0又吉直樹のヘウレーカ!「なぜお祝いに“胡蝶蘭(こちょうらん)”を贈るのか?」[解][字] 2018.04.11

114月 - による admin - 0 - 未分類

頑張ります。
頑張りましょう。
あっまったんだ!今日はどこ行くの?どうも吉村崇です!まったんこと又吉直樹と僕とは知り合ってもう20年近くなんですが…。
いつもおかしなことに興味持つんですよね。
ほら…。
(又吉)へぇ〜!ああ新しくお店ができたんですね。
お祝いの胡蝶蘭。
う〜ん。
ああ茎から1個ずつ出てるんですね。
じっくり見たことなかったな。
こう同じのが連なっててこうそれでその奥が見えへんからなんでこういう形になったんやろって気になる形にはなってますよね。
かなり目立ちますね。
ランは高級派手。
知り合いのやってるお店が何周年かでどういうのがいいんですかみたいな。
やっぱり飲食店なんで白いランとかみたいな。
1回花屋さんに止められたんですよ。
ちょっと大きすぎませんかって言われたんですけど。
いやでも大きいほうがいいみたいなんでって言って。
贈ったら…やっぱりちょっとでかすぎたみたいですね。
胡蝶蘭をなぜ贈るかという理由は分からずにとりあえず開店するときは胡蝶蘭。
胡蝶蘭。
なんでやろな。
う〜ん。
言われてみれば確かに…。
考えたことなかったなぁ…。
なんでこんな花を贈るんだろう?
(テーマ音楽)
(谷)おはようございます。
おはようございます。
お久しぶりです。
お久しぶりです。
おっと失礼しました。
倒れました。
フフッ。
ナゾを解いてくれるのは谷裕一先生。
少年時代から植物を見つめ続けもう半世紀という筋金入り。
先生あのちょっと聞きたい事があるんですけど。
はい。
胡蝶蘭という花はなぜお祝いの時に贈る定番になってるんでしょうか?胡蝶蘭はですねラン科の植物なんですね。
はい。
その魅力を分かっていただくにはラン科について知っていただかなくちゃいけないですね。
ラン科について?そうですね。
胡蝶蘭だけではなくってことですか?そうです。
地球上には植物が30万と…もっとあるかもしれないと言われてるんですけどそのうち2万5,000種ぐらいがランなんです。
えっ?そんな多いんですか?多いんです。
すごい多様性それを知っていただくのがまず一歩ですね。
へぇ〜!ああそうなんですね。
谷先生は胡蝶蘭の魅力を知るためにはまず「ランとは何か?」を知ることが大切だという。
世界におよそ2万5,000種存在するラン。
それぞれに際立った特徴があって愛好家も多い。
普通ではない。
いわゆるマニアと言われるような。
マニアじゃきかないような人もいます。
マニア以上の?はい。
まずその人に会っていただくのが先決かもしれませんね。
あっその人に?はい。
行きましょう。
はい。
行きましょう。
そんなにハマる人がいるんだ…。
ランの魅力って一体何なんだ?「なるほど」。
「なるほど」。
「なるほど」。
「なるほど」。
先生これから訪ねるのはどういう方なんですか?それはですねランにもう全てをささげた人ですね。
覚悟できてますか?覚悟いるぐらいの方なんですか。
はい。
分かりました。
覚悟。
押しちゃいますよ。
あっこちらですか。
はい。
(チャイム)
(谷亀)あっどうも。
あっこんにちは。
あれ?なんか手に持って…。
なんですか?それ。
どうも。
遠いとこ。
こんにちは。
はじめまして又吉です。
はじめまして谷亀です。
よろしくお願いします。
それ何を持たれてるんですか?フトアゴヒゲトカゲっていうトカゲなんです。
トカゲ?かわいいんですよ。
ちょっとまだなんか気持ちの整理がつかないんですけど…。
(笑い声)ランに全てをささげてる方ですよね?なんか関連性があるんですか?全然ないんですけどね。
ないんですか。
単純に僕の趣味…。
いっぱいいます?もしかして中。
残念ながらいるんですよ。
ちょっとお宅にお邪魔しようと思ってたんですけどやめときましょうか。
