卵と出汁は1:3が黄金比!プロが教える、一生ものの茶碗蒸しレシピ
和食の定番、茶碗蒸し。シンプルな料理ですが、加熱が難しかったり、味つけがうまくいかなかったり。いつかは上手に作りたい、ちょっと憧れのメニューです。作ってはみたものの、うまくかたまらなかったり、ぶつぶつと穴があく『す』が入ったりという失敗を経験したことがある方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、一度覚えたら一生使える決定版のレシピをプロに教えてもらいました。あわせて、よくある失敗の原因や解決方法も徹底解説します。
「茶碗蒸しを失敗してしまう原因はさまざまですが、一度作り方を覚えてしまえば、すごくシンプルで繰り返し作りやすいメニューです。蒸し器がなくても、電子レンジや鍋で作ることができます」とは、フードコーディネーターの村井りんごさん。まずは、迷いがちな卵と出汁の比率について、教えてもらいました。
卵と出汁は1:3が黄金比。卵1個に対して出汁180ml程度が目安
「出汁の量は、卵の約3倍と覚えておきましょう。出汁が多いと固まらず、卵が多いとかたい仕上がりになります。卵1個はLサイズで60ml程度なので、その場合の出汁の量は約180ml。卵の量はSMLのサイズによっても、個体によっても変わるので毎回計量しましょう。計量して比率を守ることが、失敗を防ぐポイントです」
※電子レンジで加熱する場合は、比率は1:2.5がベストバランス。その方が、加熱ムラが起こりにくくなります
味つけは塩だけ。シンプルに仕上げる基本の茶碗蒸しレシピ
材料(4人分)
- 卵Lサイズ…2個
- 和風出汁…卵の容量の3倍量
※今回はかつおと昆布の出汁を使用。Lサイズの卵を使ったため、分量は360ml程度 - 塩…小さじ1/4
- <具>
- 鶏もも肉…20g
※塩少々(分量外)で下味をつけ、出てきた水分をキッチンペーパーで拭き取っておく - かまぼこ…5mm厚さ4枚
- しいたけ(薄切り)…4枚
- 三つ葉…適宜
- 鶏もも肉…20g
① 卵の容量を量る
計量カップに卵を割り入れて、容量を計ります(量は覚えておきます)。
「今回はLサイズの卵を使ったので、2個で120mlになりました」
② 卵をボウルに移してよくほぐす(決して泡立てない)
菜箸をボウルの底につけたまま左右に動かし、卵白のコシを切るようによくほぐします。
「ここでは泡立てないことが大事! 卵液の中に空気が入っていると加熱した際にブツブツとした『す』が入る原因になります」
③ 出汁を計量し、卵の3倍量を準備する
「卵の容量がキリの悪い数字だった場合、3倍量を計算するのが面倒なので、卵と同じ量を計量して3杯入れる方法がラクです。今回は卵が120mlだったので120mlの出汁を3杯入れましょう」
今回は昆布とかつお節の出汁を使いましたが、市販の白だしを活用しても。その場合は、すでに塩が入っているので、次の工程の塩はいりません。出汁は粗熱を取っておきます。
④ 冷ました出汁を卵に加え混ぜ、塩で味つけする
卵が入ったボウルに人肌くらいに冷ました出汁と塩を入れ、泡立てないように混ぜます。
「みりんやしょうゆで味付けすると水分量が変わってくるので、『塩だけ』が失敗しにくい作り方。出汁の風味や具材から出る味わいがあるので、塩だけでも十分美味しく仕上がります。みりんや砂糖を少量加えると、ほんのり甘みのある茶碗蒸しになります。みりんやしょうゆを足す場合は、そのぶん出汁の量を差し引きしましょう」
⑤ 卵液をザルなどでこす
④の卵液をザルやこしきでこします。残った卵白は無理に落とすとかたまりになるため、取り除きます。
