この度、前職のブラック企業を辞めて転職しました。
珍獣屋記事は飽きたので初投稿です。
忙しい人のためのざっくり説明
・月間超勤上限の条件が30時間、実働超勤が月平均60時間で1年弱勤務
(すぐ転職活動を始めたので傷は浅かった)
・ねちっこく証拠集めをして内容証明郵便で1分単位で請求
・遅延分の利子も含め、50万円弱が支払われました
準備編
準備パートが一番長く、一番心が折れやすい、最初で最後の山場です。
定期的に自分が集めた証拠を見返して「恨」の気持ちを奮い起こしていきましょう。
私の労働条件・実際の勤務状況
前職の労働条件は週休2日制(部署により完全)、残業上限は月間30時間、それ以上は上長の許可を得て36協定を結んで上限60時間まで可能、という超ホワイト条件でした。条件は。
一般職(地域採用など)の社員は定時で帰る人が多くいましたが、幹部候補の総合職社員(含・筆者)にとっての定時は仕事が一段落した時間です。
労組へのアピールかタイムカードはありますが、それは形骸化した文化で、基本的に社内システムで毎日の勤務時間を報告する形式だったので、数字は実質いじり放題です。
「少数精鋭」の名の下に必要以上に社員を減らすのは違憲だろ。
転職を決意した瞬間
配属後3ヶ月目で考え始めました。かなり早かったです。
新卒採用だったので最初は穏やかな残業時間でしたが、仕事に慣れてくると帰れなくなるようになりました。
上司や先輩が平気で22時・23時まで残るような職場だったからね。
繁忙期みたいな概念はなく、1年中同じくらいの忙しさ。
3ヶ月目中盤で残業時間が30時間を超えたため、上司に36協定を申し出たところ、
『30時間何やってたか今報告できるか?』
『30時間分の残業代に見合う利益は出せたのか?』
とのお叱りが。自席に戻ると、先輩から
『ちゃんと調整して申請しなきゃ。俺は毎月28.5時間くらいで止めてるよ』
とブラックアドバイス。
お前毎日俺より1時間早く来て俺より2時間は遅く帰ってるだろ。
毎日がエイプリルフールかよ。
新卒特有の怖いものなしなケツの青いガキだったので、
・残業内容は摘要欄に書いて報告していた
・営業ならまだしも現場の仕事だし歩合制なら歩合制と労働条件に書け。その理論なら利益を出してない総務課がタダ働きじゃないのはおかしいだろ。
・確かに先輩と比較した仕事の早さは格段に遅いが、社員の職級に合わせて別途手当が出ているのでそこは問題ない(自己正当化)
とプンスコしながら帰り道に転職エージェントに登録したのを覚えています。
その後、直属の上司より上、さらにその上と最終的には部長クラスまで現状の説明と陳情を行いましたが、異動も環境の改善も行われなかったため、この会社に見切りをつけ、転職することにしました。
労働協約(就業規則)で理論武装。敵を知り己を知れば百戦危うからず。
まずは労働協約を再確認しましょう。
勤務時間、残業・休日出勤の割増率など、現状では何が守られていて何が反古になっているのか、根拠となる法律の条文はどれが該当するのか。
会社と社員の関係は、雇ってもらっているわけでもなく、働いてあげているわけでもなく、自分の労働を対価に給与をもらうという”契約”をしている関係です。
こちらの労働力は契約通りに提供しているにもかかわらず、給与支払いが一部でも反古にされた瞬間、正義はこちらに傾きます。
翌日からは「働いてやっているんだ」という強気な気持ちで職場に向かい、未払い残業代が支払われるその時までメンタルをやられないようにしましょう。
メンタルはすべての資本です。
メンタルがやられると、
仕事が回らない
→残業が減らない
→仕事ができてないから自己正当化もできない
→未払い請求どころじゃなくなる
→よりメンタルが死ぬ の無限ネガティブスパイラルです。
あの手この手で自己正当化して「俺は悪くない、会社が悪い」とメンタルを保てるようにしましょう。
法を犯してるのは会社側です。犯罪者のせいでこっちのメンタルがやられることほどアホなことはありません。
タイムカードの記録を抑えよう
これはめちゃくちゃ大事。
最終的にExcelで計算するときにこの記録を元にするので、毎月しっかり保存しましょう。
私はタイムカードに”年月”を書いた付箋を貼って撮影していました。
・裏面(月の後半)には年月の表記がなかったので、最悪法廷で争うことも考えていちゃもんをつけられないように