(笑い声)まあまあそうおっしゃらず。
せっかくですから。
せっかくですから。
谷亀高広さんは谷先生も一目置くラン愛好家らしいけど。
じゃあどうぞどうぞ。
行きましょう。
よろしくお願いします。
中でどんなものが待っているのか…。

(谷亀)こうなって…。
えっ!怖いな。
なんか入るのが。
大丈夫。
何の問題もないです。
普通ここの中って洋服とか入れたりするとこなんですけど残念ながらこうなってるんですよ。
お〜!こうなってるんですよ。
うわ〜すごい!こうなってるんですよ。
うわっ!なんか動いてるよ。
全部生きてるんですよね?全部生きてます。
うわうわ怖っ!えっうそ!かわいいでしょ。
えっ蛇じゃないですか。
ボールパイソンというね蛇。
かまないんですか?大丈夫ですよ。
あっもう出さなくていいですよ。
毒とかはないんですか?ああ毒はしっかりあります。
ただまあみんな穏やかな性格のやつらですよ。
これこれかわいいんですよ。
なんですか?それ。
これナメハダタマオヤモリっつってこれもやっぱオーストラリアなんですけどね。
飛ぶジャンプしたりしません?それ。
ジャンプはしないですね。
閉めときましょ。
(笑い声)すごいな〜。
ですかね。
変な人間だと思われるとちょっと困るんですけどね。
なかなか趣味の域を超えてると思いますよ。
いやいやいや。
じゃあどうぞどうぞ。
はい。
じゃあここで脱いで。
はい。
ああやっとランを見せてもらえそうだ。
あれ?これラン?オキナワチドリっていうランなんですけどね。
日本の宮崎県の南部から沖縄本島ぐらいまで生えてる野生ランなんです。
これはランじゃないですよね?ん?これ。
これもこれもこれもラン。
その花咲いてるやつは。
これもランです。
こういうランもあるんだ。
あるんですよ。
ランって種類が多いんで。
これもランです。
これもラン?ランなんですよ。
これはこっから咲きますか?これでもう咲いてるんですよ。
これで咲いてる?今は盛りと咲きまくりみたいな。
う〜ん。
いまだに「こんなのいるか?」みたいなのが出てきますから。
20年以上も私もランに取りつかれてたつんですけど。
でも形がいろいろあるじゃないですか。
あります。
でも何か同じ条件がそろってるからランなんですよね?そうです。
一定の花にこう決まりごとがあるっていうか形に決まりごとがあってそれを満たすとランなんですよ。
これもランでこれもランっていうのがフシギですよね。
なんでランがお好きというかこれだけ集めてるんですか?あ〜なんでしょうね。
取りつかれたんじゃないですかね。
意識はないんですよ。
勝手に入ってくる。
勝手に…。
勝手に…。
へぇ〜。
又吉さんも気をつけてないとあしたの朝枕元に。
ランが…。
いやランが勝手に来るわけじゃないですもんね。
いや分かんないですよ。
やつらは来ますよ。
そんな恐ろしい花やったんか。
ランは。
・「ランランランランララララランランランランランラララララン」・「ランランランララララランランラララララーン」どうぞこちらへ。
ありがとうございます。
お〜。
これ全てランですもんね。
そうです。
う〜ん。
いやでもすごいフシギな形してますよね。
そうですね。
やっぱりランは花の形が特徴なんですけどもいろいろ変。
変?例えばですねこれもね花っていうよりなんか変なものに似てません?うんなんか生き物というか。
生き物ですね。
実はハチに化けてるんですよ。
えっ?ハチ?はい。
茶色いとこがハチの胴体っぽく見えませんか?で羽が左右に広がってるような感じしません?はいはいはい。
ハチのようなフリをして。
誘惑するために小さいなりにもすごい特殊な形をしてる訳ですよ。
しかもねメスのハチのつもりなんです。
オスのハチがメスがいたと思ってここの背中に乗るわけですよ。
はいはい。
でもねちっとも反応してくれないわけです。
しかたなく暴れてるとうっかりして花粉が付いちゃう。
