「警察を辞めてくれないか?」
唐突にそんな事を言われたので酷く動揺しました。
「や・・辞めたくありません!」
私はうろたえながらも、すぐに返事をしました。
そこから小一時間ほどお説教がありました。
しかしこの時の内容は他愛も無い話で・・・
「しっかりしてくれ!」という程度のモノでした。
私は申し訳ない気持ちで一杯で・・
ただただ頭を下げ続けました。
問題はこの個室への呼出の後に起こりました。
同期からのイジメが、
急激にエスカレートしていったのです。
数日後・・・部屋に戻ると・・・
私の目覚まし時計が床に叩きつけられていました。
確か・・これが始まりでしたかね・・・?
今度は私の持ち物が少しづつ消えていきました。
(いいさ・・大したことじゃない・・・・)
私は何も言えず我慢し続けました。
しかし黙っていてもイジメは終わりません。
ある日・・高校時代から付けている
『日記』が無くなっている事に気が付きました。
部屋のロッカーのカギが開けられていたのです・・
(これは・・・まさか・・)
嫌な予感がしました。
早足で共有の娯楽の部屋に行くと
同期達が私の日記を読み上げて笑っていました。
これはなかなかツライ・・・参りました。
彼らはナゼこんな事を始めたのでしょうか?
原因の一つは『私が教官に呼び出されたこと』
なのだと私は思います。
私が個室に呼び出され、教官に「辞めろ」と
促された話を知らない同期は居ません。
朝から晩まで生活を共にする警察学校では、
殆どの情報が筒抜けです。
「警察官としてふさわしくないのだから、
イジメて辞めるように仕向けても問題無いだろう」
「教官に目を付けられているから何をされても
どうせ密告することは出来ないだろう!」
みなそんな考えだったのでは無いでしょうか?
ただ・・厳しい訓練の中での集団生活ですから、
みんな強烈なストレスを溜め込んでいたのです。
こういう特殊な状況が、
彼らに異常な行動をさせていたのだとも思います。
まぁ・・たぶんですけど。
警察学校の教官達も当然イジメに気づきます。
しかし・・・止めてはくれません。
イジメが過激になればなる程・・・
私の目には教官達が焦っているように見えました。
理由は・・・なんとなくわかって頂けると思います。
イジメがエスカレートし始めると・・・・
教官達からの呼び出しの回数が劇的に増えました。
教官達もエスカレートしていったのです。
毎晩のように私は個室に呼び出されて、
「警官を辞めろ!お前には向いていない!」
と叱責され続けるようになったのです。
「お前はバカだ!」
なんていう汚い言葉も飛び出します。
しかし私は・・・・
どうしても警察官を辞めたくありませんでした。
毎晩毎晩・・・・ひたすら謝り続けました。
私は幼いころからずっと警察官になりたかったのです。
幼稚園の頃には「おまわりさんになりたい」と
周りに言っていた記憶があります。
10数年間ずっと憧れ続けた警察官に
やっとの思いでなれたのです・・・・
辞めたいワケが無いのです!
しかしいつまでも状況は変えられず・・・
厳しい訓練がを終わった後、毎晩のように
個室に呼び出されて数時間叱責され続けます。
ある日・・・ようやく上司の叱責が終わり、
フラフラの状態でお風呂に入ろうとすると・・・
総代(同期のリーダー的役割をする人)
がお風呂に向かう私の前に立ちふさがりました。
「風呂を使う時間は過ぎているだろ?」
と言われると確かにその通りなのですが・・・
私は教官達に個室で叱責され続けていたのです。
決められたお風呂の時間に入浴出来ません。
そのことを説明したのですが・・・・
「警察官ならルールを守れ!」
と取り合ってくれません。
なぜこんな事をするのか?
(まさか教官達と示し合わせて、
私を追い詰めようとしているのか?)
なんて・・・疑心暗鬼にもなりました。
しかし何があろうと、
警察官を辞めろと言われようと、
「辞めません、頑張らせて下さい!」
と教官達に毎日頭を下げ続けました。
すると教官達もシビレを切らしました。
どうやっても私が辞めないからです。
そしていつもの通り・・・
訓練を終えてから個室に向かうと・・・
なんと!そこには父が居たのです。
あああ・・・・そういう手を使うのか・・・
私は恥ずかしい気持ちでイッパイでした。
🔻後編につづく