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株主優待を賢くゲットする「つなぎ売り」のポイントとは?

こんにちは、カブドットコム証券の投資アナリスト藤井明代です。前回「26年ぶり高値の日経平均株価、今後を占う材料は意外にも『原油価格』?」と題して、日経平均株価の行方を左右するとみられる材料をご説明しました。今回は株主優待をテーマに、株の値下がりリスクを抑えつつ、賢く株主優待を獲得できる手法「つなぎ売り」をご紹介します。

つなぎ売りとは?

つなぎ売りは、簡単にいうと「現物株の買い(一般的な買い注文)」と、証券会社などから株を借りて売る「信用取引での売り(信用売り)」を、同じ銘柄・同じタイミングで発注する手法です。「買い」と「売り」を同時に行うので、株価変動における損失発生リスクを回避できます。

たとえば、株価が100円のA社株を1株、つなぎ売りしたとしましょう。A社株が110円に値上がりすると、現物株の買いでの利益は10円ですが、信用売りの分は10円の損失になります。現物株で10円もうけ、信用売りで10円の損なので、差し引きの損益はゼロになります。つなぎ売りをすれば、理論上は、株価が1円になろうが、100万円になろうが損益はありません。

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つなぎ売りをしないと、優待の価値以上に株価が値下がりして損する可能性がある

株主優待がある銘柄は、優待を受け取れる権利が決まる日(権利付き最終売買日)に向けて買い注文が増え、株価が上がりやすい傾向があります。一方で、権利付き最終売買日の翌営業日(権利落ち日)以降、しばらくの間は株を持っていても優待はもらえないため、ほかの銘柄を買う資金にするための売り注文が膨らみ、株価が値下がりしやすいです。

せっかく株主優待目的で株を買ったのに、優待の価値以上に株が値下がりして損をしてしまっては、もったいないですよね。しかし、つなぎ売りをすれば、株価が値下がりしても損するリスクは抑えられるので、権利落ち日以降に株価が大きく下落しても慌てることはなくなります。リスクを抑え、お得に株主優待がゲットできるので、個人投資家に人気の取引手法となっています。

つなぎ売りはどうやるの?

つなぎ売りの流れを簡単にご説明すると、以下のようになります。

権利付き最終売買日の寄り付きまでに「現物買いと信用売りを同時に成行発注」
権利落ち日に「品渡(しなわたし)」(現渡、げんわたし)

これだけ見るととっても簡単! しかし、寄り付き(午前の取引開始)前に発注しないと、タイミングによっては売る価格と買う価格がずれて損益がゼロにならないほか、信用売りでは「一般信用」を活用しないと逆日歩(ぎゃくひぶ)というコストがかかってしまう場合があるなど、注意点もいくつかあります。

つなぎ売りで気をつけたい5つのポイント

気をつけたいポイントは主に5つです。

ポイント1:お目当ての優待品が、手数料コストよりも魅力的か

つなぎ売りでは、現物株を売買する際の手数料のほか、証券会社などから株を借りる際に支払う「貸株料(かしかぶりょう)」が必要です。証券会社の手数料体系にもよりますが、もらえる優待品の価値以上にコストがかさむ場合もあります。あらかじめ優待品がコストを上回るほど魅力的か、チェックしてくださいね。

ポイント2:信用取引では一般信用を利用する

信用売りには、制度信用と一般信用の2種類の取引があります。つなぎ売りでは一般信用の利用をオススメします。制度信用の売りは人気の銘柄ほど逆日歩(株を借りる先が別な金融機関から株を調達する際に支払うコストを投資家に転嫁する仕組み)が高くつくことがあるからです。

なお、一般信用では証券会社により取り扱いの銘柄(一般信用在庫)が異なります。事前に取扱銘柄の在庫があるかも確認する必要があります。

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ポイント3:注文は権利付き最終売買日の寄り付き前、または後場寄り前までに発注する

信用売りと現物買いの取引注文は、権利付き最終売買日の朝9時の寄り付き前まで、もしくは昼休み中の後場寄り付き前(12:30)までに両方の成行注文を完了させておきます。寄り付き前に発注を完了させておけば、板寄せのルールにより同価格で取引が成立します。これにより株価がどちらに動いても損益がゼロになり、リスクを抑えることができます。

現物買いと一般信用売り注文を「同値」で約定させ損益をゼロにするために、株式市場が始まる前に成行注文を発注します

取引時間中にそれぞれを別に発注してしまうと、売りと買いで取引成立価格がずれてしまい、価格が変動した際、損をしてしまうことがありますのでご注意ください。

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ポイント4:権利落ち日に「品渡(現渡)」で取引を完了させる

権利落ち日以降、信用売りと現物買いは「品渡(現渡)」という方法で決済し、つなぎ売りの取引を終了させます。品渡とは、信用売りのために借りてきた株を、新しく現物株を買って返すのではなく、いま持っている現物株を返済にあてて決済する方法です。

現物買いと信用売り建玉の決済手数料を無料にするため、品渡をします。品渡で現物と信用売りの建玉がなくなり、取引が終了します。権利付き最終売買日に取引し、翌営業日に決済することで保有期間が短くなり、貸株料を最小限に抑えられます

現物買いと信用売り建玉の決済手数料を無料にするため、品渡をします。品渡で現物と信用売りの建玉がなくなり、取引が終了します。権利付き最終売買日に取引し、翌営業日に決済することで保有期間が短くなり、貸株料を最小限に抑えられます

つなぎ売りを解消するために新しく株を買ったり、いま持っている現物株を売ったりするとそれぞれ手数料が発生するため、注意しましょう。カブドットコム証券の場合では「品渡」手数料は無料のため、決済コストはかかりません(手数料コストは各証券会社により異なります。事前にお取引する証券会社にてご確認ください)。

ポイント5:後日支払う配当調整金と受け取る配当金の差額に注意

現物株を持っていると、企業から配当金が受け取れます。税金が引かれるため、実際には配当金の80%ほどのお金が手元に入ります。一方で、一般信用の売りでは、買った人に対して、配当金額と同額(100%)の配当調整金というお金を支払う必要があります。

つまり、配当金の80%の金額を受け取り、100%のお金を支払うので、差し引き20%を負担しなければいけません。

しかし、「特定口座(源泉徴収あり+配当受け入れあり)」かつ配当金を証券会社で受け取る「株式数比例配分方式」を選択していれば、特定口座内で自動的に損益通算され、差し引き20%分が翌年還付される場合があります(お取引内容などにより税金の計算方法が異なる場合がございますので、事前にご自身でご確認ください)。

まとめ

いかがでしょうか。つなぎ売りは、株価の値下がりによる損失を抑えつつ、株主優待も受け取れる便利な仕組みです。信用売り、という一見すると取っつきにくい手法が必要ですが、寄り付き前に同じ銘柄を同じ株数だけ同時に発注し、権利落ち日に品渡で決済するだけなので、決して難しいことはありません。かかるコストに注意しつつ、賢く優待をもらいましょう。

もっとくわしく知りたい方は、カブドットコム証券の株主優待ページ「リスクを抑えて優待を取得」もあわせてご確認ください!

※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。

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藤井明代

藤井明代

カブドットコム証券(https://kabu.com/)投資アナリスト。大手ネット金融グループを経て、2013年10月入社。優待株やテーマ株などを追い、WEBやSNS、メディアなどで情報発信。 著書に『勝てる!「優待株」投資』(幻冬舎)

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