『シネマ一刀両断』つってるのに、ついにシネマとまったく関係のない記事を書きだす始末です。みんな最近どう。ふかづめです。
さてさて、春ですね。
春といえば花見。
花見といえばバカが騒ぐ。
バカが騒ぐといえばライブ会場。
ライブ会場といえば興奮のるつぼ。
興奮のるつぼといえばヘドバンやメロイックサイン。
ヘドバンやメロイックサインといえば、、、
どうですか、私のこじつけ力。「春」というキーワードから、わずか5手で「HR/HM」に辿り着く、この導き力。将棋だったら圧勝だよね。
ということで、世間ではハードロックとヘヴィメタルが一緒くたにされていて憤懣やるかたなしって感じなので、今回はハードロックとヘヴィメタルの違いについて講釈を垂れます。
こんな記事、誰にも望まれてないことは僕が一番よく分かってるから大丈夫。
↓ちなみにこれがメロイックサイン。
おまえ、何やっとんのじゃ。
もくじ
①ハードロックはやかましくない
そも、ハードロックとはブルースから派生した音楽である。わかるか。
ブルースといえば、フロリダのしみったれたクソ田舎で黒人のおっちゃんが昼間からウイスキーをのみのみ干し草のうえでギターをぺろんぺろん弾いて「今月の家賃光熱費が払えないだぁー」とか「牛が死んだだぁー」とか「今月は『ラブライブ!』のDVDを買ってPerfumeのコンサートに行ったから銭がねえだぁー」とかなんとか鼻水垂らしながら歌う、みたいな光景をイメージすると思う。
ハードロックとは、このブルースにディストーションと低音域をほんのちょっぴり利かせ、ぎゅんぎゅんのエレキギターと頭キンキンする高音シャウトをほんのちょっぴり足しただけに過ぎない。わかるか。
だからうるさいわけがない。
ゆえに就寝時に聴いてもリラックスして眠りに落ちることが可能というわけだ。
わかるか。
むしろ、世間一般に思われている「ハードロックってやかましい音楽なんでしょう?」という先入観は、しばしばヘヴィメタルと混同されているケースが多い。表記的にもHR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)と一括りにされがちだが、このふたつはまったく異なる音楽だ。
そもそも、ヘヴィメタルは構成主義に立脚しているので、基本的にはシンフォニックっつーか、荘厳なのである。したがって、むしろ世間のイメージとは真逆のクラシック音楽に近い。
そしてハードロックは泥臭く、ノリがいい。
とはいえハードロックもメタルも、重低音、パワーコード、ハイトーンボイスが基本なので、「怖い」、「やかましい」、「怖い」、「叫びすぎ。喉の心配をしてしまう」、「そして怖い」といった印象を与えてしまうのも事実。わかるか。
ハードロックの始祖、レッド・ツェッペリン。
②HR/HMの歴史
一言でいえば、ハードロックを母体として発展した音楽形態がヘヴィメタルである。
ハードロックとは、もともと60年代後期に「より直情的な音表現」を目指して誕生したロックンロールの発展形。1968年にレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバスの第一世代(ハードロックBIG3)が同時にデビューして、ハードロックの基礎を築く。
ハードロックなんて言うから「ロックをよりハードした音楽」と思いがちだが、ハードロックの根っこにあるのはブルースだ(ウイスキーを飲み飲みギターぺろんぺろんで「牛が死んだだぁー」な音楽です)。
全国の吹奏楽部が大体やるディープ・パープル。イントロを聴いただけでピンとくる人も多いぐらい、日本のテレビやCMで死ぬほど使われているバンド。
ハードロック第二世代は、クイーン、KISS、エアロスミス。ショービズの最前線で活躍する第二世代によって、泥臭かったハードロックは洗練され、華やかになった。
ベトナム戦争がアメリカの敗北によって終結した73年、虚無感を抱える若者たちは憂さを晴らすようにパワフルでノリノリなハードロックに熱狂したのである。
アメリカではヴァン・ヘイレンやY&T。イギリスではレインボー、デフ・レパード、ホワイトスネイク。ドイツではスコーピオンズやマイケル・シェンカー・グループ。そしてオーストラリアからはAC/DCが現れた。まさにハードロック戦国時代。
