トランプ米大統領はシリアから軍を撤退させない=マクロン仏大統領
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は15日、ドナルド・トランプ米大統領はシリアから軍を撤退させず、「長期にわたり」関与すると確信していると述べた。
トランプ氏は先月末、米国は「シリアからすぐに撤退する」と語っていた。
シリアのアサド政権が化学兵器を使用した疑惑を受けて、米国と英国、フランスは14日、シリア空爆の合同作戦を実施。アサド政権が持つ化学兵器の製造施設とみられる場所など攻撃した。
15日にテレビで生放送されたインタビューでマクロン大統領は、攻撃の規模を限定的なものにとどめるようトランプ大統領を説得したことを明らかにした。
良好な関係にあると報じられる米仏両大統領は、軍事行動を前に複数回、会談を重ねていた。
マクロン大統領の発言を受け、サラ・サンダース米大統領報道官は、「米国の目的は変わっていない。米軍をできるだけ早期に帰国させたいと、大統領は明確にしてきた」と述べた上で、米国は過激派組織「イスラム国」(IS)を「壊滅させ」、再び勢力を得させないと決意していると付け加えた。
トランプ大統領は、13日夜にワシントンで行ったシリア空爆発表の演説で、「いかなる場合でも、米国は無期限のシリア駐留を望まない」と語った。
米軍は、クルド人とアラブ人で構成された民兵組織、シリア民主軍(SDF)を支援するため、シリア東部に2000人を駐留させている。
マクロン大統領のインタビュー
いくつかの内容で厳しい追求を受けたインタビューでマクロン大統領は、「10日前、トランプ大統領は『米国はシリアから撤退すべきだ』と語っていた。我々は、長期にわたり駐留する必要があると彼を納得させた」と述べた。
マクロン氏は、トランプ氏との複数回にわたる電話会談で、「(トランプ氏の)ツイートをめぐって事が大きくなってしまった後、攻撃対象を化学兵器(関連施設)に限定する必要があると彼を説得した」と明らかにした。
トランプ大統領が先週出したツイートには、「ロシアは準備しろよ。(ミサイルが)やってくるぞ。素晴らしくて新しくて『スマート』なやつだ! 自分の国の人々を殺して、それを楽しむようなガス殺人のけだものと協力すべきじゃない」と書かれている。
トランプ氏と強力な関係を築いているとみられるマクロン大統領は、トランプ政権発足後初の国賓として、米国を今月訪問する予定。
トランプ大統領は昨年、7月14日のフランス革命記念日にパリで行われた軍事パレードを観覧した。
マクロン大統領は、西側にはシリアで「行動する完全な国際的正当性がある」と述べた。今月7日にシリアの首都ダマスカス近郊のドゥーマで化学兵器が使用された明確な証拠があるとし、アサド政権が使用したと主張した。アサド政権はこれに激しく反論している。
マクロン氏は、シリア政府を後押しするロシアのウラジーミル・プーチン大統領に直接、ロシアは共犯者だと指摘したと語った。
「塩素を自分たちで使用したのではないが、化学兵器の使用をやめさせようとする外交チャンネルを通じた国際社会の努力をすべて無効化してきた」
マクロン氏は、シリアに対する現地時間14日未明の軍事攻撃は「完璧に遂行された」としたが、シリアに対する宣戦布告ではないと述べた。
今回の攻撃は、シリアで内戦が勃発してからの7年間で、西側主要国によるアサド政権に対する最も大きな攻撃となった。
マクロン大統領は、政治的な解決策を得るため、ロシアを含む全ての関係国・勢力との対話を依然として望んでいるとし、来月には予定通りモスクワを訪問すると語った。
仏BFMTVとのインタビューは3時間と長時間にわたり、ツイッターでは、「#MacronBFMTV」が15日夜遅くにトレンドのランキング1位になった。
現地の状況
化学兵器禁止機関(OPCW)の調査チームがダマスカスに到着しており、ドゥーマの化学兵器攻撃があったとされる場所を訪れる。西側は、サリンが使用された可能性も含め、塩素ガスなどによって数十人が殺害されたと考えている。
調査チームは週末にドゥーマを訪れる予定だったが、到着したとの情報は現時点でない。
ロシアは、化学兵器の痕跡は見つかっていないとし、なぜ調査チームによる報告の前に西側が攻撃を実施したのかと、疑問を呈している。
ロシアはドゥーマの攻撃はでっちあげで、英国が計画したと非難している。
OPCWは、誰が化学兵器攻撃を実行したかについて判断を下したり、公表したりすることは目的としていない。
外交の最新の動き
米国のニッキー・ヘイリー国連大使は15日、米CBSテレビとのインタビューで、バッシャール・アル・アサド大統領と関係のあるロシア企業への新たな制裁が16日に発表されると語った。
ロシアのシリア政権支援に関連したロシア企業への制裁は、過去1カ月間で2回目となる。
ヘイリー大使は、アサド大統領との直接対話の可能性を否定した。
ボリス・ジョンソン英外相は、シリアに対するさらなる攻撃は予定されていないが、もし化学兵器攻撃が起きた場合には再検討すると述べた。
プーチン大統領は、イランのハサン・ロウハニ大統領との15日の電話会談で、西側がさらにシリアを攻撃すれば「国際的な混乱」を引き起こすと語った。
米英仏が攻撃で標的にした場所
攻撃対象となった3カ所のうち、ダマスカス近郊バルゼにある施設は化学・生物兵器の開発、製造、実験を行っていると、米国は主張している。シリア政権は否定している。
このほか、ホムス郊外のヒム・シンシャルにある化学兵器関連とされる施設2カ所が攻撃を受けた。
米国は発射されたミサイルの数は105発で、シリアの防空システムによって迎撃されたミサイルはないとみられると説明している。シリアの化学兵器開発は何年もの単位で大きく後退させられたとしている。
一方でロシアは、シリアの防空システムがミサイル71発を迎撃したとしている。
(英語記事 Syria air strikes: Macron says he convinced Trump not to pull out troops)