NNNドキュメント「57年目の告白 強制不妊 産み育てる尊厳奪われ」[解][字] 2018.04.16
夫婦で買い物
ごくありふれた日常です
(麗子さん)焼肉するんだってお父さんがジンギスカンで…。
(小島さん)これいいか?
(麗子さん)え?
(小島さん)プルコギ。
(麗子さん)プルコギ?
しかし結婚以来夫には妻に打ち明けられない秘密があります
それは…
その手術を国が強制してもよいと定めた優生保護法
22年前まで存在していました
「そんな国が許せない」
1人の女性が今年ついに裁判へ
中学3年の冬に卵管を縛る手術をされました
不妊手術を強制されたのは全国でおよそ1万6000人
子を産み育てる尊厳を奪われて57年
夫はあの夜妻に全てを告白しました
こういうことが新聞に出たんでさ…。
札幌市に住む小島喜久夫さん
毎日のように報じられる強制不妊手術の記事を集めています
(小島さん)これ見てびっくりした。
小島さんは今回初めて実名を公表し取材に応じてくれました
(小島さん)まずこれが1枚目。
手記にしたためた57年前の出来事
「私は生まれてすぐ子供のいない農家にもらわれました」
「しかし仲たがいした親に連れて行かれた精神病院で『精神分裂症』と診断されると本人の同意も無く手術をされました」
(スタッフ)嫌だとは言えなかった…?言えない言えないそんなもう。
そういうもう強制的。
いや〜…。
やっぱりホントに怒りだな。
小島さんが強制されたというのは精管を切除する手術
タクシーの運転手をして妻との暮らしを支えて来ました
しかし19歳の時に不妊手術を受けさせられたことだけは妻に言えないまま時が過ぎました
(小島さん)言えないです。
言えないっちゅうことは…。
やっぱり…。
なぜ子供ができないか妻に問われると「病気のせい」とウソをつくしかありませんでした
宮城県に住む飯塚淳子さんも軽度の知的障がいと診断され不妊手術を受けたといいます
飯塚さんが16歳の時に連れて行かれたのは県立の診療所
手術の後自宅で耳にした両親の会話から子供を産めなくされたことを知りました
結婚をしたものの子供ができない体であることを告白すると夫は突然家を出ました
子供ができないことで離婚を繰り返して来ました
なぜ私の人生は狂ったのか
生前父が記した手紙には…
「やむなく印鑑押させられたのです」
「優生保護法にしたがってやられたのです」
知的障がいがあるから妊娠してはいけない
周囲の人が責め立て父が手術に同意していました
(飯塚さん)それで…。
不妊手術が強制されたその背景…
そこには国が進めた障がい者差別の歴史があります
これは太平洋戦争が始まった翌年に発行された政府系のプロパガンダ誌です
そこには「精神の劣った子供を儲けたのでは国家の負担になる」
さらに健全な兵力労働力をつくるため結婚相手には「悪い遺伝の無い人を選びましょう」
この思想を色濃く受け継いだのが終戦から3年後に制定された優生保護法
条文に掲げられた病名の数々
「遺伝性」と診断されれば不妊手術を強制しても合法とされたのです
国が進めた「命の選別」
20年にわたり強制不妊の実態を調査して来た利光恵子さんは当時敗戦からの復興が優先されていたと指摘します
でそうするとやっぱりその時の…。
あるいはその…。
ようやく今その実態が明らかになって来ました
広島県には医師が手術の対象者を申請した優生手術申請書が残されていました
13歳の知的障がいの少女が手術すべきとされた理由は「痴漢の性欲の対象になるから」
本来国に守られるべき障がい者達が優生保護法の下で人生を狂わされました
厚生労働省によると不妊手術を強制されたのは1万6475人に上ります
実際に手術する対象者を選んでいた医師に話を聞くことができました
1962年頃東京で知的障がいの女性の手術申請を行ったといいます
(岡田さん)すぐ後になって問題の…。
だから加担だし…。
「手術をするのは人のため」
優生保護法の下そんな空気が広がっていました
そして今ずさんな申請がまかり通っていた実態も明らかに
知的障がいがありますが簡単な家事ならこなせます
義理の姉の路子さんは由美さんの母からかつて優生手術を受けていたことを聞かされました
その疑念が確信に変わったのは去年7月
宮城県庁で不妊手術を強制されたことを示す証拠となる文書が見つかったのです
不妊手術が47年12月2日に行われたことが記されていました
当時由美さんは15歳
手術の理由は遺伝性精神薄弱
しかし由美さんは遺伝するはずがないと訴えています
これに対し国は…
…と主張
