はじめての部下が警官殴って会社辞めた話

ブラック企業に務めていた時、初めての役職と初めての部下を任せられることになりました。戸惑いながらも一緒にやってきた部下が突然いなくなってしまいます。何となく思い出したので書いてみました。それだけです

 

社長の決断

朝会社へ行くと、社長は難しそうな顔でこう言った。

「Y君が昨日の夜、酔っ払って警察官殴ったらしい」

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(え?!)

Y君は私の直属の部下だった。

社長は話しを続ける。

「だからもう会社に来ないように言ったから」

(ええ!?)

私は混乱でワチャワチャし始めた。

「な、なにか僕からY君に連絡を・・・」

社長は強い口調で

「ダメ!連絡もうしないで、いいね?連絡先も今消してね?」と言いました。

社長はいつも細い目でニコニコしているが、目を開いた眼差しは強烈です。

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私は黙ってうなずくしかありませんでした。

※会社を辞めた人間と連絡をとってはいけない、というルールがあったのです。

頭の中で色んな考えがグルグル回ります。

(え?)

(おわり?)

(Y君とこれでお別れ?)

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Y君という男

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Y君は私が面接して入社した初めての部下でした。

彼の詳しい素性は知りませんが、

「地元で問題を起こして居られなくなった」とだけ聞いていました。

どうやら怪しいマルチビジネスの勧誘をしすぎたらしい。

入社後、彼はよく私にも

健康食品

化粧品

洗剤

を勧めてきて「一緒にマルチビジネスやろうよ!」と誘ってきました。

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大変良い話に聞こえましたが、残念ながら私はお断りました。

なぜなら

私はすでに、この「ブラック会社」に洗脳(騙されて)いたからです。

この仕事をしていれば「成功出来る」と思い込んでいたのです。

Y君の夢

Y君の夢は、マルチビジネスで「不労所得?」を手に入れて

「一生働かずに暮らす事」なのだそうです。

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不労所得とか?私には難しくてよくわからない話でしたが・・

夢があるのは良い事だと思いました

飛び込み営業の天才

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Y君には「飛び込み営業の才能」があったようでした。

心が折れてすぐ辞めてしまう社員が多いこの会社で

Y君は入社直後からバンバン契約をとってきて、

周りの同僚や先輩たちを驚かせていました。

 

なぜそんなに突然始めた「飛び込み営業」で契約がとれるのか?

 

Y君は言います。

 

「飛び込みは、知らないお客さんに怒られたり嫌われるだけじゃん?」

 

「マルチビジネスの勧誘は、家族や友人から絶縁されるんだよ?」

 

「こんなんチョロすぎるわ!」

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なるほど!

それを聞いて私は背筋がゾクッとしました。

この子は一体どんな人生を歩んできたのだろうか・・・・?

そこに深い闇を感じました。(人の事は言えませんが)

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Y君との思い出

一応上司と部下だった私とY君は「営業指導」の為に

二人でよく飛び込み営業をして回りました。

「Y君クビ」の知らせを聞いた私の頭に、二人の思い出が蘇ります。

 

大きなお屋敷で「チワワの大群」に襲われた事

 

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足を穴だらけにされてしまいましたが、

何だか可笑しくて二人で大笑いしました。

 

Y君が田舎の道場でクレームを起こして

道場で二人で土下座した事・・・。

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二人共お昼ごはんを買うお金が無くて

田舎の個人商店で100円のカップうどんを二人食べた事。

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どれも楽しい思い出ばかりです。

しかし、私がY君と再会することは2度とありませんでした。

数年後~Y君のその後~

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数年後、私も会社を離れ

そのブラック会社も潰れていました。

ある日街中を歩いていると、昔辞めた元同僚と偶然再会しました。

なんやかんや世間話をしていると、

 

その同僚は思い出したように

「そういえば、お前の部下だったY君みかけたぜ!」と言いました。

(え?Y君?まだこの街にいたのか・・・)

私はビックリしました。

Y君・・・今何をしているのだろうか・・・。

ファミレスで働くY君

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元同僚はたまたま入ったファミレスで、

働いているY君を見つけて話しかけたそうだ。

 

話を聞くと、Y君はアルバイトをしながら

まだ「マルチビジネス」での成功を夢みて頑張っているらしい。

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元同僚はそこでY君から

しつこく「マルチビジネスの健康食品」を勧められたらしい。

 

 

(相変わらずY君はたくましいなぁ・・・・ハハ

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私は安心しました。

 ただ「Y君が生きていてくれた事」だけで安心できたのです。

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ブラック企業を辞めた者の末路

私のいたブラック会社は「この会社に入れば幸せになれる」という強い洗脳をかけていたので、会社を辞めると強い「虚無感」に襲われます。

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それは、会社を辞めてから洗脳が解けると

「自分の今置かれている本当の状況」に気づいてしまうからです。

 

そのあまりに激しい現実との落差に「絶望」してしまい、

死んだほうがマシと考えてしまう人も多かったようです。

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じゃあ誰かを都合良く利用する為の

「気持ちのよいウソ」に騙され続ける方が幸せだったのでしょうか?

 

それが良いとも言えませんよね・・・。

 

誰にも迷惑をかけず、みんなが幸せになれる方法で

自分も幸せになれていけたら良いんですけ・・・・。

 

そううまくもいきませんよね・・・。

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