ほう。
そこでですねその誘惑している現場をお見せしたいと。
これがねたまらなく何とも言えない気持ちになりますよ。
これなんですけどね。
あっホントだ。
ハチが来てる。
このねオスバチの悲しい感じというか何とも言えないんですよね。
なんで意のままにならないんだろうっていうね。
こう見ると確かにハチに見えますね。
ええ。
いい香りまでしてるんですよ。
美女なんですよ。
彼にとって花は。
普通の花の香りじゃない。
あっそうなんですか。
はい。
実はあの花粉が外れる瞬間もこれ写ってるんです。
ちょっと見てみますね。
よく見てて下さいね。
今外れます。
そろそろ外れます。
今外れました!ほらこの黄色いの。
あっ黄色い。
はいはい。
これが今こうハチに花粉が受け渡された瞬間なんですね。
そうなるとどうなるかっていうと既に頭に花粉が付いてますから花粉が運ばれちゃうわけですよ。
なるほど。
実に精妙な色仕掛けをしてくるわけさ。
すごいですね。
えらいことなんですよこれ。
特にランの中でもこのオフリスって言われてるグループはこういう変な性格を持っていて虫をおびき寄せる。
これとこれはオフリスの2種類いるんですけども色も違うんですけど私たちには香りを区別できないんですがハチにはちゃんと区別がつくんですね。
へぇ〜!それぞれ専属のハチをだましてるんです。
香りまでまねてるんですか。
そうです。
そっち見ていいですか?どうぞ。
え〜っ?花粉はどこですか?花粉はですねああじゃあせっかくですから花粉を取ってみてはいかがですか?そうですよね。
あのさっきのねハチの動きがミソです。
こうこすってたら。
こうハチが花の中に頭突っ込んでましたよね?はい。
そこの所にピッてやると取れるんですよ。
ここですか?もうちょっと上辺り。
そうそこです。
そこを下から上にこうなでるようにしてピッてひっかいてみて下さい。
あっ取れないですかね。
取れないですね。
ちょっと試しにやってみましょうか。
え〜とですねここ…。
(2人)取れた!これです。
すごい。
ちゃんとくっつく場所があるんです。
はぁ〜。
柄になって粘つくところと花粉とに分かれてるんですよ。
いやフシギ。
でも植物がどうやってそのまねてますよね。
たまたま似ることは無いですもんね。
うん。
そういうことなの。
バカなハチがだまされて。
うまくいったぞと。
より来るものが残っていってみたいなことですか?そうです。
ハチはなぜそのだまされ続けるんですか?それがねうまいんですよ。
メスがねいっぱい出てくるシーズンがあるでしょ?本物のメスがたくさん出てくるよりちょっと早めに咲くんですよ。
なるほど。
本当のメスをまだ知らないうぶなオスはこれこそメスだと思って。
分かってないから。
そう。
まだ本物をね知らないので。
へぇ〜!これもメスバチに化けているラン。
名前は「ハンマーオーキッド」。
オスバチが花びらにやって来た。
交尾しようと暴れると花びらの付け根は「ちょうつがい」のようになっていて花粉のあるところに何度も頭をぶつけてしまう。
そして…。
あっ花粉が付いた。
これで別の花に移れば受粉成功。
やるね〜。
ランはねそうやって虫をだますだけじゃないんですよ。
これもね普通の花にはオシベとメシベがありますよね。
はい。
そのランの花でオシベとメシベ見つけられますか?どうぞ。
そもそものオシベとメシベも僕よく分かってないんだけど…。
真ん中にある…ありますね。
なんか黄色い。
なんかはありますよね?例えばですね桜とかねえチューリップとかオシベは花粉があって黄色い粉がパラパラ散りますよね。
それ黄色い粉が見当たらなくないですか?見当たらないですしここになんかこう部屋みたいになってますよね。
フフフッ。
ランには他の花にあるような「オシベ」と「メシベ」が見当たらない。
その代わりに「蕊柱」というオシベとメシベが一体となった部分がある。
これはランに共通する特徴だ。
