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2017年9月7日(木)

<ツイセキ>近所に突然 葬儀場が…

皆さんのご近所の建物がある日突然、葬儀場に変わったら―。

多死社会を迎えようとする現代ならではのトラブルかもしれません。
 

取材班が話を聞いたのは、大阪市旭区のある地域の住民たち。

 

【住民】

「住民無視の、住民配慮本当にない。そういうふうなことで営業されてるからね」

おととし近所にできた葬儀場との間で、問題が発生しているというのです。

 

【記者リポート】

「千林駅降りてすぐのところですが、カメラ店や住宅があり、すごく静かな地域という印象。
 ありました、あそこが今回問題になっている葬儀場です。
 横には、葬儀場反対の旗が立てられています」

 

駅からほど近い場所にある、一見事務所のような小さな葬儀場。

周囲には、葬儀場反対と書かれた旗や何台もの防犯カメラ。

一体、何が起きているのか?

 

【住民】

「この前にスタッフが立たれて、お見送りをされる。
 この前の道を全部使って葬儀を行っているというような状態です」

 

これは、葬儀場の隣の家に設置されている防犯カメラの映像です。

家の前で遺影と位牌を持った遺族が車に乗りこむ様子が映っていました。

もちろん、この道は葬儀会社の敷地ではなく、公道です。

さらに…

 

【住民】

「今、霊柩車とめてるんですけど」

【記者】

「ここまでですか、とまるのは」

【住民】

「この後カーテンで目隠しをされるんですけど、こういう状態です」

 

霊柩車はバックして建物に入りますが、前方が道にはみ出しています。

近くの路上では、警察に移動するよう促されているのでしょうか。

待機していた霊柩車やマイクロバスが動き出すところも映っていました。

 

どうやら、葬儀場の敷地内には車を停める十分なスペースがないようです。

 

ことし1月。

この日は、歩行者が車を避けてセンターライン近くを歩くような状態が14分間続いていました。

 

【住民】

「公的な機関にも相談しましたが、縛る法律がないということで、すごく困っています」

 

実は、葬儀場の営業に関する特別な法規制はありません。

大阪市の制度では、費用を抑えて葬儀ができる会場の一つに指定されているこの葬儀場。

もともとは青果店だった建物を買い取り、改築した上で使われていて、
敷地面積は56平方メートルと狭く、隣の家とも密接しています。

 

10年以上、葬儀トラブルの相談を受け、400軒ほどの葬儀場を見てきた専門家に、

写真を見てもらいました。

 

【日本エンディングサポート協会 佐々木悦子(ささきえつこ)理事長】

「こういう形でやってるのは初めて見ました。想像以上…ですね…」

 

隣の家に密接し、霊柩車の駐車スペースも十分でないケースは見たことはないと話しました。

そのうえで、死亡者数の増加に伴って、葬儀業界に参入する企業が増えたことや、
小規模な葬儀の需要が増していることが問題の背景にあるのではないか、と指摘します。

【日本エンディングサポート協会 佐々木悦子(ささきえつこ)理事長】

「一般の家をリフォームして葬儀場にするというのも、
 一つの業界の中ではブームといますか、ニーズがあります。
 20年後には今の2倍から3倍はお葬式も増えていくということもあるので、
 場合によっては、小規模な場所で増えてくれないと、葬式する場所が確保できないということにもなりかねない」

今後、さらに数が増えていくとみられる葬儀場。

地域との摩擦を避け、営業していくには、どうすればいいのでしょうか。

 

取材班が向かったのは、京都府長岡京市。

コンビニエンスストアを改装してできた葬儀場です。

 

【洛王セレモニー角野拓人さん】

「強行突破で建築することもできるんですが、近隣住民に周知して納得してもらった上で営業していきたい」

 

葬儀場に改装する前に説明会を開催し、住民の要望を受けて、周辺から霊柩車が見えにくいように柵を設置。

中の臭いが漏れないよう、換気口を住宅側に向けない工夫もしました。

 

長岡京市は、ことし4月に指導要綱を作り、葬儀会社に対して隣の家と十分な距離をとることなどを求めています。

 

【洛王セレモニーの周辺住民】

「催し物とかをされたり、ご挨拶に来てくれるので、そんなに嫌な印象は持ってない」

「初め、『え?あんなところに?』と思ってたんですけど、一度父が利用したことによって、
 利用すると自分でも思っていなかったので、そういうこともあるんだな、と思った」

 

一方、大阪・旭区のケースでは、周辺の住民が「葬儀場」だと直接説明されたのは、
開業の3週間ほど前だったといいます。

葬儀会社は2回、住民と話し合いの場を設け、
隣の家に面した窓は開けないようにすることなど、一部の要望には応えました。

しかし住民たちは、換気口の向きや駐車スペースなどについては、

納得する対策がとられないまま、葬儀場が開業されたと訴えています。

 

【住民】

「開き直って、『うちはもうこれで精いっぱいやってるから何もしません」っていうことで、結局『もうお金がないからしません』って」

【住民】

「葬儀屋が嫌なわけでもないし、争いたいわけでもないが。『法に違反してないから、何が悪いねん』っていう態度でこられると…」

 

周辺住民たちは、平穏に生活する権利が侵害されているとして、
営業差し止めを求めて裁判を起こし、司法に判断を委ねることにしました。

 

取材に対し、葬儀会社は代理人弁護士を通じて、

「自前の会場で葬儀を行うことが、 社長とその家族が 生活を維持していく上で重要だ」と回答。

 

その上で、葬儀場から臭いが漏れることはなく、関係車両も通行の妨げにはなっていない、
停車時間は開業当初より短くなっているなどとして、裁判では、全面的に争う姿勢を見せています。

そして、次のように主張しています。

 

「原告は、人の死・通夜や葬儀という儀式を忌み嫌い、気分を悪くしたり不愉快に思っているにすぎない。
 営業を妨害する目的で本件訴訟を提起することは、職業差別というほかなく、許されるものではない」

 

大切な人の死と向き合う時間を過ごす場所。

多死社会を目前にした現代にあって、そのあり方が問われています。

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