「このひと手間で、蒸し上がりがなめらかになります。こしたときにできる泡をそのまま加熱すると『す』が入って口あたりが悪くなるため、スプーンなどで取り除きます。ライターの火を泡に近づけてもOK。空気が膨張して泡が弾けて消えます」
⑥ 耐熱容器に具材を入れる(具材は卵液の1/5程度)
準備した具材を耐熱容器に等分に入れます。
「具材はお好みですが、鶏やかまぼこを入れると美味しい出汁が出ますし、しいたけなどのきのこ類を入れると強いうまみが加わります。卵が固まりにくくなる舞茸や、水分量が多い具材は避けましょう。具材はたっぷり入れた方が美味しくなるように思えますが、具材から水分が出たり、卵に火が入りにくくなったりするので、卵液に対して、大体1/5量ほどにとどめることも失敗を防ぐポイントです」
※電子レンジで加熱する場合は、先に具材に火を入れるため、作り方が少し異なります。詳しくはこちら。
*丼などにすべての材料を入れて、大きく蒸す方法も
小さめの耐熱容器が複数ない場合は、丼のような大きめの耐熱容器に、すべての材料をまとめて入れて蒸すことも可能です。詳しくはこちら。
⑦卵液を器の8分目まで入れる
「卵液の泡が立たないように静かに注ぎます。卵は加熱すると膨らむので、量は器の8分目までを目安に」
⑧アルミホイルでフタをする
「蒸すときに蒸気や水分が茶碗蒸しに入らないように、フタは必ずしてください。専用の器のフタを使ってももちろんいいのですが、蒸すと熱くなって扱いにくいので、アルミホイルを使うとラクです」
⑨蒸気の立った蒸し器に入れ、強火で3分→弱火で約10分加熱する
蒸し器に茶碗蒸しの容器を入れたら、菜箸を1本かませてフタをします。強火で3分蒸したら弱火で約10分蒸し、一度火を止めて火の入り加減を確かめます(確かめ方は次の工程で紹介)。
※蒸し器がない場合の蒸し方(電子レンジ、フライパン、鍋)はこちら
「茶碗蒸しの容器を蒸し器に入れるのは、必ず湯が沸騰して蒸気が立ってから。低い温度で長く火にかけても、卵は固まりません。菜箸をかませるのは、フタを傾け、すき間を作るためです。傾けることでフタについた水滴が茶碗蒸しに落ちるのを防ぐことができます。また、鍋の中の温度が高すぎると『す』が入る原因になるため、すき間から蒸気を逃がして鍋の中の温度を上がりすぎないようにする意味もあります。フタに布巾を巻く方法もありますが、菜箸をかませれば布巾を巻く必要はありません」
卵が固まる70〜80℃程度の温度のギリギリを狙うことが、ふるふるの食感に仕上げるポイントなんだそう。
⑩火の入り加減は器を傾けてチェック
火を止めてから容器をひとつ取り出し、静かに傾けて状態をチェックします。
※蒸気が熱いため、フタをあける際は火傷に注意し、さらに容器も熱いため、持つときはふきんなどを使ってください
「卵を傾けたときに、汁が濁っていたら『加熱不足』、汁が透き通っていたら『火が通った』サインです。濁っている場合は、さらに加熱します。竹串を差す方法もありますが、傾けるだけで見分けられるはずです」
火が通っていればこれで完成。火が通っていなかったら菜箸を外して蒸し器のフタをきっちりと閉めてから、弱火で2~3分蒸し、火を消してそのまま3分待ち、余熱で蒸らします。
ふるっふるの茶碗蒸しが完成!
蒸し上がったら三つ葉を飾って完成。表面はつるつると美しく、スプーンですくうとふるふるっと震える茶碗蒸し。この、ようやくすくえる位のはかない柔らかさは、卵:出汁=1:3の黄金比の賜物。一度上手に作れるようになったら、もう茶碗蒸しはお手のものです!
