頑張ると叱られる職場の記憶

2018年4月13日(金)

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 何日か前、ツイッターのタイムラインに、わたくしども日本人の働き方を題材とした、なかなか考えさせられるツイートが流れてきた。

 内容は、4つのツイートのスクショ(スクリーンショット、画面写真)を並べて、それらがいずれも同じ主張を含んでいることを指摘したものだった。スクショの中で紹介されている主張は、つまるところ「うちの国の労働生産性が上がらない理由は、われら日本人が、仕事の成果ではなく、時間にしばられる働き方をしているせいなのではなかろうか」という問題提起であった(こちら)。

 ツイートの中で指摘されているポイントは、多くの人が以前からそう感じていたところと一致しているはずで、なればこそ、このツイートはすでに9万件以上リツイートされ、13万以上の「いいね」を獲得している。

 当該のツイートを読んで、思い出した話がある。
 はるか昔、私が中学2年生だった頃の話だ。

 数えてみると48年前ということになる。なんと、半世紀前だ。
 当時、私が通っていた近所の区立中学校は、生徒のアルバイト労働を禁じていた。

 もっとも、ことあらためて学校側が禁じるまでもなく、当時も今も中学生を働かせてくれる職場がそうそう簡単に見つかったわけでもないのだが、そんななか、冬休み期間中、地元の郵便局が、押し寄せる年賀状を整理する仕事のために、中学生を募集していた。

 局が求めていたのは、ポストに投函された年賀状を宛先別に分類する仕事だった。彼らが中学生を募集の対象に含めたのは、この種の単純作業が、むしろ中学生に向いていると考えたからなのだろう。

 仲間うちの何人かが郵便局で働くことになった。
 私は、学校の校則を尊重する気持ちを持っていたからなのか、それとも単にめんどうくさかったからなのか、そのアルバイトには参加していない。

 だから、これからここに書く話は、私の直接の体験談ではない。

 郵便局でアルバイトをした同級生たちが異口同音に語っていたのは、あそこでは真面目に働くと叱られるんだぞということだった。

 なんでも、郵便局では、時間内に処理しなければならないノルマの総量が決まっていて、勤勉な中学生ががんばってそれ以上の仕事量をこなすと、局員に叱責されるというのだ。

 たとえばの話、5時間分のノルマを3時間で処理し終えれば、早く帰っても良いのかというと、そうはいかない。拘束時間は決まっていて、早く作業をしたからといって早く帰れるわけではない。

 かといって、定められたノルマ以上の件数をこなすと、割増分の報酬をもらえるのかというと、そういう仕様にもなっていない。

 一方、時間内にノルマをこなせない場合は、その分が時給から差し引かれることになるのだが、ふつうに働いている限り、まずノルマ以下にはならない。というのも、設定されている時間あたりのノルマを達成するための労働強度が、中学生の目から見ても大変にヌルかったからだ。

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「頑張ると叱られる職場の記憶」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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