に核密約に関して調査を依頼したが、一般の省庁でも非公開の資料が多くあるのが現実であり、こと外交文章では特に極秘扱いの文章で非公開とするものは、資料の非公開期間との関係や関係対外国との問題があり、このため、今回の調査においても資料が出てこない疑いは解消されないと推察されます。
外務省内部で資料の選別を行い、その中から公表できるものを資料として整理とりまとめ、これらを有識者に提出し、それら資料をもとに有識者委員会が内容を精査し、評価を行うのは、有識者委員会にとって困難であったろうと推察できるのです。
米国は核政策として核の存在場所を明らかにしないので、持ち込みや持ち出しについて明らかにしないはずであり、また、アメリカの戦略として核抑止力や戦略核兵器を実戦で使用する基本方針を策定しており、米国は、自国に及ぶと想定される危機に対しては、相手国からの攻撃が開始される前に攻撃を開始する方針を策定しており、特に核兵器については自国の核戦略方針を同盟国の都合で変更しないのです。 また、米軍の核の持ち込みについては、いわゆる現行の日米間で合意した安全保障上の手続きに準じておこなっていると説明しているのです。 果たして現行の手続きとは何を意味しているのであろうか。
それは、事前協議の適用対象について過去に駐日大使が米国の解釈を説明している内容で明らかです。
そして、米国はそれを実行して、現実に核兵器を日本に持ち込んでいたのです。(文献、種々の関係者による持ち込み実態の発言などより) つまり、通常の手続きとして、事前協議無しのフリーパスで米国は日本に核兵器を持ち込むことが可能であり、持ち込んでいるのです。 ( アメリカの解釈は、核配備という固定した install や deploy でなければ、核持ち込みに関する現行の日米合意の手続きにおいて持ち込み( entry )できるというもの)
筆者が、委員会による調査報告書の資料内容説明をもとに判断すると、既述したように、米軍機が核兵器を搭載して日本の米軍基地に entry して、核兵器の恒久配備ではなく、一時的に数日、あるいは、数十年間、核弾頭を降ろした状態にしておいたとしても、日米間の現行の了解済み手続きとして異議をはさむことはできないことであり、つまり、非公開の秘密事項です。
では、核密約の調査で何が変わるのだろうか?
繰り返して言いますが、核問題その他重要な事項においては、非公開とされる資料も存在し、すべてが提示されたのではありません。 ですから、証拠が出てこないのです。 本当の密約は表には出てこないのです。 これは誰もが想定している事実です。
今回、核兵器は自由に持ち込みが可能であることが明白になった。 つまり、日本は核拡散状態を容認し実行していることを証明したのです。 論より証拠。 日本にある米軍の核兵器関連の核兵器貯蔵施設への査察を行えば明らかになるが(日米間には核貯蔵施設の査察を行わない合意が存在:外務省が資料を廃棄あるいは隠蔽か?)、たとえ査察を行わなくとも現在の日米両国の隠蔽工作を見れば明白でしょう。
しかし、外務大臣は今後もこの核兵器持ち込みとなる状態を容認し、従前の条約の解釈の変更を求めるつもりはないことを表明しましたので、今後も、”何も変えない、何も変わらない”のです。
国民は、このような基地のあり方を容認できるはずがありません。 外務省の官僚や防衛省の官僚に操られ、何も対処しない、対処できない外務大臣、防衛大臣は、日本国民の代表として不適格であると日本国民は評価せざるを得ないのです。
日本国民は要求します。 日米安保条約の継続の条件は米軍の核兵器関連の核兵器貯蔵施設への査察です。 これがかなわない場合は日米安保条約は如何に危険かがわかるでしょう。 日本人が日本人であるために、日本人自ら正義を貫きましょう。
このような状況が続くのであれば、日本はアメリカの核兵器に頼らない、核廃絶に向けて核持ち込みを容認しない、また、現在の自衛隊のあり方が適当であるとも評価せず、日本独自の安全保障を国民全員参加で構築する政策を採るべきです。 そして、北東アジア及び東南アジアを含む汎アジア的な多国間での安全保障を構築することに努力すべきであると考えます。
日本国民の皆さんはどのように思われますか。
(参考) いわゆる核密約調査報告書は、外務省のWEBで見ることができます。 外務省の内部による調査報告書の添付資料リストを引用してこちらの表を作りました。 参考資料リスト1 及び 参考資料リスト2
外務省のWEBサイトに載せられている密約調査関連の全体の別添関連文章資料をみると、付属交換文章についての核持ち込みに関して日米間で細部について協議した記録内容はありません。
日本国民の人権を守るため、日本の真の独立を勝ち取り、アメリカの奴隷からの開放を目指すため、日米安保条約解約。
日本は、日本国民が無視され続けている不平等の日米安保条約を解約しなければならない。 日本国民が戦わねば、日本の夜明けは訪れない。
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