又吉さん虫だとしてとまろうと思ったらどこにとまります?ここがそこになってるんで。
はい。
やっぱり花の真ん中に虫行きたがるじゃないですか。
真ん中行こうとするんですね。
でもここに変なツボがある訳ですよ。
着地して中に潜る。
しかも歩けるところがこのツボのせいでね道順が指定されちゃってるんです。
実はそこにさっきと同じで花粉の塊があって。
へぇ〜!くっついちゃうんですよね。
はいはい。
じゃあせっかくですから中までのぞいてみるということで。
うわ〜。
パキッと取れるんですけど。
きれいに。
取れた。
縦割りにすると毛がいい感じで生えてるんですよ。
ほら。
毛が右斜め上に上がって生えてるんですよ。
はい。
ここは昆虫が足をかけて上がってくるのに上がりやすいわけですよ。
ところがそこ以外の所はあんまり毛が無かったり逆毛だったりするんですよ。
その関係でここしか通れない。
なるほど。
みんなそこを通っちゃう。
そう。
完全な一方通行。
ランを目指して飛んできたハチは「蕊柱」にとまったあと足を滑らせツボの中に落ちてしまう。
そしてツボの中でどうにかはい上がろうと毛の生えた壁を登っていくと…。
通路の出口にはちゃっかり花粉があってハチの体にくっつくようになっている。
ここに溝が穴があるじゃないですか。
ここを昆虫が通過すると背中にべっとりと花粉が付けられるというわけです。
ちょっと昆虫っぽく通過させてみましょうかね?ここになんかいますよね。
いますいます。
くっついちゃうぞみたいな感じでこれが花粉の塊なんです。
へぇ〜。
ランの仲間さっきもそうなんですけど花粉がね塊になってるんですよ。
しかも…ネバネバして。
こういう。
う〜ん。
触ってみます?ネバネバしてますよ。
ほんまや。
すごいネバネバしてる。
花粉をくっつけたハチは別のランに飛んでいきまたツボに落ちて脱出するときに…。
でここなんですよ。
花粉がベターッと付くわけですね。
はい。
こんな感じで。
そうすると受粉。
これでもそんな確率よくいくもんですか?いや〜。
一方通行ですからね。
もう虫はもうランの意のままに行くしかない。
行くしかない。
今のこれらねラン花としてはある大事なものがないんですけど何がないんですかね?種。
種はこれからつきますね。
つきますか。
ハチと花っていうと?え〜…蜜。
そうですね。
彼らは蜜これ蜜ないじゃないですか。
はい。
何もくれないんですよ。
なるほど。
だましてるんですよ。
タダ働きさせられる。
そうです。
まさにタダ働き。
人間だったらどう思います?パン買ってこいよとは言いながらお金も渡さず駄賃も渡さずみたいなそんな感じですよ。
でもきれいなあれですよね。
方自分が恋心を抱くような姿形をしてる人に買ってこいよって言われてるわけですよね?そういうことですね。
その場合でもハチはもしかしたら全然不幸じゃないかもしれないですね。
そうかもしれませんね。
楽しんでいるかもしれない。
楽しんでいる可能性がう〜ん高いですね。
う〜ん。
「なるほど」。
「なるほど」。
「なるほど」。
「なるほど」。
又吉さんだいぶランについて見てきたわけですけどもちょっと思いついたのがこれ三島由紀夫の「獣の戯れ」なんですけどここにもねランが出てくるんです。
へぇ〜!1961年に発表された「獣の戯れ」。
主人公の草門は暇を持て余した遊び人。
彼には美しい妻優子がいる。
そこへワナにかかったかのように純朴な青年幸二が現れゆがんだ三角関係が展開していく。
この作品の中で大事なやっぱりモチーフが洋ランで。
うん。
たくさんのランがこの草門温室で育てられてる訳ですよ。
高い地位で金に困ってない人物のひとつの象徴として洋ランを登場させることがあって。
う〜ん。
この当時ですからねまだ日本そんなに洋ラン普通じゃなかったですから身分を表すものとしては非常に都合のいい記号としてあったんじゃないでしょうか。
読みたいな。
見ていいですか?見て下さい。
