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himaginaryの日記

2018-04-16

ロドリック「1990年代に世界経済と国内経済・社会の主客転倒が生じた」Add Star

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昨日紹介したロドリックインタビューから、その他のロドリックの発言の概要をまとめてみる。

  • グローバル化は相異なるレントシーカー集団の相対的な力関係を変え、レントシーキングの土俵も変わったと思うが、レントシ-キング自体が増加したかどうかは分からない。
  • グローバル化を盲目的に持ち上げ、その恩恵を誇張し、マイナス面を過小評価したことによって、我々は事実上、ある種の権益に特権や優先権を与えてしまった。そのことが、製薬会社や海外の投資家が自分の欲しいものを易々と手に入れた一因。
  • その分断により、金融や政治のエリートは自己中心的だ、という感情が広く形成されている。企業が地元の良く訓練された労働力や公共サービスを必要としていた時には、地域社会の健全性は彼らにとって重要だった。企業が世界のどこでも操業できるようになると、地域社会との結び付きは弱まる。彼らは、もう君たちは必要ない、とあからさまには言わないが、グローバル経済での競争のため税金の低いところに行く以外に選択の余地がない、と言うようになる。銀行や大企業は、金融危機時に救済してもらう時を除き、政府に頼る必要はない、と考えるようになった。
  • 逆説的だが、左右ともに、自らの政策を正当化する言い訳にグローバル経済での競争を使っている。左派は、競争のためにインフラと教育に投資しなければならない、と言い、右派は、競争のために税金を下げ規制を緩和する必要がある、と言う。グローバル化は、そうしたことを余儀なくさせる外部の怪物として扱われている。しかしかつては、世界経済は、国内の社会が繁栄、完全雇用、包括的社会、平等といった目的を達成するために役立つものとされていた。1990年代以降に優先順位が逆転し、グローバル化が目的に、国や社会が手段になってしまった。

*1cf. ここで紹介したミラノビッチの議論

*2cf. ここここ

*3cf. ここで紹介したロドリック論文

*4cf. ここ

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