映画 パシフィック・リム アップライジング 感想
パシフィックリム アップライジングを見た。
前作を見た人は見ないわけには行かない。
前作を見ていない人も、お話はそんなにつながっていないから大丈夫だと思うが、主要登場人物が数名前作の人だったりその子だったりする。

以下ネタバレを書くので未視聴の人は回れ右で。
念のためもう一度。
以下ネタバレを書くので未視聴の人は回れ右で。



■あらすじ
 異次元から定期的に巨大なモンスターカイジュウが送られてくる。
 巨大戦闘ロボットイエーガーが建造されそれに対する。
 ついに、異次元との裂け目をふさぎ、カイジュウ戦争終結から10年。
 カイジュウの脅威はまた鎌首をもたげていた。

■感想
 俺の中では前作は別格である。(前作の感想
 100点満点中、10万点だ。細かいアラはあれどロボットバトルを実写で魅力的に描いた時点で何を言うのもヤボであった。
 そして今作は、100点満点中65点ぐらいである。悪くない。人によっては大好きだろう。
 また、自分にしたって前作の続編でなければ80点ぐらい付けたかもしれない。

■良い
・絵ヅラは充分しっかりしている
・単価分は十分楽しめる
・イエーガーカッコイイネ!

■悪い

・リアリティレベルを思いっきり下げた。
 これはほかでも複数見た感想なのだが。
 前作のリアリティレベルを仮にガンダム程度とすると、今作はマジンガーZ程度なのだ。
 そして物語の冒頭から、「はいはい今度の映画はこの程度のリアリティレベルでやりますよ」というのが開示される。
 ネタバレ注意を喚起した後なので書いてしまうが、 小型のイエーガーを少女が自作している。
 しかも実写トランスフォーマー的な、パーツが複雑でガチャガチャ動くくせに丈夫というハリウッド的なアレだ。

 そういう程度のリアリティレベルになったのだ。

・重量感もへったくれもない。
 絵ヅラはリッチになったのだが、演出がライトで、メカの動きが良くも悪くも実写トランスフォーマー的だ。

・中国推しが鼻につく
 レジェンダリーピクチャーなので、いつものごとく中国プッシュが強いのだが。
 シナリオに影響を与えるレベルで中国を猛烈プッシュしているので白ける。
 日本プッシュみ鼻につく。

■そもそも俺にとってのパシフィックリムとは
 俺にとってのパシリムは『リアルロボットものを実写で成功させる』というミッションを成し遂げた作品なのである。
 ちゃんと面白いし、ちゃんとリアルロボットの文法だし、市場での成功を成し遂げた。

 ロボジョックス、ガンヘッド、実写ガンダムと、見果てぬ夢がここに結実したのが、パシフィックリムであった。
 トランスフォーマーでは満たされぬ思いを、あふれる愛で満たしたのがパシフィックリムである。

 であるからこそ、リアリティレベルの絶妙な調整、ロボットのリアリティというのは、自分の中でこの映画の価値の9割を占める。
100点満点中10万点を取ったのは、このリアリティレベルの絶妙さである。

 リアリティレベルの絶妙さを捨てるならトランスフォーマーで十分である。むしろトランスフォーマー映画初期三部作のほうがまだ、アップライジングよりはリアリティレベルを高く設定している。

 先に述べた、小型イエーガーを自作する少女にとどまらず、世界的危機に対する組織、企業の在り方、イエーガーというあからさまにオーバースペックなハードを動かすまでの手続きの少なさ、カジュアルさ。
 もう、ぐっだぐだである。
 はいはい子供向け子供向け。娯楽用だからこれでいいよね。ジャパニメーション好きですよ。
 みたいなテンションである。
 別にリアリティがもっとも大事というわけではないのだ。前作の極めて他と比べて際立った特徴がスポイルされてしまったのだ。

 ガンダムがガンダム足りえたのは、子供向けロボットプロレスアニメをハイティーンの鑑賞に堪えるドラマに昇華しようと、悪戦苦闘した所にある。
 パシフィックリムがパシフィックリム足りえたのは、子供向けロボットプロレスを、大人の鑑賞に堪える実写ドラマに昇華しようとしたところにある。
 小馬鹿にされるようなものを大真面目に成立させようとする悪戦苦闘である。
 これは、ティムバートンやノーランのバットマンのような、アメコミヒーローというキッズコミックをダークヒーロとしてリアルに再構築しようとする試みである。

 『お前らこういうの好きなんだろ』ではなく『俺はこういうのが好きなんだお前らも好きになれ』である。

 だが、アップライジングは『こういうの好きなんだろ?』である。ちげぇよ。そこじゃねーよ。
 気楽に、ファンムービー作ってんじゃねーよ。

 監督が1作目のファンを公言していたし、ファン心理をくすぐるあれこれもあったので、監督交代劇はあったものの、おっかなびっくりの期待していた。残念だ。
 もちろんこれは個人の感想である。アップライジングが気に入った人も沢山いるだろう。

 別に一作目だってたいしたリアリティレベルではないのだ。ただリアルに見せようと悪戦苦闘している。
 それが、物語のタテツケであり、重量物のウソをごまかす、海戦であり、ナイトシーンである。イエーガーを動かすことがどれほど高コストであるか、組織維持が大変か。

 そこに持ってきてアップライジングは少女が自作してしまう。動きはトランスフォーマーのバンブルビーである。そのうえ大活躍してしまう。中国の女社長が操縦士である。

 ウソをウソとして楽しむには、ウソを打ち上げる堅牢な発射台が必要である。
 その発射台こそがリアリティであり、『ああこの世界ならそれはある』と思わせるだけの世界の蓄積である。
 あまりに軽い。発射台がまったくダメだ。TVシリーズかよ。

 発射台に魅力がないと、飛んでいく嘘が空疎になる。

 デルトロが監督を降りた理由を邪推したくなる。

■まとめ
 とはいえ、ロボット実写が撮影される状況というのは喜ばしい。
 マツモト2号の血脈というのは保たれてほしい。Gセイバーはなんだったんだ。
 願わくば、「パシリム2、刺さらないなら見なくていいや」ではなく「面白いかどうかは俺が決める」として、多くの人に見てほしいと思う。

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