これ初版本なんで290円です。
ハハハッ。
これ先生の私物ですか?そうです。
へぇ〜!好きすぎてだいぶ前ですけど古本屋で買いました。
オフリスのさっきのハチの胴体に似せたこのおっきいとここれがリップですね。
ランはリップのとこに非常に特殊なアピール性があるのが普通ですね。
「美の病気ともいうべきものに」だからランそのものがっていうことやから美しくなっていくっていう意思がラン自体が持ってるように見えるみたいなふうに感じたんでしょうね。
そういうなんかフシギな妖しげな魅力みたいなものがありますよね。
花の形自体にも。
そういうものを多分三島は特に強く感じたんじゃないでしょうか。
なんか植物の特性みたいなものを生かして書けたら面白いですね。
ちょっと失礼します。
はい。
はい。
ここにちょっと怪しげに持ってきた。
なんですか?これ。
のぞいてみて下さい。
小さい粉のようなものが入ってますけど。
なんだ?これは。
これ実はね同じ生物をさっき上でご覧になってるんですよ又吉さん。
ここに…名前が書いて。
はい。
オキナワチドリっていうのはさっき見せていただいたランですよね?そうです。
きれいに咲き誇ってたあれです。
はいはい。
あれの種なんです。
種?種を砕いたやつですか?違うんです。
一つ一つが種なんです。
えっこんな細かいんですか?はい。
細かいんですよ。
細かいんですよ。
変でしょ?うん。
サヤに入ったランの種。
1億粒詰まったものもあるそうだ。
直径2センチの一円玉に置くとこんな感じ。
小さいなぁ!種ってどんな種が普通だと思います?果物のような種とか。
ウウウン。
こんな種もありますしね。
これ栗ですか?これもね豆の仲間なんですよ。
割っていいですか?割ってもいいですよ。
甘栗ですやんこれ。
形が全く一緒じゃないですか。
豆の仲間なんです。
豆の仲間。
なんでこんなに似てんの?種ってまあ普通ね中身ちゃんとあるでしょ?はい。
ランの種はねこれホコリじゃないですか。
ホコリ。
しかもこれが1つなんですもんね。
細かいのが。
実はいろいろありまして。
これみんなランの種なんですよ。
あっ全部でも。
ホコリでしょ?ホコリでしょう?ってことはね普通の種は栄養をもらって今すぐにでも芽が出られる状態にしてもらってるわけです。
ところがランの種はね一個一個に何にもお弁当が入ってないんですよ。
ふ〜ん。
ランの種には栄養分が入った「胚乳」がない。
つまり芽を出すための「お弁当」を持たされないで世の中に放り出されてしまうんだ。
どうしようもないでしょ?なぜなんでしょう?そこで谷亀さんの得意なものが出てくるんですが。
なんでしょう?得意なもの。
これなんですよ。
こういうものなんですけど。
なんだ?これは。
こういう形で人目に触れるっていうのは本邦初ではないかと。
ちょっとルーペでのぞいてみて下さい。
なんかこう細かい糸みたいなの見えません?あっホンマや。
この人たちカビなんですよ。
はい。
種を食べようと思って中に入ってくるんだけども入り込んだらなんか変なんですよね。
そうなの。
返り討ちにあってしまう。
全然思いどおりにいかない。
いかない。
逆に食われるんです。
はぁ〜。
これなんですけどここにちっちゃいのいますよね。
これが略奪者のほう。
ちょっとたって発芽したとこですね。
あっなるほど。
この菌が寄ってきてこいつらを栄養にしたろうと思って寄っていくんだけど逆にこっちが成長していく。
そうなんです。
ムチャクチャ怖いじゃないですか。
そうですよ。
略奪でしょ?はい。
おいしそうに食べてるんですよ。
これがランの正体です。
怖いな。
怖いでしょ。
ランの種には栄養がない。
そうとは知らない菌は栄養を奪おうと菌糸をのばして襲いにかかる。
こうなればもうランの思うツボ。
逆に菌を閉じ込めその栄養を奪っていく。
そしてぷっくりとした袋に栄養をためこみそれを利用して発芽を果たすのだ。
