🔻前のお話
警察学校に呼び出された父。
何を言われても辞めない私に代わり、
上司である教官は父を説得し始めました。
「お父さん、息子さんは限界ですよ!
警察を辞めるように言ってくれませんか?」
父はポカーンと話を聞いていました。
私は父に対する恥ずかしさと
不安でクラクラと目眩がしました。
実は私は父のことを殆ど何も知りませんでした。
父はワケあって家に殆ど寄り付かない人なのです。
最後に会話をしたのはいつだったか・・?
いや・・まともに会話をしたことがあったのか?
就職した息子が醜態を晒して、
あげく職場に呼び出される・・・・
(父は今どんな気持ちだろうか?)
そんなことばかり考えていました。
教官たちは
『私がどれ程ダメな人間か?』という話を
コンコンと父に話すのです・・
あまりに辛すぎました。
十数分後・・・教官達が話を終えると・・
今度はゆっくりと父が口を開きました。
「なぜそれが辞める理由になるのですか?」
この父の第一声を聞いて驚きました・・・
まさか・・・・父が私をかばうとは・・・
「雇った以上は責任があるのですから、
ダメなら育てようとは考えませんか?」
父が教官達に反論します。
教官たちは警察官特有の
強烈な威圧感を全面に押し出してきました。
父は長い間営業マンの仕事をしていたせいか?
父は物怖じしません。
3人の教官達は父の反論を聞いて黙りました。
短い間が空きます・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
沈黙の後・・リーダーである初老の教官は
「わかりました、もう少し様子を見ましょう」
一言そう言うと、その場を去っていきました。
父を説得できないと理解した教官は、
すぐに考えを変えたのでしょう。
18歳の私には、その判断の速さが・・・
とても恐ろしく感じられました。
父のオカゲもあって、
何とかここまで辞めずには済みましたが・・
私は心もカラダもボロボロの状態でした。
こんな状況になったのは、
紛れもなく私の落ち度です。
同期のイジメも仕方がない。
コミュニケーションがとれなかった、
嫌われてしまった私が悪い。
それにイジメなんてどこにでもある。
しかし・・・・
辞めさせる方法が他に無いにしても、
教官達の責め苦は酷いモノでした。
「お前はバカだ」
「どうしようもないヤツだ」
「頭がおかしいんじゃないのか?」
そんな事を毎晩3人の大人に何時間も言われ続ける。
18歳の私にはあまりにも辛すぎました・・・
それが1ヶ月も続くと・・・・
私は壊れてしまったのです。
もうどうしようもありませんでした・・・
鬱・・・っていうんでしょうか?
夜は眠れない・・・食事も取れない。
仕事のミスは増すばかり。
私は意識も曖昧なまま・・・・
警察学校での訓練を続けました。
しかし私は
死んでも警察官を辞めない!
と決めていました。
・・・そう思っていたのですが・・・・
ここで教官達は最終兵器を導入してきます。
ドーン
・・・これで私は警察を去ることになります。
教官は同期全員にこんな罰を下しました。
「卒業まで全員外出禁止にする!」
警察学校では普段は勝手な外出は許されませんが、
週末だけは自宅に帰る事が出来きたのです。
つまり外出禁止になれば・・・・
半年ほど家族や恋人に会えなくなってしまう!
教官達はその罰を下す理由を、
「私の素行が悪いから」だと
私の同期達に話したのです。
同期達は怒り狂いました!
そして私の元に詰め寄ります。
「どうしてくれるんだ!」と・・・・
妊娠中の奥さんがいる人もいる。
小さなお子さんがいる人もいる。
みんなが怒るのは当たり前。
(ああ・・・ここまでか・・)
と・・・私はここで観念しました。
そして教官の元へ行き自ら頭を下げて言いました。
「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした、
私が責任をとって辞めるので罰を取り消して下さい」
初老の教官はニッコリ笑って・・・
「うーんそうかそうか・・」
と何やら考えるフリを始めました。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・
教官は・・・・たっぷり時間をかけた後に、
「よし!わかった!お前の気持ちを汲もう!
特別に罰を取り消すことにする!」
そう言ったのです。
・・・ぜんぶ茶番です。
すべて筋下記通りの結末。
私が警察官になってから、
ここまでわずか半年の間の出来事、
こうして18歳の私は警察を去りました。
惨めな夢の結末です。
私の憧れた警察官のヒーローは、
必ず『警察官になってから』物語が始まりました。
しかし・・・・
私は警察官になる事すら出来ませんでした。
これは誰からも憧れられる事もなく、
尊敬される事もない、
何も始まらなかった
私の半生を書いたブログです。
【警察編の最後の記事】