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規制緩和・政策 週刊現代

民営化した大阪メトロが「今のところは成功している」と言えるワケ

良し悪しの分岐点はこう見よ

「いい民営化」と「悪い民営化」

4月1日から大阪市営地下鉄が民営化され、「大阪メトロ」にリニューアルした。1933年開業、大阪の大動脈として旅客を支えてきた老舗地下鉄だが、設備の老朽化などが進んでいて、民営化による新たな事業展開や設備投資が期待される。

今回の地下鉄民営化が成功するかどうかは、過去の民営化事例が参考になる。前例では「いい民営化」と「悪い民営化」の両方が存在する。では、その分岐点はどこにあるのか。

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まず民営化の良し悪しを判断するには、経済学における「財・サービス」の定義に使われる2つの区分方法を知っておこう。ひとつの区分は「排除性」といって、特定の消費者をその財・サービスから排除できるかどうかだ。もうひとつは「競合性」といい、消費者のあいだで消費に競合があるかどうかである。

これだけ聞いてもわかりづらいので、例を挙げよう。まず、排除性と競合性を併せ持つのが「私的財」だ。食べ物や服、車など、世の中のほとんどの財・サービスはここに分類される。

 

一方、排除性はあるが競合性を持たないものは「クラブ財」といわれ、図書館がその典型だ。図書館は入館制限ができるが、一定の範囲内の利用者であれば、値段や貸し出し冊数に競合は起こらないので非競合性があるといえる。

また、競合性があるが排除性のないものは「コモンプール財」といわれ、道路や橋が該当する。利用者を排除するためのコストが高いが、利用者が増えると混雑するので競合性がある。

最後に、排除性も競合性も持たないものが「公共財」と定義され、その一例が国防だ。誰でも便益が得られるうえ、誰かがたくさん使うとほかの人が使えない事態は起こりえない。