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 ビッグローブは2018年4月11日、位置情報や加速度などのデータ収集機能と通信機能を備えたIoTデバイス「BL-02」を発売すると発表した。BL-02はスマートフォンよりもひと回り小さい約102グラムのAndroid端末で、2.8インチのディスプレイを搭載。工場内に設置して作業スタッフの動きを可視化し作業効率を高めるシステムや、道路の痛み具合などを位置情報と合わせて確認するソリューションなどの応用が期待される。

 サンプル提供価格は1台当たり3万9800円(税別)。別途、モバイル通信の申し込みが必要となる。「BIGLOBEオフィスサービス」は月額500円〜(税別)、「BIGLOBE モバイル M2M専用プランは初期費用3394円と月額400円(いずれも税別)。

BL-02。サイズは93.8(縦)×57.4(横)×15.4(厚み)mm(撮影:下玉利 尚明、以下同じ)
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 東京・品川のビッグローブ本社で開かれた新製品説明会では、同社 執行役員の松田康典氏が登壇し、同社のBtoB向け事業の動向について紹介。松田氏は同社の企業向けサービスの実績が6000社以上に達していることに触れ、「(当社は)BtoC向けサービスに強い企業と思われがちだが、BtoBでも実績がある。特に昨今は企業のIoT化を支援する取り組みに注力している」と説明した。2016年3月にはIoT開発キット「BL-01」をリリースし、企業のIoT導入の課題や、IoTソリューションに対するニーズの把握を進めてきた。

ビッグローブ 執行役員の松田康典氏
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 その結果、松田氏はIoT導入に取り組む企業の多くが抱える課題として、「デバイスと通信方法の選択が難しい」と指摘。続けて、「センサーから集めた情報を処理するエッジ処理プログラムの開発が困難」「収集したデータを有効活用できない」という課題を挙げた。そして「こうした3つの課題を解決するIoTデバイスがBL-02である」と強調した。

Androidの採用でカスタマイズが容易に

 BL-02は加速度、ジャイロ、地磁気、気圧などのセンサーを搭載する。BLE(Bluetooth Low Energy)や無線LANで他のセンサーとつながり、クラウド上のサーバーにデータを送信するゲートウエイとしても機能する。LTEによる通信が可能でバッテリーも搭載。

 Android端末のため「Linuxの組み込みOSなどと比べて開発が簡単」(松田氏)という。ファームウエアのカスタマイズも容易にできるので、他のアプリケーションと連携させて、アプリが起動したら電源がオンになるといった機能を持たせることもできる。「クラウドやセンシングして収集したデータを分析するAI(人工知能)との連携も容易だ」(松田氏)。

 同社は1000平方メートルの製造工場をBL-02でIoT化し、工場スタッフの位置情報や動線分析による業務効率や生産性を向上するケースを想定して導入費用を試算した。10名のスタッフが1人1台のBL-02を持つ場合の初期投資として、「IoTの環境構築費用が50万円〜、行動センシングなどのソフトウエアが170万円〜、BL-02とビーコンなど他のハードウエアを合わせて120万円〜、月額5万円〜のランニングコストがかかる」(松田氏)という。

パートナーと連携しソリューション提供

 ビッグローブは今後、BL-02を中核とした事業について、NECやオプティム、マルティスープ、バンプレコ-ダーなどとパートナーシップを締結して進めている。NECとの取り組みでは、自動翻訳機能を搭載し、小田急百貨店新宿店での実証実験を展開。そのほか、オプティムの「OPTiM Cloud IoT OS」と連携し、BL-02で取得したデータをAIで分析するプラットフォームを提供する。

オプティムとの連携では、在宅医療のデータを収集し、AIで分析することで転倒検知や疾病発生予測などを可能にするソリューションが紹介された
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 行動センシングでは、製造工場や物流倉庫におけるスタッフやモノの動きを見える化するソリューションで実績のあるマルティスープと連携し、現場のスタッフの行動分析で業務効率化を図る。バンプレコーダーと協業では、BL-02を車に取り付けて、走りながら揺れの状況などをセンシングして道路の路面状況を把握し、修理が必要な場所をいち早く探し出すといったソリューションを展開していく。