実は谷亀さんは「菌類」の研究者。
ランと菌の関係も長年調べてきた。
ランの種はどんな菌からでも栄養を奪えるわけではない。
谷亀さんはこれまでその組み合わせをいくつも発見してきた。
どうしてこのランとこのカビの組み合わせなのかは分かんないんですけどそういうのが最近DNA解析ができるようになってこのランにはこのカビが付いてるって分かってきたんです。
それがバラバラだと合わないんですね?合わないんです。
下手するとカビが勝っちゃう。
あっそういうことですか。
逆に言うと確率が低いんですよ。
なのですごいたくさんの種をバーッとまいて。
一斉にまいて。
どっかでカビに出会う。
でもこのやり方じゃないと本人たちはその正当なやり方っていうものがないわけですもんね。
一旦こういうことを始めてしまったらもうあれですよね。
あとに戻れませんよね。
やめられないし止まらないんでしょうね。
成功してるわけですから。
鉢の中でも今もこれをやってるわけですよ。
今も。
うん。
これランの根っこを切ったとこですけどね。
はい。
うんうん。
これ1個1個がランの細胞。
中に汚いものがいっぱい入ってる。
はい。
これ実はね食われてるカビなんです。
へぇ〜!ひまわりとかだったら一生懸命どんどん葉っぱを大きくして茎を太くしてお日様のほうに当たっていって光合成をして自分で自分のことをやっていかなくちゃいけない。
でも…カビをだませば…うん。
というのでもう葉っぱ作らない。
うん。
かったるいじゃないですか。
はい。
もうやめようかっていうので葉っぱを作るのをやめちゃってもうカビだけを栄養にしていく。
そういうふうに生活を切り替えちゃうランもいるんですよ。
へぇ〜!これがね写真なんですけどね。
はい。
これきれいでしょ?えっ?これラン?ランなんですよ。
タシロランといいます。
れっきとしたランなんです。
すごいきれいです。
おかしいのが普通植物って何色してます?緑とか?ですよね?どこにも緑が無いんです。
確かに。
緑っていうのは植物が光合成するときに必要なものなわけですね。
それが植物らしいじゃないですか。
例えば植物の絵を描いて下さいって言われたらまず葉っぱ描くじゃないですか。
はい。
無い。
葉っぱが無い。
おまけにこいつは根っこも無い。
ええ?だけど生きてる。
生きてないです。
生きてます。
残念ながら生きてるんですよ。
ってことはこれは太陽を当てなくてもいい?そうなんです。
カビがいる限りは大丈夫っていうことですか?じゃあ生まれた直後の姿って興味ありません?あります。
う〜ん?これどれぐらいの大きさですか?0.8ミリぐらい。
0.8ミリ。
だから1ミリより小さいんです。
カビはこれなんです。
これがカビなんだ。
この写真を最初に撮った時にランに見えないじゃないですか。
ミジンコっぽいっていうか。
この菌糸とこのランは全く別の生き物なんですよ。
けどまるで1つの生命体みたいにまるで心臓とそれにくっつく血管みたいなそんな感じにさえ見えて感動したのを覚えてます。
うわ〜!生きてるわ〜!っていう。
なるほど。
ここでまたとらわれてしまった。
わけなんですよ。
こうなるんですもんね。
そうなんですよ。
これはすごい神秘的ですね。
うん。
う〜ん。
どうですか。
菌を使って生きるランの生き方って。
ホントになんてたくましいというかそれぞれの環境とか状況に合わせて何とかしようとするっていうね。
なんか同じランやのになんでいろんな形してんねやろうとかランに限らずなんでこんなに場所とかによって木にしろ植物にしろいろいろあんのかなと思ってたんですけどちょっとなんかこうヒントを得た気がしますね。
ええ。
みんな生きていくために必死になんか自分の生活支えるものを探した結果いろんな形に。
なっちゃったんですよね。
そうなんですよ。
やつらは生きるのにみんな必死なんです。
頑張って生きてる。
いいですよね。
でもランだとこう批判されないじゃないですか。