顔面を白塗りにしてるのがKISS。それ以外がエアロスミス。
80年代に入るとメディアがこぞってポップ・カルチャーの黎明を讃え、時代は超娯楽主義に。
この頃から、売れ線狙いのハードロックを揶揄した「産業ロック」というものが流行る。ボン・ジョヴィを筆頭に、ジャーニー、ボストン、REOスピードワゴン、サバイバーなど、映画やCMで今なお使われているポップでキャッチーな楽曲がロックファンの拡大に貢献した(産業ロックはコアなロックファンから馬鹿にされる傾向がある)。
甘いマスクで、男臭いハードロックに女性層を呼び込んだボン・ジョヴィ。しばしばアンチョビと間違われる。
また、「ヘヴィメタル」という言葉が定着してヘビメタブームが訪れたのも80年代だ。
一口にメタルといっても、大まかにわけて二通りの路線がある。ひとつは厚化粧をしてレザーファッションに身を包んだ「LAメタル」。ビジュアルバンドの先駆けだ。文字通り、西海岸ロサンゼルスを中心に栄えたメタル・ブームで、モトリー・クルー、ラット、ポイズンといった煌びやかな人気バンドたちは多くの女性ファンを虜にした。要するにLAメタルは軟派なメタルだ。
LAメタルの雄、モトリー・クルー。LAメタル勢は大体こんなファッション。
一方、ヒットチャートなど無視して硬派なメタルを貫いていたのがアイアン・メイデンやメタリカのような、いわゆる「ヘビメタ」と聞いて多くの人が連想するアレを地で行くバンド。
余談だが、繁華街をウロウロしているとメイデンやメタリカのバンドTシャツを着ている若者をよく目にする。バンドロゴがかっこいいので、日本ではメタルを聴かなくてもファッションとしてメタルを取り入れる人は多い。
ドライブを楽しむメタリカの皆さん。
だが90年代初頭、ニルヴァーナを筆頭に「オルタナティヴ・ロック」と呼ばれる新しいロックの形が提唱されたことで、ハードロックは時代錯誤とされ、ほぼほぼ淘汰される。
窮地に立たされたハードロックやメタルバンドたちは生き残るために音楽性を変えてオルタナに迎合したが、ほとんどのバンドは跡形もなく消滅した。
いわばオルタナとは、ロックシーンに落とされた巨大隕石なのだ。それによってハードロックという恐竜は一瞬で絶滅したのだから。
オルタナの代表格といえば、R.E.M.、アオシス、U2、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、コールドプレイなど。
90年代以降、オルタナはロックの世界基準になった。日本のロックに目を向けてみても、ミスチルもスピッツもアジカンもBUMPも全部オルタナだ。
J-ROCKの99%以上はオルタナティブ・ロックである。
今なお日本でハードロックを貫いているのはB'zぐらいでしょう。
ハードロックを滅ぼしたニルヴァーナ。ニルヴァーナ以降、ハードロックはもとより正統派のロックンロールそのものが古臭い音楽とされ、時代はオルタナティヴ・ロック一色に。
おまけに、当時27歳のカート・コバーン(画像中央のボーカル)がショットガンで頭をぶち抜いて自殺したことで、ニルヴァーナは伝説として祀り上げられた。
③ヘビメタと一括りにするけれど…
ちなみに「ヘビメタ」と聞いて、デスボイス、サタニズム(悪魔崇拝)、顔面白塗りで舌をベロベロする…といったイメージを持つ人は多いだろうが、これは『デトロイト・メタル・シティ』が流布した極端なイメージに過ぎない。
「ボオオオオ!」みたいにデスボイスを発するのはデスメタルだけだし、サタニズムに傾倒するのはブラックメタルだけ。顔面白塗りで舌をベロベロするのはKISSのジーン・シモンズだけだ。
多くの人はメタルと聞いてKISSのようなビジュアルをイメージするだろうが、メタルバンドが全員こうではない。むしろKISSが特殊なだけ。
このように、ハードロックを母体に発展したメタルにはサブジャンルが異常に多い。
スラッシュメタル、スピードメタル、ブラックメタル、デスメタル、ドゥームメタル、ゴシックメタル、シンフォニックメタル、ネオクラシカルメタルなど…。
その数、実に60種類以上!
