クローズアップ現代+「日中印・トイレ大革命!▽病気を発見するトイレまで登場?」[字] 2018.04.11
3、2、1、わー!
なんだトイレかと思ったあなた、侮ってはいけません。
2020年を前に日本のトイレは大進化。
未来のおもてなしトイレが次々と生まれています。
特殊なセンサーで大腸がんなどのリスクを知らせる健康トイレ。
うんちを完全に分解?水道いらずの清潔トイレ。
さらにお隣、中国では日本顔負けのトイレ改造大作戦が進行中。
旗振り役は国家主席。
インドでは日本のトイレに感謝する歌まで誕生。
たかがトイレ、されどトイレ。
世界で広がるトイレ革命に迫ります。
2020年東京オリンピック・パラリンピックで外国人利用客の急増が予想される成田空港。
今、ターミナルのあちこちで進む大型工事は、ほとんどがトイレの改修なんです。
その数、実に147か所。
総工費は50億円です。
多様化する利用者のニーズに合わせてきめ細かな機能を持つ新型トイレが生まれています。
こちらは大型ベッド付きのトイレ。
お年寄りなどのおむつを替えるスペースが欲しいという声に応えました。
この光は耳の不自由な人に緊急事態を知らせます。
パラリンピックも見越した新しい試みです。
もちろん玄関口だけではありません。
2020年に向けたトイレ改修プロジェクトは各地で進められています。
その一つ、世界文化遺産として日本屈指の人気を誇る宮島・厳島神社。
観光客の数は年々増加し去年は過去最高の450万人を記録しました。
ところが、気になる投書が。
トイレの数が足りない。
外国語の表示が不十分と将来を心配する声でした。
実際、多くの観光客で混み合うフェリー乗り場と厳島神社を結ぶ道にトイレは僅か1か所。
便器は男女合わせて4台あるだけでした。
そこで、地元市役所がトイレメーカーと手を組み予算3億円の宮島おもてなしトイレプロジェクトを始動させました。
こちらが完成予想図。
広さは現在の10倍以上。
便器の数は合計22台まで増やしすべて洋式にしました。
さらに従来の男女別トイレに加え障害のある人や親子連れ心と体の性が一致していないトランスジェンダーなどあらゆる多様性に配慮して設計しています。
2014年からオリンピック憲章に加えられた性差別の禁止という規定にもばっちり対応しています。
トイレ改修の目的は観光客を呼び込むことだけではありません。
地域の活性化までねらう自治体もあるんです。
東京・豊島区では区長の鶴の一声で90か所の公園トイレを4億円以上かけて急ピッチで改修しています。
このプロジェクトを取りしきる豊島区役所の宮田麻子さん。
実は豊島区は4年前若い女性の人口が減り続け地域が衰退するという消滅可能性都市に東京23区で唯一選ばれてしまいました。
このピンチを切り抜けるため区が目を付けたのがなんとトイレの改修。
地域の子どもたちにデザインを任せ、カラフルな絵で彩ることにしました。
豊島区のねらいはこうです。
トイレが生まれ変われば公園自体がイメージアップ。
すると、子育て中のママたちが快適に過ごせるようになって女性の流出に歯止めがかかるというのです。
日本、世界のトイレ事情に詳しい、日本トイレ研究所の加藤篤さんです。
加藤さんは先ほどの豊島区のトイレプロジェクトにも関わっていらっしゃるそうなんですが、これ、トイレをきれいにして、若い女性、戻ってきます?
トイレだけやればいいってもんじゃないとは思いますけれども、ただ、豊島区の高野区長は、トイレは街の品位だと言ってます。
つまり、トイレという汚れがち、嫌われがちな所を、本気でやるぞと、ということは、トイレがきれいなら、ほかはもちろんやってますよという意思表示だと思うんですよね。
なるほど、その指標でもあるわけですね。
日本のトイレって、イメージではすでに十分きれいだとは思うんですけれども、今、全国で2020年に向けて、大改造が行われてますよね。
これ、ポイントはどこなんですか?
機能分散です。
機能分散?なんの?
日本ってもともと狭い。
もちろんトイレも制約があるんですね、スペースには。
そんな中で、車いすも使える、いろんなことが使えるっていうので、機能を詰め込んで、詰め込んで、オールインワンのトイレを作ってきました。
でもそしたら、そこが快適なので、もちろん車いすの方、トランスジェンダーの方、子連れの方、オストメイトの方、いろんな方が。
オストメイト、人工肛門のことですね。
集中することによって、混雑を招いてしまってるんですよね。
それを一つずつ解きほぐしていくというか、そんな挑戦が必要だと思います。
なるほど。
再度、そこを得意なオールインワンを分解していく段階に入ってきたということなんですね。
多様な人への配慮が進む中、こんなものも開発されています。
病気のリスクを教えてくれるトイレなんです。
一見普通ですが、用を足すと便器がぴかっと光ります。
縁に仕込まれたセンサーが、大便の中のヘモグロビンを検知。
血が混じっていると、スマホに通知され、手早く、簡単に病気の兆しを知ることができます。
このトイレを作った医師の石井洋介さんです。
かつて自身が腸の病気に悩んだ経験から、毎日、トイレに行くだけで健康チェックができるようにと開発しました。
こうしたテクノロジーを駆使した健康トイレ。
ほかにも尿を調べることで、糖尿病や腎臓疾患のリスクを見つけられるトイレなどの開発を進めている企業もあるんです。
日本のものづくりを長年取材していて、その強み、そして弱みもよく知る、片岡ディレクターです。
片岡さん、ついにはトイレそのものが、病気まで教えてくれる。
めちゃめちゃ欲しいですよね。
検便をしてくれるということですよね。
やはり日本のトイレの技術って、世界のその最先端を行ってるわけですか?
