この記事は日経 xTECH有料会員限定ですが、2018年4月19日10時まではどなたでもご覧いただけます。
米フェイスブック(Facebook)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEO(最高経営責任者)は、2018年4月10、11日(米国時間)に繰り広げられた米議会の追及に「勝利」した。米国ではこのような見方が主流だ。同社のビジネスモデルそのものが問題視されることがなかったためだ。
米上院の司法委員会と商業科学運輸委員会が4月10日に、米下院のエネルギー・商業委員会が4月11日にそれぞれ開催した公聴会。本来は、フェイスブックのビジネスモデルの根幹となるユーザーデータの利用法や保護体制を問い正す場になるはずだった。
実際、共和党のグレッグ・ウォルデン(Greg Walden)下院議員は11日の公聴会冒頭で、フェイスブックに関する様々な疑問を解き明かしたいと意気込んでいた。例えば「フェイスブックのビジネスモデルをはじめ、オンラインプライバシーと消費者保護に関連するデジタルエコシステムの全貌など、まだ答えが得られていない深刻な疑問が複数存在する」「サードパーティによるユーザーデータへのアクセスをどう管理していたかが明るみに出ることを期待している」「Facebookに投稿したデータがプラットフォームの外部でどう利用されているのか、ユーザーの混乱を解き明かす」などと宣言していた。
しかし、こうした疑問が解明されることはなかった。ザッカーバーグCEOは、事前に公表済みの謝罪や事実関係を述べるばかり。新しい事実はほとんど判明しなかった。株式市場はフェイスブックが議会の追及をやりすごしたと判断し、公聴会前に158ドルだった同社の株価は公聴会後に166ドルまで上昇した。
議員が分かっていなかった疑惑の本質
公聴会は2日間で合計10時間近くに及び、約100人の議員が代わる代わる質問をぶつけた。それでも追及が空振りに終わったのは、今回の「フェイスブック・スキャンダル」の問題点が何であるか、議員がよく理解していなかったことが挙げられる。
今回の疑惑の発端は、英国のデータ分析会社であるケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)がFacebookのユーザーデータ8700万人分を不正に入手していたことだった。このため、多くの議員はユーザーデータの流出が問題の本質と勘違いしていた。この点をザッカーバーグCEOに追及しても、「ユーザーの許可無くデータが外部に流出する仕様は2014年に修正した」「当社は広告主にデータを販売していない」とかわされるだけだった。
しかし本当のプライバシー問題は、別のところにある。米国人が今回のフェイスブック・スキャンダルに激怒したのは、ユーザーがFacebook上に公開した「たわいもない」情報から、本来は隠しておきたいプライバシーまであらわになってしまうことが明らかになったからだった。読者の理解を深めるために、改めて詳細を確認しておこう。