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「データ分析」をコントロールできない
4月10、11日に開催された米議会の公聴会でも、予測によるプライバシー侵害の実態に迫るような質疑応答が少しだけ展開されていた。民主党所属のドリス・マツイ(Doris Matsui)下院議員はザッカーバーグCEOに対して何度も「ユーザーは自分のデータをコントロールできていない」と追及していた。
公聴会でザッカーバーグCEOは、ユーザーが自身のデータの公開範囲を設定したり、フェイスブック上からデータを削除したりできることを指して「ユーザーは自分のデータをコントロールしている」と主張していた。しかしマツイ議員は「データブローカーやアルゴリズムがあれば、ある種の仮定ができる」「データが広告で利用されたら、我々(ユーザー)はそれをコントロールできない」などと指摘し、「データ利用のコントロール」こそが重要だとの見方を示した。質疑応答はマツイ議員のこうした指摘に対してザッカーバーグCEOが「そうは考えない」と反論したところで時間切れとなった。
公聴会では、フェイスブックによる自社サイト以外でのユーザー追跡に関する追及もあった。フェイスブックはWebサイトオーナーやスマートフォン用アプリケーション開発企業に対して、Webサイトやアプリを利用するFacebookユーザーを特定する仕組みを提供している。「Facebook Pixel」や「いいね!」ボタンなどで、これらをWebサイトやスマホアプリに埋め込む。
1億ページ以上でユーザー追跡
「Facebook Pixel」や「いいね!」ボタンは、Facebookにログイン中のユーザーだけでなく、ログオフしたユーザーまで追跡している。この点について民主党所属のデビー・ディンゲル(Debbie Dingell)下院議員は「Facebook外部のWebサイトにFacebook Pixelなどは何個配置されているのか」と質問。ザッカーバーグCEOが「正確な数は分からない」と答えると、ディンゲル下院議員は「1億以上か?」とたたみかけ、ザッカーバーグCEOに「それ以上だと思う」と答えさせた。
また民主党所属のジェリー・マクネリー(Jerry McNerney)下院議員も、ユーザーのWeb閲覧履歴に関してザッカーバーグCEOを追及。フェイスブックが提供するユーザーデータの一括ダウンロード機能について、「ユーザーはWeb閲覧履歴をダウンロードできない」と指摘。フェイスブックが追跡しているユーザーのWeb閲覧履歴の所有権がユーザーにない現状を疑問視した。
もっとも、こうした厳しい追及は、民主党所属の議員によるものがほとんど。両院で多数を占める共和党からはこうした指摘は無かった。公聴会でザッカーバーグCEOは、同社が全世界で「EU一般データ保護規則(GDPR)」に基づくユーザー保護を提供すると語っている。GDPRにはプロファイリングを規制する内容も含まれているが、公聴会でプロファイリング規制に関する言及は無かった。ザッカーバーグCEOは米議会の追及から自社のビジネスモデルを守り抜くことはできたようだ。