・後で整理するときにわかりやすいように
の2つが主な理由です。
「やべえ、今までのタイムカード保存してない」
って人も大丈夫。会社に請求すれば開示してくれるはずです。
雑に「残業代請求するわ。計算はそっちでよろしく」なんて言ったところで会社側はなかなか動いてくれませんが、「請求するからタイムカード開示してくれ」と言ってしまえば会社側に断る道理はありませんし、
断ってきたら後ろめたいことを自覚している証左なので、それはそれで裁判の材料にしましょう。
なんてったって正義はこちらにあるので。
「うちの会社タイムカードない……」
って人も詰みではありません。
次の項目でしっかり労働の記録を残していきましょう。
出退勤時間・勤務内容の記録は複数残そう
とはいえ、タイムカードだけでは正直不安なところはあります。
『ダラダラ会社に残っていただけで仕事していないのでは?』なんて言い逃れの余地を相手に残してしまうためです。
考えられる逃げ道は全部潰した上で勝負を仕掛けたいので、追加で証拠を集めましょう。
社内システムで申請した残業時間のスクショ
見出しの通りです。
実際に働いた時間がわかっても、申請済みの時間がわからなければ何時間分の賃金が未払いかわかりません。
前職の場合、上司が承認をすると上司の名前が追記されるようになっていたので、それを待ってからスクショしていました。
「少なくとも申請していた分は上司が承知・承認していた」という証拠作りです。
スクショしたデータは印刷するなりなんなりで物理的に保存しましょう。
日付入りの残業メモ
私はタイムカードとスクショ、そしてこのメモだけをやりました。
これら以外の2つはネットで見つけた方法ですが、面倒なのでマメな人向きです。
やり方は簡単。
【日付】【退勤時間】【残業内容】【備考】を退勤前に自分のノート、手帳などに走り書きするだけ。
資料に書き込みするふりをしながらささっと書けばバレません。
万が一バレて指摘されたら開き直りましょう。正義はこちらにあるので。
【日付】:見返した時に正確に遡るため。客観的に見てわかるように。
【退勤時間】:タイムカードがあるので5分刻みとかでも可。ない人は1分単位の方がきっちり請求できます。
【残業内容】:ここも大事。「雑務」「手伝い」などざっくりだと虚偽記載だなんだ言い逃れされそうなのできっちり書きましょう。「○○さんの△△補助」「□□課長指示」など人名を入れると◎。
【備考】:上司・先輩のブラック発言を記憶が鮮明なうちにメモしましょう。私は上司に呼び出されて『毎月上限いっぱいまで残業申請してると怪しまれるからちょっと減らして?』と打診された直後に自席に戻り、一言一句漏らさず恨み辛みを込めてメモしていました。
(記入例)
4/10 22:35 ◎◎案件対応、▲▲報告用データまとめ、
明朝会議の会場作成(××さん指示)
帰宅前に残業メール
会社のメーラーから個人アドレス宛に上のメモのような内容を送りましょう。
隣の席の人から見えるのでは?などを気にしてしまい私は続きませんでした。
退勤LINE
自分だけを入れたグループLINEを作り、毎日退勤時にひたすら投稿。
内容は上のようなメモに加え、位置情報やタイムスタンプも残せるので証拠としては強いです。
難点は、深夜まで残業してると疲れてうっかり忘れること。
私は2日で断念しました。
上司・先輩の不適切な発言は全部メモ
前項でも少し触れましたが、ちょっとヤバめな発言をされたら発言者名と一緒に全部メモしましょう。
『今夜は帰れないぞ?』など、一見冗談と取れる発言も全部です。発言があった事実と、そういう脅しがまかり通る環境であったアピールです。
外道かと思うかもしれませんが、先に”金を払い渋る”という外道行為に手を染めたのは相手なので、気に病む必要性はゼロです。正義はry
ボイスレコーダーはお守りに
上司から残業申請時間を削るように言われた日の帰り道にポチりました。
それ以降は不適切発言の言質は取れませんでしたが、2人きりでの面談の際などに隠し持って録音はしていました。
メリット
・ポロッと不適切発言が出たら儲けもの
・「いつでもお前を社会的に抹殺できるぞ」という強気で出られる
・上司の暴言が楽しみになる→メンタルを守れる(大事!)
デメリット
・3000円くらいなくなる
サビ残してる時点で3000円どころじゃない金が消えているのでデメリットは実質ゼロです(?)
