「子どもの知性が伸びる教育」の3つの特徴
人生100年時代に向けて大人がやるべきこと
4月に入って新年度が始まり、多くの人が新しい生活を始めている。わが子が進学した読者の方も少なくないだろう。前回の記事「小中学校の『教育方針』が今春から変わる理由」では、今春から小中学校の教育が段階的に変わることや、その社会的背景について触れた。そして、新たな時代を生きる子どもたちに必要なのは「自己変容型知性」、つまり自分の価値基準を持ちながら、その限界を知り矛盾や相反する考え方を受け入れ新たな解を生み出す能力だと説明した。
では、「具体的にどんな教育をすれば、自分の子どもに自己変容型知性が身に付くのか?」と思われた方もいるだろう。今回はその疑問について考えていこう。そしてこの問いの答えは、実は子どもだけではなく、社員の育成や部下のマネジメントにも活用できる。
「自己変容型知性」の育成に必要な3つの要素
筆者が教育学を研究しながら、実際に中高生向けの教育プログラムを開発し提供する中で発見した、自己変容型知性を育むために必要な要素が3つある。「葛藤を越える体験」「自己を支える核の獲得」「学び手を主役にしたストーリー設計」だ。
1つ目は、「葛藤を越える体験」である。ハーバード大学ケネディスクールのロナルド・A・ハイフェッツはリーダーシップ研究の中で、「適応を要する課題」との出会いがリーダーとしての成長に欠かせないとしている。「適応を要する課題」とは、「それまでの思考様式を変容させなくては解決できない課題」のことだ。
そして、そうした課題が引き起こす「適度な葛藤」を乗り越える体験こそが人間の知性を高めるために必要であると、ハーバード大学教育学大学院のロバート・キーガン教授は『なぜ人と組織は変われないか』(英治出版)の中で説いている。