ダメダメ女子が怪獣になって大暴れ? 怪獣映画にして女性映画でもある快作『シンクロナイズドモンスター』

 

グロリアとシンクロした大怪獣がソウルで大暴れ
グロリアとシンクロした大怪獣がソウルで大暴れ

 オスカー女優でもあるアン・ハサウェイが、あっと驚く役柄に挑戦した作品。なんと言っても「酔っぱらいのダメ女が韓国で大怪獣になって暴れて巨大ロボットと戦う」映画なのですから。しかも彼女は製作総指揮にも名を連ね、ノリノリでこの役を演じています。

 ニューヨーク。失敗をしでかして会社からリストラされたライターのグロリア(アン・ハサウェイ)は、職探しもせず毎晩飲み歩き朝帰りを繰り返す日々。ついには同棲中の恋人ティム(ダン・スティーヴンス)にも愛想をつかされ、家を追い出されてしまいます。

同棲中の恋人に扮するのはダン・スティーヴンス
同棲中の恋人に扮するのはダン・スティーヴンス

 家も仕事も彼氏もなくしたグロリアの居場所は、生まれ故郷の田舎の小さな町しかありませんでした。そこで小学生時代の同級生オスカー(ジェイソン・サダイキス)と偶然再会した彼女は、彼が経営するバーで働き始めることに。しかし酒量が減ることはなく、近所の公園でぼーっと過ごすこともしばしば。そんなある日、韓国のソウルに突然大怪獣が出現したというニュースが世界を駆けめぐります。TVでその場面を見たグロリアにある違和感が…。怪獣の仕草が、なんだか自分の動きに似ているような気がしたのです。半信半疑のまま再び公園に行き、様々なポーズをとってみると、怪獣もまた同じ動きをしています。原因はまったく不明ながら、公園のグロリアとソウルに現れた怪獣は、ある特定の時間に限って完全にシンクロしていたのです!

 こんなとんでもないストーリーを考え出したのは、スペイン出身のナチョ・ビガロンド(『ブラック・ハッカー』)。ジャンルを超越した不可思議な世界を作り上げています。ソウルを舞台にした怪獣と巨大ロボット(こちらはなぜかオスカーとシンクロしている)の激突シーンは、日本の怪獣映画にオマージュを捧げているかのようです。

怪獣に続いて巨大ロボットも出現
怪獣に続いて巨大ロボットも出現

 しかし実はこの映画、女の子の自分探しを描いた映画でもあるのです。前半のグロリアのダメダメぶりが強調されればされるほど、後半の彼女の立ち直りがめざましく見えるわけなのですね。それにしてもアンのダメ女演技は壮絶です。元々は作家志望だったグロリアでしたが、小さな町では目が出ないとニューヨークへ。しかし彼女がなれたのはネットのライター止まりで、そこでも記事が炎上してさんざん叩かれたことが原因で仕事をなくしてしまいます(ネットで叩かれた、という点では現実のアン・ハサウェイ自身とも重なります)。何もできない自分へのいらだちと、“デキる男”である恋人ティムへの劣等感が彼女を酒に溺れさせたのです。しかも故郷に戻って出会ったオスカーが、またとんでもない男で…。

再会した同級生オスカーが新たなる障害としてグロリアの前に立ちはだかる
再会した同級生オスカーが新たなる障害としてグロリアの前に立ちはだかる

 自分のささやかな人生に満足できず、他人を羨み、妬み、やがては攻撃することや自分より下に貶めることでしか幸福感を得られない者たち。現実に対するはけ口を常に求めている者たち。グロリアも最初はその一人だったのですが、彼女はある方法でそんな負け犬人生と戦おうと決意します。そのやり方が実に痛快! ビジュアルイメージから怪獣ファン向けの映画のようですが、実は正統派の女性映画。男性中心の価値観がはびこる世の中に戦いを挑んだ作品でもあるのです。

(付記)

アン・ハサウェイが語ったことによると「グロリアは最も自分らしいキャラクター」だそうです。

(『シンクロナイズドモンスター』は11月3日から公開)

配給:アルバトロス・フィルム

(c)2016 COLOSSAL MOVIE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.