ウォンの対ドル相場が3年5カ月ぶりのウォン高水準で推移し、輸出企業も対応に追われている。1週間で20ウォン以上もウォン高が進んだのは異例だ。これは韓米が為替操作国指定をめぐる水面下での交渉を行っており、その過程で韓国政府が為替相場への介入内容の公表を検討していると伝えられたためだ。米国は為替問題を韓米自由貿易協定(FTA)交渉とリンクさせる方針を公に表明しており、通商専門家の間からは「韓国が為替主権を放棄しようとしているのではないか」と指摘する声まで上がっている。
韓米の為替交渉とはどういうもので、両国に何が起き、韓国が為替主権を放棄したと批判されるのか見ていきたい。
■30年前に輸出直撃した為替操作国指定
韓国経済は輸出という単発エンジンに依存し、何とか3%台の成長を維持している。経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、貿易規模が国内総生産(GDP)の100%に迫る国は韓国がほぼ唯一だ。韓国は輸出入の95%を米ドル建てで決済する。当然ウォン・ドル相場によって、企業と個人事業主の財布の重さが違ってくる。米国に輸出する場合、韓国はウォン安であればあるほど有利だ。
現代経済研究院は最近の報告書で、ウォンが対ドルで1%上昇すれば、輸出が0.51%減少すると試算した。このため、為替当局者は「韓国経済の国内バランスは韓国銀行が金利で保つが、もっと重要な対外バランスは為替相場で管理する」と話す。輸出入が適正な割合を保ち、韓国経済が貿易黒字を上げるためには、為替に神経を使わざるを得ないという話だ。
韓国政府が経済発展のために為替管理に注意を払っていることを貿易相手国である米国が歓迎するはずはない。米国は既に韓国政府による為替市場介入を問題視し、1988年に韓国を「為替操作国」に指定したことがある。当時根拠とされた法律は包括通商競争力法で、経常収支黒字が大きく、米国との貿易で得る黒字が目立つだけで為替操作国に指定可能だった。韓国政府は米財務省との交渉の末、1990年に為替操作国の指定解除を受けたが、その衝撃は大きかった。当時為替操作国に指定された後、米政府は韓国製自動車の関税を引き上げ、韓国の自動車輸出が打撃を受けた。成太胤(ソン・テユン)延世大教授は「87年と89年を比較すると、対米輸出は20%減少し、実質GDP成長率は5.4ポイント低下した」と指摘した。