住宅を購入した当初はずっと住むつもりでも、急に転勤になったり、親の介護が必要になったりと、やむを得ず住めなくなることもあるでしょう。そんなときに、住宅を貸すことができるのか、気になるところです。今回は、住宅ローンが残っている場合に賃貸に出せるのか、見ていきます。
住宅ローンは“住むための家”を買う際に利用できるローン
住宅ローンはあくまでも本人やその家族が住むための家を購入するために使えるローンで、賃貸の目的には利用できません。下表はある金融機関の住宅ローン商品概要の抜粋です。
<資金使途>
<1>本人居住用の土地・住宅の購入、住宅の新築・増築・改装、底地の買い取り資金
※賃貸の目的にはご利用できません
<2>火災保険料、保証会社手数料・保証料、仲介手数料、担保関連費用、印紙税、引越費用、修繕積立金、リフォーム費用、付帯工事費用、管理準備金、水道加入金
したがって、通常であれば、自分が住まなくなり賃貸へ出す場合には、金融機関に相談したうえで、同じ金融機関のアパートローンなどに変更をしたり、別の金融機関の賃貸ローンに借り換えをすることになります。
ただし、やむを得ず引っ越しせざるを得ないケースも当然出てきます。例えば、転勤、病気療養や親の介護で一時的に留守にする間、人に貸したいといったケースです。
こういったやむを得ない事情であれば、金融機関によっても対応は異なりますが、住宅ローン返済中の自宅を賃貸に出すことを認めているケースもあります。
ただし、その場合には優遇金利の打ち切りなど条件変更されることもあるので要注意です。アパートローンへ変更したり、金利条件が変更されて優遇金利が打ち切りになるケースでは金利も高くなりますし、他の金融機関へ借り換えの場合には経費がかかります。
銀行によっては賃貸に出すのが5年間であれば認めるなど、特別なルールを設けているケースもあるので、転勤などで賃貸に出したい場合には、まず借り入れた金融機関に相談しましょう。
では、もし、無断で賃貸に出していることが金融機関にわかってしまった場合にはどうなるのでしょうか?
これも金融機関によっても取り扱いは異なります。
アパートローンなどの賃貸用ローンへの変更を迫られるケース、他の金融機関の賃貸用ローンに変更を依頼されるケース、場合によっては最近では減ってきてはいるようですが、契約違反とのことで住宅ローンの一括返済を迫られることもあります。
いずれにしても、発覚した時点ですぐに対応できない可能性はありますし、その後の家計にも支障が出る可能性もあります。事前に金融機関に賃貸に出す場合の対応をしっかり確認したうえで、賃貸に出すのか、あるいはそれ以外の選択肢を探すのかを考えたいものですね。
賃貸に出せる住宅ローンはあるの?
実は、住宅金融支援機構が取り扱っている【フラット35】については住宅ローンを返済中でも賃貸に出すことができます。
(参考:全期間固定金利 「ARUHIフラット35」、2割の手持ち金でさらに低金利の「ARUHIスーパーフラット」)
もちろん、初めから「賃貸することを目的」にローンを組むことはできませんが、転勤などで住めなくなった場合、住所変更届を出すことで住宅ローンを組んだまま、転居して、賃貸に出すことができます。
以前は、転勤、転職、病気など一定のやむを得ない事情で転居する場合かつ事前に留守管理承認申請書を提出する必要がありましたが、現在は事情によらず住所変更届のみの提出で転居できるようになっています。
したがって、転勤が多くて住宅ローンの返済中に賃貸に出す可能性が高いとあらかじめわかっているのであれば、【フラット35】で住宅ローンを組んでおく、あるいは転勤などで賃貸に出す際には【フラット35】に借り換えをする、という選択もありますね。
また、【フラット35】では、住所変更届を出すだけで転居して賃貸に出すことができるので、家を買った後、収入が減ってローンの返済が難しくなった場合には、収入が回復するまでの間、自宅を賃貸し実家などに身を寄せて、その賃料収入により返済を継続することも可能となっています。あわせて覚えておきたいですね。ただし、何度も申し上げますが、初めから「賃貸することを目的」にローンを組むことはできませんのでご注意ください。
なお、融資を受けた住宅に住まない場合は、住宅ローンの返済が続くとしても、ローン控除を受けられなくなる点も忘れずに。
ちなみに、転勤してから数年後に自宅に戻るといった場合、その不在の期間については住宅ローン控除が受けられません。
自宅に戻ったときに残りの期間、住宅ローン控除の適用を受けるためには、転出前に届出書や特別控除証明書などの必要書類を税務署に提出しておく必要があるので注意しましょう。