もう細分化されすぎてわけがわかんねえ。
事程左様に「ヘビメタ」と言っても60種類以上あるので、たとえばメタラー同士が膝を突き合わせて音楽の話をしても「俺はスラッシュメタルしか聴きません」、「私はデスメタルやブラックメタルが専門なので、スラッシュメタルのことは全然わからない」という風に、ほとんど話が噛み合わないのだ。不毛!
北欧出身のメタルバンドは北欧メタルと呼ばれるし、ドイツでメタルを鳴らせば自動的にジャーマンメタルとなり、日本のメタルはジャパニーズメタルと呼ばれる。
もう「メタル」を付ければ何でも成立すると思っている節あり。
だったら俺だってふかづメタルだよ!
メタルシーンに殴り込んだろか!
できる楽器はカスタネットだけだがな!
メタルとオーケストラを取り合わせたゴシックメタルは荘厳で美しく、女性ボーカリストの場合が多い。メタル=むさ苦しい男の音楽というイメージは偏見だ!
④それぞれの音楽性
・ハードロックのルーツはブルースだが、ヘヴィメタルはバロック音楽。
・ハードロックで使用されるエフェクターはオーバードライブだが、ヘヴィメタルはディストーション。
・ハードロックのギタリストはまろやかな音色が出せるレスポールも使うが、ヘヴィメタルはエクスプローラーやB.C.RICHみたいなキンキンした音のギターを使う。
…など、それぞれに音楽的な特徴はあるは、死ぬほど分かりやすくて死ぬほどアホみたいな言葉で双方を特徴づけるならば、、、
ハードロックは固い岩で、ヘヴィメタルは重金属!
以上! 直訳しただけ!
音楽理論はまったく分からないので、これ以上は説明できません。こればかりは実際の音を聴き比べて実感して頂かないと…どうにもナランチャ。
それじゃあ、ちょっと聴き比べてみましょうか。
まずはハードロック。
フェア・ウォーニングの「Out On The Run」。
Aメロ→Bメロ→サビという歌謡曲の定番を押さえていて、音も明るくキャッチーなので聴きやすいです。
フェア・ウォーニングはメロディアス・ハード(メロハー)というジャンルで括られているように、ハードロックには大まかに分けてレッド・ツェッペリンや初期エアロスミスのようなブルース路線と、ボン・ジョヴィやフェア・ウォーニングのようなメロハー路線があります。
お次はメタルの中のメタル。
もうこれは最上級にゴリゴリのメタル。端的にうるせえよ(褒め言葉でもある)。
ただでさえボーカルのロブ・ハルフォード(愛称メタル・ゴッド)は4オクターブを超える金切り声なので耳鳴りがします。
モノクロでザラついたPVも相俟って「こわい…」と思う人がいるかもしれませんが、正しい反応です。生物として。
⑤代表的バンド
まぁ確かに、ハードロックとヘヴィメタルは明確な線引きによって定義されているわけではないので、「ブラック・サバスはハードロックだ」という人もいれば「いや、メタルだ」という人もいる。だからややこしいんですよ。
GLAYはビジュアルバンドか否かで紛争が起きるように。
そこで、私が提唱するHR/HMの判断基準は「うるせえと感じたらメタル」。
あなたが「うるせえ」と感じた音楽はすべてメタルなんですよ。もうそれでいいじゃない。
されど「うるささの中にも一抹の美を見つけたり!」とか思い始めたら、いよいよあなたもメタラー予備軍です。
ちなみに僕の中でハードロックとヘヴィメタルの境界線に突っ立っているのがインペリテリというバンドなんですね。最初インテリペリと誤読してさぞかしインテリなバンドなんだなと勘違いしていたインペリテリ。大好きなバンドだけど、ハードロックの高揚感もヘヴィメタルの重厚感もあるので、聴くたびに「どっちなんだろう?」と思ってしまう。