でも人間社会だとちゃんと自分で生きろとかいや葉っぱ諦めんなとかすごい言われるじゃないですか。
それはね多分ね言う人自体がその人の苦労を知らないんですよ。
だからそういう生き方をしてるとダメだとか何とかって言うじゃないですか。
だけどそんななんの余計なお世話だっていう話ですよ。
しかもすごい弱い立場ですよね?弱い…。
誰かが助けてくれないとっていう状況ですもんね。
そうですね。
誰も助けてくれないと死んじゃう。
けど誰か助けちゃうんですよ。
きっと。
そもそも種がこれで世の中に送り出される段階でもうひどいハンディー。
なんですけどそれを上手にこう周りをだまくらかしたり使ったりすることで生きていく力がある。
うんうん。
それがこのランの本当の姿なのかもしれない。
そうですね。
ランがいかに咲くのが難しいかっていうのが分かったんですけど胡蝶蘭ってお店にいろんな人がお花出すじゃないですか。
すごいたくさんありますよね。
ありますね。
あれはなぜあんなに胡蝶蘭あるんでしょう。
あれにはあれの秘密があるんですよ。
そうなんですか?はい。
例えば人間だったらそれこそ細胞私たちの体を作ってる細胞は決まった回数分裂したら最後にはもうにっちもさっちもいかなくなってもう死ぬしかないわけです。
プログラムになってんですけど。
植物はそういうのがないんですね。
いくらでも分裂できる。
クローンができるっていうのも植物のメリットのひとつですね。
これをうまく利用できるのが胡蝶蘭のまあたくさん作れる理由のひとつになりますね。
なるほど。
胡蝶蘭とクローン…。
一体どんな秘密があるのだろう…。
栃木にあるラン専門の農園にやって来た。
阿比留正明さん。
この道50年。
この人もランに魅せられた1人だ。
ここが胡蝶蘭をクローンで増やしている部屋。
1つのフラスコに35株の苗が育っている。
クローンを作る元になるのが…ここ。
「脇芽」と呼ばれる花を出さなかった部分だ。
切り取って無菌のフラスコの中で培養する。
3か月ほどたつと小さな細胞のかたまりが現れる。
細かく分けて培養すると更に10個ほどのかたまりが姿を現す。
これがクローンだ。
一つ一つが芽を出し葉をつけ胡蝶蘭の一株へ成長する。
実は阿比留さん1991年に日本でいち早く胡蝶蘭のクローン栽培に成功した。
カトレアやシンビジウムでは既に70年代クローン技術が開発され手ごろな値段で出回っていた。
でも純白で花の豪華さが魅力の胡蝶蘭はまだまだ高根の花。
クローン栽培を成功させようとしれつな開発競争が続いたがなかなか成功しなかった。
一番難しかったのはクローン栽培に適した栄養培地を作ること。
阿比留さんは10年の歳月をかけて培地の開発に成功した。

(阿比留)何を何グラム与えたらいいんだろうとかね。
しゃべってくれるといいんですけど。
何が食べたいって言わないんですよ。
こうしてクローン増殖させた苗。
でも栽培の苦労はここでは終わらない。
半数以上の苗が遺伝子のエラーを起こすため早めに排除する。
美しい胡蝶蘭に成長するものだけを選び初めの2年は温度光培地の調整など徹底的に管理。
外の温室へ移してから更に2年。
トータル4年かかって胡蝶蘭はようやく花をつける。
鉢のままだと2か月とか3か月咲いてる。
クローン栽培って言っても開発に大変な手間がかかるんだ。
でもそのおかげで手に入れやすくなったんだなぁ。
胡蝶蘭が広く使われてくるその理由っていうのは見えてきたんじゃないですか?まあ無くならないっていうのは1つポイントですしあとはまあ縁起もいいんですかね。
まあそうですね。
あのずっとあるっていう。
あとはああいうふうにきれいにそろって一斉に同じような形で姿がそろっているっていうのは日本人は好きですからね。
そうですね。
ああでも胡蝶蘭ってだいぶ安くなったっていうふうに今ありましたけどそんな印象がないんですけど。
昔はもっと高かったんですか?高かったですね。
