「第4のキャリア」となる楽天、2019年10月参入後のサービスを予想する:週刊モバイル通信 石野純也
気になる料金はそのままなれど、テクニカルな問題にはまだ疑問が
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「第4のキャリア」となる楽天、2019年10月参入後のサービスを予想する:週刊モバイル通信 石野純也
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楽天の子会社である楽天モバイルネットワークに、1.7GHz帯の電波が割り当てられることが正式に決まりました。これを受け、楽天は2019年10月に携帯電話事業に新規参入します(写真はMWC 2018での三木谷会長兼社長)。
今回は、この楽天の携帯電話事業に関して判明している情報から、いわゆる「第4の携帯キャリア」となった後のサービスや価格の内容を予測してみます。
Gallery: 楽天が「第4のキャリア」に(週刊モバイル通信) | 6 Photos
▲1.7GHz帯を第1希望にしたのはKDDIと楽天だけで、スムーズに割当が決まった
楽天が割り当てられたのは、LTEの「Band 3」と呼ばれる周波数帯。欧州やアジアでは一般的に使われている帯域で、日本でも、ドコモが東名阪を、ソフトバンクが全国をエリア化しています。今回の割当では、全国区で使える1.7GHz帯が2枠ぶん空いていましたが、ここに応募したのがKDDIと楽天の2社のみとなり、すんなりと割当が決まったようです。
同時に、3.4GHz帯の募集も行われましたが、こちらはドコモとソフトバンクに割り当てが決まりました。楽天は第一希望として1.7GHz帯の割当を申請していましたが、第2希望は提出していませんでした。これは、仮に割当が3.4GHz帯だけになってしまった場合、事業計画を描くのが困難になるからだと思われます。
3.4GHz帯は電波の直進性が強く、エリアにできる範囲が限られてきます。現状でも、各社が3.5GHz帯のBand 42を使ったサービスを展開していますが、そのエリアはまるでホットスポットのように狭く、基本的にはキャリアアグリゲーションで既存のLTEに追加して、速度を上積みするために使われています。
いわば非常に狭い、混雑エリア対策に使われている周波数帯なので、現時点で電波をまったく持っていない楽天にここが割り当てられても、使い道に困ってしまっていたでしょう。
一方の1.7GHz帯であれば、建物にもある程度回り込むため、基地局数さえ十分に設置できれば、きちんとカバー率を上げることができます。そのため、当初から楽天の目的は1.7GHz帯だけにあったと考えられます。
カバー率より容量を重視したドコモとソフトバンクが3.4GHz帯に手を挙げたため、この時点で楽天の参入は決定的だったともいえます。2社とも1.7GHz帯を持たない楽天とKDDIが手を挙げることは半ば分かっていたでしょうから、あえて厳しい戦いを挑まなかったとも考えられます。
サービス開始は2019年10月と、まだ1年以上先ですが、これまでの三木谷会長兼社長の発言や、電波割当のために提出した開設指針からは、ある程度、その中身が見えてきます。
まず、導入する技術は、4×4 MIMOや256QAMなど最新のものです。1.7GHz帯しかないため、キャリアアグリゲーションはできませんが、当初のユーザー数を考えれば、十分な速度が出ることが予想されます。人口カバー率は、2025年度末までに全国で96%を予定しています。
▲2025年度末までに96%の人口カバー率を達成する予定
ただ、それまでの間は、電波が届かないエリアも目立つことになりそうです。これを解消するため、既存事業者のどこかと、ローミング協定を結ぶ可能性が限りなく高くなります。
これでサービス開始当初からエリアを充実させながら、その間に自社網の整備を続けていくことができます。これは、かつて、イー・アクセスが新規参入したときと同じ方法です。
当時はドコモがローミングの受け皿になりましたが、現状持っている周波数を考えると、むしろソフトバンクが選ばれるような気がしています。端末の導入コストを考えると、グローバルバンドが多いソフトバンクの方が、楽天にとってはハンドリングしやすいからです。
もちろん、ローミングは義務ではなく、条件をすり合わせたうえで合意する必要があるため、あくまでソフトバンクがそれを飲めば、の話です。
料金プランは、MVNOの楽天モバイルが提供しているものに合わせてくるようです。これは、楽天モバイルネットワーク自身が開設計画の中で語っています。
現状、楽天モバイルは「スーパーホーダイ」という、1980円、2980円、3980円の3段階に設定した料金を主軸にしています。容量はそれぞれ2GB、6GB、14GB。この容量を使い切ったあとも、1Mbpsで使い放題になります。体系としてはワイモバイルに近い金額で、自らがネットワークを持つMNOとしては限界ギリギリの安さといえるでしょう。
▲料金プランは、楽天モバイルと同等のものになるという
▲現行の「スーパーホーダイ」が、そのまま提供される可能性が高い
一方で、同じMNOであるワイモバイルが提供できていることから、この料金であれば採算は取れると踏んでいるはずです。開設計画を見ると、ほかにも大容量プランや法人用プランを設定することも検討しているようです。
MVNOの楽天モバイルは、この新会社に統合していく方針のようです。2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)において、楽天の三木谷氏は、「テクニカルな問題はありますが、順次、MNOの方に乗り換えてもらうことを考えています」と語っています。
スタート前から150万以上の契約者を抱えているのは、楽天にとってプラスになります。乗り換え前提であるならば、ネットワークがない今から、すでに営業活動を開始しているようなものだからです。
ただ、当の三木谷氏も指摘していたように、テクニカルな問題は残ります。たとえば、楽天モバイルでドコモのSIMロックがかかった端末を使っているユーザーは、SIMロックを解除する必要があります。また、SIMカードを変えた場合も、APNの設定をし直さなけれならず、サポートコストがかさみそうです。
これだけなら、得意の"三木谷割"で端末を配って力技で解決できそうですが、それ以上に、ユーザーが納得して乗り換えるかが不透明です。楽天モバイルのユーザーの中には、ドコモのエリアで使えるから選んだという人もいるでしょう。
当初はローミングでエリアをカバーするとはいえ、開設計画を見ると、楽天単独で既存3社に並ぶのはかなり先のことになると思われます。
▲楽天モバイル自身も、選ばれる理由にドコモ回線を挙げている
MNOとしてはサービス開始までまだ1年以上ありますが、楽天モバイルは今もサービスを続けており、新規でユーザーを獲得しています。
楽天モバイルネットワークへの移行を前提にしているのであれば、できるだけ早いタイミングで大々的に告知した方がいいのではと感じています。逆にそれができないと、トラブルのもとになり、スムーズな移行はさらに難しくなってしまうかもしれません。