中国には行ったことがないが、彼らの発展の仕方は日本と同じでアジア的発展なのだ。
高層ビルバンバン建てて超ハイテクシステムを導入しまくる的な。
日本だって新幹線を初めて導入した時は今の中国のように最先端を行っていたのかもしれない。
だがよく考えてみてほしい。最先端を走ってきた今の僕らは幸せなのだろうか。suicaやpitapaの読み取りは圧倒的に早いし電車は今でも遅れずやってくる。
で、幸せかい?
想像してみよう。
中国のようにシェア自転車が普通になり、QR決済が実現した日本を。
相変わらずサビ残させられセクハラ、パワハラ満載の社会で生きているはずだ。
先進ヨーロッパが限りなく正解に近い
ロンドン滞在で思ったことだが、ヨーロッパの先進国ドイツ、イギリス、フランスはやたらバランスがいい。人権、テクノロジー、自然、労働環境が調和されている。
Brexit、移民問題などが言われるが、僕に言わせれば日本の労働環境ほどの問題は無いと思っている。例えばロンドンの地下鉄はよく止まる。ストライキがあると言われたり、謎の故障で通行止めになったりと日本ほどのクオリティではない。
だがクリティカルなところは担保されている。日本では実現できていないが、ロンドンの交通局は週末24時間営業になる。本数は少なくなるがいつでも帰れる。大阪に帰ってきて終電を気にしてミナミやキタで飲むのがつらい。
終電逃せば朝までコースだ。それはつらいから2時とかで帰りたいがタクシーぐらいしかない。金がかかる。ロンドンならバスも深夜営業がある。
pitapaで改札に入るとする。そこでトイレが改札の外にあることに気づいたり、忘れ物に気づいたりして戻りたくなった時、駅員にわざわざ声をかけて入場キャンセルをしてもらはないといけない。ロンドンのオイスターカードならタッチして入っても、忘れ物に気づいたらそのまま改札をタッチして戻ればいい。
そういう面倒になる部分の設計が非常にうまい。オイスターカードの設計もうまい。
ロンドンはZoneという区画が決められており、東西南北の範囲で乗り放題になる。
Zone1-Zone2が中心地のみ大阪で例えるならミナミからキタ、谷町筋ぐらいまでが乗放題になるイメージ。それで一ヶ月あたりの値段が決まっている。それより遠くに住んでいるならZone1-Zone3まで乗り放題になる契約をすればいい。Zone5まである。
おまけに地上を走る電車と地下鉄とバスまでが乗り放題で、バスに関してはZoneがないためどこまでも行ける。さすが世界帝国を作ったジョンブルはサービス設計がシンプルで巧みだと思った。大阪で例えるとJR、地下鉄、阪急、近鉄が範囲内なら乗り放題で、バスはどこまでも行ける設計なんだから。もちろん値段もそれなりにするが、Zone3までで130ポンド、だいたい2万ぐらいだから悪くない。観光地はほぼ網羅しているしね。
日本だとどうだろうか。大阪メトロpitapaは後払いだが、JRはチャージをしておく必要がある。こういう設計思想による統一ができてないため利便性を犠牲にし、その上で運営側にもコストがかかる。
オイスターカードでは買い物ができない。しかしロンドンの自販機はクレカ対応も結構あったりするし、自販機自体が少ないから飲み物はコンビニで買えばいい。ロンドンはほぼ全ての店舗でクレカが使える。使えないのは屋台の飯屋やアイスクリーム屋ぐらいだ。
ロンドナーが今更QRコード決済をうらやましがるだろうか?
イギリスはとっくの昔に「規格統一」がなされているのだから。
簡単に言えばクレカ1枚とオイスターカード1枚があればいいのだ。
てかクレカにオイスター機能がついたやつもあった気がする。ロンドン市民がクレカでタッチしていたのを何度も見た。
日本は規格統一が上手くいってないので、QRが羨ましいというのだろうがナンセンスだ。そもそも制度設計が下手くそなだけ。あとシェアバイクもすでにある。
バークレイズ・サイクルハイヤーというやつでロンドン内ならいたるところにある。
自転車都市ロンドンの象徴 シェアバイク「バークレイズ・サイクルハイヤー」で街を散走 - cyclist
政治、司法、人権、福祉とテクノロジー
ところでQR決済が導入され数秒の時間と財布が薄くなったところで、僕らの残業時間はどれくらい変わるのだろうか。木を見て森を見ずとはこのことだ。
ロンドン市民は残業をしたがらない。少なくとも日本ほどじゃあない。したくないからしないのだ。法律もきっちり機能している。通報さえすれば強欲な経営者は逮捕される。今年の冬にホームレスが駅で凍死しているのが発見され英国議会で話題になった。二大政党はこぞって対策を取るというようになった。ロンドンにはホームレスが多いが、東京で話題になったようなホームレスよけのオブジェで排除するようなことはせず、彼らを同情する人も多い。
日本のホームレスは割と冬に死んでいるらしいが国会で話題になるだろうか。NHSという国民皆保険の予算が足りなくて病院のベッドが足りなくなっていることもマスコミが政府を糾弾している。タクシーの運ちゃん達はストをしたし、貧困ビジネスとして目をつけられたウーバーは安全上の懸念により営業停止に追い込まれた。ウーバーは最先端テクノロジービジネスの代表だが、懸念があれば禁止される。Amazon、Google、Facebookなどのプライバシーの扱いもかなり厳しくなっている。最先端イコールすごいに陥っている日本とは少し違うようだ。
ゲイが手をつないで歩き、高校生がピンクの髪に染めている国なのだ。思想統制という意味では日本と中国は似たところがあるが、果たしてそれは理想だろうか。
発展スピードが羨ましいという人がいるが、そのおかげで犠牲になっているものもたくさんある。ヨーロッパ先進国のように犠牲になるものが少なく、おまけに暮らし安い社会のほうが良いと僕は思う。
そしてそれを実現するのはテクノロジーのスピード以上に制度設計の巧みさがあるのだろうと思う。ロンドンに大規模ビル群はないが、大規模公園が中心部にたくさんある。
過剰なサービスはないが、残業もたくさんしなくてすむ。
外食は高いが人件費のダンピングがない。僕の台湾人の友達が靴屋の店員で働いているが、時給9ポンド(1400円)である。物価は高いが、豚肉などの素材は日本よりも遥かに安い。700gで3ポンド(450円)とか売ってある。マジ安い。バーベキューソースは500mlで70ペンス(100円)。パンとかも20枚入りで1ポンド以下だったりする。
まとめ
ロンドンはクレカ1枚でほぼ生活でき、残業は少なく、人権を守ろうとする人が多く、公園がたくさんあり空が広い、シェアバイクのエコシステムもあり、週末は電車も24時間営業。外食は高いけど、素材が安いので自炊なら節約でき、無料の博物館・美術館は数十件ある。政府は露骨な改ざんをせず、大資本にも屈せず規制を導入する度量があり、ホームレスの死を無視することはない。金持ちクラブの寄付パーティでセクハラをされた告発女性を守り、糾弾するメディアもある。
はてブのような意識高い系でさえ、テクノロジーの発展だけを見て社会の制度設計には目を向けないんだから悲しくなるぜ。今の技術でも十分キャッシュレス決済は可能だし、シェアバイクも可能だろう。
ただただ日本人の経営、設計センスがなさすぎるだけなんだ。
そこをどう解決するか。
テクノロジー以上に重要だと思う。
最後に書こう。
本当に中国がすごいかい?