胡蝶蘭ってああいう方法でないともしくは種からじゃないと増やせないんです。
なるほど。
けど今はああいう方法を使ってたくさん増やせるのでまあ安くはなってる。
ただ一定の生産コストはかかるんです。
だからお値段は高止まり。
ある程度のところで一定になっているというわけなんですよ。
なるほど。
胡蝶蘭もあるしそれかと思うと世界で数人しか育てられないような変なランもあるしいろんなランを見てきたわけですけども改めてどうですか?何となく僕お花っていうとあの〜時期が来たら枯れてしまってちょっとこう悲しげな弱いものというかだからこそこう愛でたくなるっていう印象やったんですけど。
ちょっとランちゃいますよね。
はい。
そう思います。
すごく賢いたくましい花ですよね。
ハチをだましカビを取り込みそして人間にも育てさせっていうね。
それはもともと何となく僕らが抱いてるそのランの妖しげなフシギな部分なんですかね。
ええ。
そうですね。
なんかあの胡蝶蘭がお店に贈る上ですごく縁起がいいんじゃないかって思ったじゃないですか。
僕もさっき思ったんですけど。
でもだますとかその取り込むとか。
そこのメッセージも込めてるかもしれませんよ?夜のいろんなお店によくあるイメージあるじゃないですか。
なんか自分がカビとかハチになったかのようなお店側のメッセージやったんちゃうかみたいなね。
いや〜けどある意味いいんじゃないですか?ある意味?ええ。
だってなんかこう生き残るってすてきなことですよね?まあそうか。
生き残るためにそういう。
そうです。
だから考えようによっては…そうです。
だから何かと結び付いていったりするっていう同じなのかもしれないですね。
そこは実にしなやかなんですよ。
しなやかな上に無理がない。
はいはい。
うまい。
うまい。
気が付いたらフッと入ってるんですよ。
もうひたすらランです。
「世界らん展」。
はい。
へぇ〜!すごい規模が大きいですね。
一面ランですからね。
みんなそれぞれのジャンルで今年の受賞作ですね。
う〜ん。
あれ面白いですね。
はい。
あれも割と人気なんですよ。
宇宙人みたいとかタコみたいとか言われますけど。
これ。
見覚えがありませんか。
ハハハハッ。
谷亀さんも出展されてるんですか。
そうですね。
賞を取ってますね。
へぇ〜!ほんまや。
オキナワチドリ。
この中でお好みのものはありますか?う〜ん。
先生これですね。
ああ。
これかっこいい。
花のまず色がすごく鮮やかでほんで葉っぱとのバランスもいいな。
バランスいいですよね。
まった〜んランに取りつかれちゃったんじゃないの?頭に花粉付いてますよ。
2018/04/11(水) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
又吉直樹のヘウレーカ!「なぜお祝いに“胡蝶蘭(こちょうらん)”を贈るのか?」[解][字]

開店祝いなどに贈る花といえばコチョウラン。しかしなぜ?実はランは花の形や種に大きな特徴を持つ。多くの人々を魅了してやまない“ラン”に又吉も絡めとられる!?

詳細情報
番組内容
知人の開店祝いにコチョウランを贈った又吉。いわれてみればどうしてランを贈ったのだろう?実はランは魅惑的な戦略に長けている。例えば花の形。受粉を手伝うハチをひきつけるため、メスバチと見まがうような形をしているものが!また種が発芽するとき、地中の菌を取り込んで栄養にしてしまうという。あでやかで花もちがよく、種類が豊富など多くの人を魅了するラン。あれ、又吉も取り付かれはじめたか…!?
出演者
【出演】又吉直樹,【解説】東京大学大学院教授…塚谷裕一,【語り】吉村崇,【ゲスト】菌類研究者…谷亀高広

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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