蒸し器がない場合の蒸し方
茶碗蒸しは蒸し器がなくても電子レンジ、フライパン、鍋で作ることができます。それぞれの方法をご紹介。
① 電子レンジの場合【200Wで加熱】
電子レンジで作る場合は加熱ムラが起きやすいため、3つの工夫をします。①卵と出汁の量を1:2.5にする、②具材に先に火を通す、③4個一気にではなく、2個ずつに分けて加熱する、の3つです。
耐熱の器に具材を入れたらラップをせずに600Wで30秒加熱し、具材に火を入れます。その後、卵液を注いで加熱しますが、途中で取り出してこまめに状態を確認することが失敗を防ぐポイント。
200Wで6分加熱、取り出して状態を確認し、火が通っていない場合は1分加熱します。それでも火が通らない場合は、さらに1分加熱します。
「連続で8分加熱すると、卵に熱が入りすぎて『す』が入ることがあるので注意しましょう」
具材を入れて加熱した後、器が温かいうちに卵液を入れて加熱したいため、2個に具材を入れて加熱→卵液を入れて加熱、を2回繰り返して4個を仕上げます。
② フライパンの場合【鍋底に布巾をしき、水を張る】
フライパンの底に布巾を敷き、フライパンの1/3くらいの高さまで水を入れて強火にかけ、沸騰したら具材と卵液を入れてアルミホイルでフタをした耐熱の器を入れ、菜箸をかませてフタをします。
加熱時間は蒸し器と同じ、強火で3分蒸したら弱火で約10分蒸し、一度火を止めて器を取り出し、火の入り加減を確認。火が入っていない場合は菜箸を外してフライパンのフタをきっちりと閉めてから、弱火で2〜3分蒸し、火を止めてそのまま3分待ち、余熱で蒸らします。強火の時に器が揺れるほどグラグラ煮立てないこと。器が揺れるようだったら火が強すぎるため、少し弱めます。
③ 鍋の場合【蒸し台を入れて蒸す】
鍋底に蒸し台を入れて、蒸し台が浸るくらいの高さまで水を入れて強火にかけ、沸騰したら具材と卵液を入れてアルミホイルでフタをした耐熱の器を入れ、菜箸をかませてフタをします。
加熱時間は蒸し器と同じ、強火で3分蒸したら弱火で約10分蒸し、一度火を止めて器を取り出し、火の入り加減を確認。火が入っていない場合は菜箸を外して鍋のフタをきっちりと閉めてから、弱火で2〜3分蒸し、火を止めてそのまま3分待ち、余熱で蒸らします。
全量をまとめて蒸したい場合は
材料の分量や準備の方法は記事内で紹介しているレシピと同様。蒸し時間はやや長めになりますが、卵液のふるふる感をより堪能できる仕上がりになります。
丼などの器に具材の全量を入れ、卵液の全量を注ぎます。
蒸し器で作る場合は、蒸し器とフタの間に菜箸をかませて強火で6分蒸したら、弱火で約20分蒸し、一度火を止めて器を取り出し、火の入り加減を確認。火が入っていない場合は菜箸を外して蒸し器のフタをきっちりと閉め、弱火で2〜3分蒸し、火を止めてそのまま6分待ち、余熱で蒸らします。
鍋やフライパンだと丼などの容器が入りにくいので、蒸し器がない場合は電子レンジでの加熱がおすすめ。その場合は、レシピよりも出汁の量を減らし、卵:出汁を1:2.5の比率にします。耐熱の器に具材を入れてラップをせずに600Wで1分加熱。卵液を入れてふんわりとラップをかけ、200Wで約12分加熱し、一度器を取り出して火の入り加減を確認。火が入っていない場合は、さらに200W2分加熱。再度状態を確認して、火が入っていない場合はさらに200Wで2分加熱します。
村井りんご
フードコーディネーターとしてレシピ開発・メニュー撮影などを手がけ、「美味しく食べて健康に」をモットーに料理本を多数出版、料理教室を主催。
写真:矢野宗利
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
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