そのかたくなな姿勢に由美さんは人権侵害を放置したとして今年1月仙台地裁に提訴
全国で初めて裁判に持ち込みました
国は請求の棄却を求めています
この裁判をニュースで知った札幌市の小島さん
57年の沈黙を破り妻に告白しました
(小島さん)実はねこれ母さんにさ俺もこういうふうになってこういうことがあったんだ…ってね打ち明けたのその日。
結婚して何十年もたって。
もしそれまでこのこと…。
だけどそれをごまかしてテレビに出たから…これは見てないよ。
そしたら…。
「あんたウソでしょ?」ってこう言うでしょねぇ。
「いや俺がそうなんだ」って。
何か思い詰めたような顔して…。
いやホントに笑える問題じゃないぞ。
分かるって。
俺にしたらつらかったんだから。
妻にも言えなかった忌まわしい記憶
57年押し殺して来た怒り
(麗子さん)ねぇ?そうなるべさねぇ?そういう名前を付けられてそういうふうにされてだよ。
それもダメだ。
手術をしたとされる病院は記録を10年分しか残していませんでした
小島さんにはただ証拠がないのです
脳性まひのため両腕が不自由な…
四角いのですか?ごめんなさい。
(小山内さん)箱。
(ヘルパー)あっこれですか?はい。
ヘルパーの助けを借りながら一人暮らしをしています
小山内さんの生活を取材した映像が残されていました
足の指でタイプライターを打つ小山内さん
本を出版するなど自立した生活を目指して来ました
かつては「生理の始末が自分でできないなら子宮を取る」ということが当たり前のように考えられていたといいます
障がい者は声を上げることもできませんでした
小山内さんも中学生の頃いつも寄り添ってくれていた母に不妊手術を勧められました
しかし病院に向かう直前タクシーから飛び降ります
小山内さんは31歳の時に恋愛結婚し長男大地さんを出産
母やボランティアの力を借りながら足を使って子育てを続けて来ました
手術を免れたからこそ感じることができたわが子を育てる喜び
おいしい。
・おいしい?甘くない?・
大地さんは現在32歳
地元の大学を卒業し理学療法士として働く息子を小山内さんは頼もしく感じています
振り返ってみてそういったところがあったのでそういった意味で…。
ちょっと大げさな言い方かもしれないですけど。
…部分はあるかなと思います。
う〜ん…。
もちろん…。
手術されたと妻に告白した札幌市の小島さん
手術の痕は体に残っているのか
この日証拠を求めて病院に向かいました
先月超党派の議員が被害者の救済に向けて動き始めました
しかし強制的な不妊手術を受けたとみられる1万6475人のうち個人の特定につながる資料が残されているのはおよそ2割にすぎません
厚生労働省はようやく実態調査に乗り出します
しかし証拠のない人をどう救うかが大きな課題の一つです
泌尿器科に不妊手術の痕跡を見つけてもらいに来た札幌市の小島さん
その結果は…
まぁだから…。
医師からは手術の痕は分からないと告げられました
妻と歩んで来た人生
踏みにじられた思いを一人抱えて来ました
小島さんは間もなく国を提訴します
今回初めて実名で取材に応じた訳
それは言い出せずにいる多くの人に声を上げてほしいから
そして…
ホント。
57年目の告白
国が人生を変えた
産み育てる自由や尊厳を奪う権利は誰にもない
さよなら〜。
(女性)バイバイ。
赤ちゃんを産んでも育てられない
予期しない妊娠に身動きが取れない女性達
果たしてオンナだけが悪いのか
2018/04/16(月) 00:55〜01:25
読売テレビ1
NNNドキュメント「57年目の告白 強制不妊 産み育てる尊厳奪われ」[解][字]
本人の同意なしに生殖不能とする手術を行った旧優生保護法。強制不妊手術を受けたとされるのは約1万6千人。なぜ「産み育てる」という尊厳を奪ったのか、国の責任を問う。
詳細情報
出演者
【ナレーション】
湯浅真由美
番組内容
「不良な子孫の出生を防止する」として、本人の同意なしに生殖不能とする手術を行った旧優生保護法。北海道の76歳男性は「19の時に手術された」と主張する。足が不自由な上「精神分裂病」と診断され強制的に不妊手術が行なわれたという。全国で強制不妊手術を受けたとされるのは約1万6千人。行政の資料は失われ、当事者の高齢化も進む。「産み育てる」という尊厳が強制的に奪われた残酷な歴史から、国の責任を問う。
制作
札幌テレビ放送
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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