なので僕の場合、インペリテリよりも落ち着いていればハードロック、インペリテリよりも激しければヘヴィメタルという物差しで計ってます。
ロックに限らず、「音楽って色々ありすぎてわけがわからない」と思っている人は、自分の中の物差しを見つけると整理しやすいかもしれないね。
インペリテリの「Stand In Line」。ゴリゴリのメタルだけど絶妙にポップで聴きやすい。
ボーカルを務めますのは4オクターブの絶唱魔人、グラハム・ボネット先生。
ちなみに、僕なりに識別しているHR/HMの棲み分けがこちら↓
【ハードロック】
BIG3のレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバス。
重鎮のシン・リジィ、ブルー・オイスター・カルト、AC/DC、クイーン、KISS、エアロスミス。
その他、エクストリーム、オジー・オズボーン、ガンズ・アンド・ローゼズ、ジャーニー、スコーピオンズ、スティールハート、デフ・レパード、デンジャー・デンジャー、ナイト・レンジャー、ヴァン・ヘイレン、フェア・ウォーニング、ホワイトスネイク、ボン・ジョヴィ、マイケル・シェンカー・グループ、ミスター・ビッグ、モトリー・クルー、UFO、ヨーロッパ、レインボーなど。
【ヘヴィメタル】
重鎮のアイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、アクセプト。
スラッシュメタル四天王のメタリカ、メガデス、アンスラックス、スレイヤー。
その他、アングラ、アーチ・エネミー、ガンマ・レイ、スキッド・ロウ、スリップノット、DIO、ナパーム・デス、チルドレン・オブ・ボドム、テスタメント、ドラゴンフォース、パンテラ、プリティ・メイズ、マノウォー、マリリン・マンソン、メイヘム、聖飢魔II、X JAPANなど。
⑥サルでもわかるHR/HMの違い
ハードロックは髪を伸ばす。
ヘヴィメタルは筋肉をつける。
ハードロックは安い酒を飲む。
ヘヴィメタルは処女の生き血を飲む。
ハードロックはホテルに娼婦を呼ぶ。
ヘヴィメタルはホテルに悪魔を呼ぶ。
ハードロックはギターの弦をぶっちぎる。
ヘヴィメタルはヒトの動脈をぶっちぎる。
ハードロックはモラリストと戦う。
ヘヴィメタルはドラゴンと戦う。
ハードロックはメンバー同士で喧嘩をする。
ヘヴィメタルはメンバー総出で聖戦をする。
ハードロックは路上でカツアゲをする。
ヘヴィメタルは地獄で拷問をする。
ハードロックは地べたを這いつくばる(貧乏で空腹だから)。
ヘヴィメタルは大空を舞う(空想好きで中二病だから)。
ハードロックは赤ちゃんに煙草を吸わせる。
ヘヴィメタルは赤ちゃんを干しちゃう。
以上、『ハードロックとヘヴィメタルの違い』でした。
「最後まで読んだけど全然わかんねえじゃねえか、バカヤロー」と思う人がいるかもしらんが、安心して。それはキミだけじゃない。キミは一人じゃない。
ハードロック派として最後にこれだけは言っておきたい。
ハードロックの優位性はパワーバラードが多いこと。
バラードって基本的にかったるいじゃないですか。「何をダラダラと愛について述べとんのじゃ」みたいな。
しかしハードロックは、そんなシケたバラードではなく美しく力強いバラードの宝庫!
というわけで、最後はスティールハートの絶唱パワーバラード「I'll Never Let You Go」でお別れしたいと思います。
このボーカルも4オクターブを超える超音波魔人で、おそらくハードロック界No.1の歌唱力の持ち主。3分15秒~からが鬼。失禁したのちに失神するレベル。
今回は、私の勝手な趣味でロック4連発にお付き合い頂き、アリス&ご愁傷様です。
次回からは真面目に映画評をします。