ライアン米下院議長、議員引退へ 共和党に打撃
米下院(定数435議席)のポール・ライアン議長(共和党、ウィスコンシン州)は11日、今年11月の中間選挙に出馬しないと発表した。
共和党からはすでに下院議員が30人近く、再選を目指さないと引退を表明している。そこにライアン議長が加わったことは、下院での多数議席を維持したい共和党にとって大きい打撃となる。
民主党は今より23議席追加すると、下院の多数議席を獲得する。
ライアン議長は11日の記者会見で、来年1月の任期満了をもって下院を引退すると発表し、再出馬しないのは主に家族のためだと述べた。
「自分はそもそも(下院議長の)この職に就きたくなかったのは、皆さんご存知だ。ためらいながらお受けした立場だったが、全力投球してきた。この責任を受け入れたことに、なんの後悔もまったくない」
「けれども正直に言えば、この仕事は自分の生活のすべてになりがちで、そんなことはあってはならない」と議長は述べた。
48歳のライアン議長は3児の父。子供たちに「週末しかいないパパ」と思われたくないと話した。
ライアン議長の引退を最初に伝えたニュースサイト「アクシオス」は、ライアン氏が共和党における要職に不満を抱いていたのは、部分的にドナルド・トランプ米大統領の影響もあると書いた。
トランプ氏はツイッターで、ライアン議長を「本当に良い男だ」と称え、「再選を目指さないが、誰にもとやかく言われる筋合いのない業績を残す。みんなして応援してるよ、ポール!」と書いた。
一方のライアン氏はCNNとのインタビューで、自分とトランプ氏は「人間としての種類が違う」と話した。
「自分は中西部の北部出身で、ニューヨーク出身じゃない。世代も違う。なので自分たちは物事のやり方が違う」
議長はさらに、大統領との「関係のなかでたくさんの摩擦があった」ものの、2人とも「合意できる共通の目標があった」と話した。
「自分は大統領を目指すつもりはない。何かに出馬するなど、少しも考えていない」
民主党の選挙資金集めを担当する民主党議会選委員会は、中間選挙まで半年以上の現時点でライアン氏が引退を表明するのは、共和党にとって不吉な兆候だと指摘した。
「中間選挙でまったく勝ち目がないと共和党議員が次々と気づくにつれ、引退表明はますます続くだろう」
選挙アナリストたちによると、ライアン氏が押さえていたウィスコンシン州第1区の下院議席は、これで民主党に転じる可能性がある。
11月の中間選挙では、下院の全435議員と上院(定数100議席)の34議員が改選対象となる。次の中間選挙は事実上、トランプ政権と共和党が支配する上下両院に対する国民の審判となる。
共和党議長は、大統領が職務を遂行できなくなった場合の継承順位として、副大統領に次ぐ立場。後任の議長には、スティーブ・スカリース下院議員や、元大統領首席補佐官のラインス・プリーバス氏らの名前が挙がっている。
1999年に下院初当選したライアン氏は、2012年大統領選でミット・ロムニー候補の副大統領候補だっただけに、今回の議会引退が将来的な大統領選を視野に入れたものなのかが取りざたされている。
昨年12月には、米税制の大改革という目標を達成。アクシオスによると、ライアン氏はこれを自分の議員生活の最大の功績とみなしている。
(英語記事 US House Speaker Paul Ryan to retire in blow to Republicans)