Amazonで探すとスパイ用品みたいなUSB型、ボールペン型などありますが、大人しくベストセラーの商品を買いましょう。
前者は電池の持ちが悪い、音質がゴミ、日付データが残らないものもある、などの難点が多いので(購入者並感)。
レビュー見ると同じような用途に使ってる人ばっかで顔面草まみれや
給与明細はしっかり保存
これもタイムカードの次に大事です。理由は以下の通り。
・基本給を把握できる
残業代や休日手当は基本給を元に算出されます。1円単位でしっかり計算していきましょう。
・残業代計算の検算ができる
「自分の計算方法は正しいのか?」という指標になるのが支給残業代です。
労働協約の倍率と、申請した残業時間から残業代が正しく算出できれば、未払い残業代も正しく算出できているはずです。
安心して喧嘩を売りましょう。勝てる喧嘩ほど楽しいものはありません。
・給与支給日から利子が計算できる
私も調べるまで知りませんでしたが、未払い残業代には利子がつきます。
在職中ならば商法が適用され、遅延損害金(年利6%)が、退職後ならば賃金の支払いの確保等に関する法律が適用され、遅延利息(年利14.6%)が支払われます。
知らないと大損ですね。
法律は法を知っている人の味方とはよく言ったものです。
以上の理由から、未払い残業代の計算には給与明細が必須と言えますのでしっかり保管しておきましょう。
捨ててしまった人は再発行請求しましょう。
当然ですが、会社側に断る道理はありません。
実行編
さあ精算の時間だ
お疲れ様でした。ここからは一転攻勢です。
Excelなどで月ごとの残業代を計算しましょう。
手順としては、
①申請労働時間、実労働時間の差から未払い時間算出
②労働協約に基づいて残業代を算出。22時以降は深夜割増も。
会社によっては月間●●時間以上残業した場合は別途割増などの制度が整っている場合があるので忘れずに計算しましょう。
社内の残業時間申請フォーマットに近づけた方が情報の不足の可能性が少なくなって良いと思います。
また、このExcelは請求時に一緒に送付するつもりでしっかり作りましょう。
いきなり「未払い~~円払え」って根拠もなしに送るより、「実働がこれだけ、未払いがこれだけ、○営業日以内によろしく!」と、詳細なデータを添付した方がやり取りも少なく済むし、相手も逃げ道がないことを悟って素直に支払ってくれる可能性が高いです。
社内フォーマットに近づけるのもそのためです。
何度もやりとりする間に相手が粗探しや悪知恵をつけても困りますしね。時間を与えたら負けと思って短期決戦で行きましょう。
未払いのツケは大きい。利子も忘れずに
上で説明した遅延損害金、もしくは遅延利息の請求を忘れないように。
残業代自体には所得税がかかってしまいますが、こちらは利息に相当するため非課税となります。
もらえるもんはもらっておきましょう。
また、会社側と話がこじれた場合、
『ここが~~~~で怪しいから○○万円で手を打たないか』
『一括で支払うからキリよく××万円にして欲しい』
など値切りを行われることがたびたびあり、弁護士を介しても同様らしいです。
最悪そういった交渉があることも考えて、最初に提示する金額は(根拠がある限り)一番高くなるような金額をふっかけましょう。
内容証明郵便で確実に記録を残そう。すべては情報戦だ
計算に不備がないことを確認したら、請求書を内容証明郵便で送りましょう。
内容証明にはフォーマットがあり、枚数・文字数が決まっています。
ネット上に例はたくさんありますので、良い感じに作りましょう。
Excelで作ったデータは送れない(原則文章のみ)ので、こちらは書留で発送しましょう。
『受け取ってないよ!』などと言い訳をさせないために、それぞれ
計算明細:書留+配達証明
で送ってあげましょう。
多少金はかかりますが、ここまで頑張ったのですから最後まで全力を出し相手をきっちり詰ませて気持ちよくお金を受け取りたいですもんね。
「労働基準監督署に言うぞ」という文言も絶対忘れないように。
宛先は本社の経理関係部署の部長で十分かと思いますが、私はしっかりと社長の目に触れさせてあげたいので社長宛で送りました。
そして支払いへ
支払いに締め切り日を設けて請求書を送りましたが、ギリギリになってようやく前職役員より連絡がありました。
全額請求通りに支払う旨と、実際に会ってお詫びしたいとのことで、無事、全面勝利となりました。
後日、郵送されてきたお詫び状は額縁に入れて部屋に飾っています。
ざっくり内訳
あまり詳細な金額は書きたくないのでぼやかしますが、
未払い残業代:50万円(月平均30時間ちょい)
遅延損害金(年利6%):2.5万円
くらいです。残業の割増もそこそこ高く、人材以外は良い会社でした。
総括
・部長じゃなくて労働組合の幹部とか労働基準監督署に言えばリアルタイムに特等席でダメージ受ける様を観戦できてたと思う、惜しい
・面倒だったから在職中に請求したけど退職してからにすれば倍以上の利子がついてた、惜しい
以上