少なくとも家庭向けのトイレの技術はそうですね。
例えばなんですが、今、私が座っているこの温水洗浄トイレ。
私たち、トイレに今、座っておりますが。
これ、まさに日本人の豊かさへの執念が、ついにトイレにまで家電製品を持ち込んじゃったっていう話なんですよ。
お尻を洗ってくれる機能ですよね?
これ、電子機器って、水に弱いっていう常識があるんですよ。
それを打ち破って、トイレすら快適空間にしてしまった、これこそ革命ですよね。
最初の革命があったと。
ところが、一方、行政が作る公衆トイレというのは、税金を使いますから、質素なものでいいんじゃないの?っていう考えだったんですね。
ただ、それがここに来て、商業施設にしろ、行政にしろ、使える技術は使えばいいじゃないかという機運が高まっているんですね。
例えばこれ、スマホのアプリなんですが、駅のトイレの空き状況を一目で見ることができるんです。
これ、更新しますね。
さあ、これ、どうなっているか、これ、新宿駅なんですけれども。
これ、リアルタイムですか?
今ですよ、これ。
空いてます?
結構空いてますよ。
左上、満って出てます。
ここ満なんです。
でもここ空いてますから、ここ空いてますから。
空いてるところを探して行けばいいんですか?
さっき加藤さんからもお話があった多様化、機能分散ということが進んでいくと、こういう技術、絶対に必要なんですよ。
これ、なぜかというと、例えば障害者の方、それからオストメイト、人工肛門を使っている方、自分たちが使えるトイレ、どこにあるの?今、空いてるの?っていうことを瞬時に分からないと、せっかく作ってもそのトイレ、使い物にならないんですよね。
ということなんですよ。
そういうところにテクノロジーが生かされつつあると。
日本で起きているトイレ革命、実は今、世界でも広がっているんですね。
お隣、中国といいますと、その日本の温水洗浄便座、爆買いの姿、記憶にあると思いますが、国家を挙げてのトイレ一新プロジェクトが進行しているんです。
10年ほど前、私も中国に住んでいたんですけれども、今回、取材に行って驚きました。
中国では今トイレにこだわる若い人たちが増えています。
夏さん夫婦は共働きで年収は合わせて450万円。
上海では中流の世帯です。
こちら、ありました。
最近のお気に入りはこの日本製温水洗浄トイレ。
価格は4万円です。
安くない買い物でしたが読書をしながら、思わず長時間過ごしてしまうといいます。
さらに、中国では3年前の習近平国家主席の大号令をきっかけに、国を挙げてのトイレ革命が起きています。
かつて中国の公衆トイレは決して衛生的とはいえませんでした。
トイレは溝の上にまたがるだけのもの。
仕切りがなく、他人と隣り合わせで用を足すことから観光客にニーハオトイレと呼ばれていました。
それが今では…。
天井、高い。
それからファンが何個も回っていて、いわゆるあのつんとした臭いがないですね。
個室で水洗の清潔な公衆トイレに変身。
住民や観光客がひっきりなしにやって来て、いつも満員です。
さらに、おもてなしもすごいことになっていました。
公衆トイレの改善を推奨している上海市から表彰を受け予算も追加されたといいます。
一方、ライバルトイレの売りは、ハイテクなんだそう。
これ、電光掲示板です。
個室の使用状況が一目で分かるようになっています。
実はこのトイレ、すべての個室が男女共用。
無性別トイレと呼ばれています。
公衆トイレは女性用のほうが混雑するため、男女共用にしてしまえば効率がよいと最近、急増しているシステムです。
このトイレ革命、地方も含め3年間ですでに全国7万か所以上が改修されました。
目的の一つが貧しい農村部の生活の質を高め都市部との格差をなくすことにあるといいます。
さらに速いスピードでトイレの建設が進んでいる国があります。
4年後には中国を抜いて人口世界一になるといわれるインドです。
現在、1日5万台のペースでトイレが新設されています。
この空前のトイレ建設ラッシュに貢献しているのが、日本人。
トイレメーカー技術者の石山大吾さんです。
石山さんは、みずから考案した清潔、安全が売りの格安便器通称SATOをインド各地で実演販売しています。
用を足したあと僅かな水を流すだけでふたが開閉する仕組みで臭いや病原菌を媒介する虫をシャットアウトします。
価格は1台数ドルに抑えました。
現金収入が少ない農村地域を中心に売り上げを伸ばしています。
インドでは、今なお3億人が道端や茂みで排せつを行っているといわれ感染症で年間12万人の子どもが命を落としています。
さらに、夜間に用を足しに出かけた少女2人がレイプされ殺害された事件をきっかけに世論がトイレ建設に傾いたのです。
学生時代、アフリカやアジア各地を旅してトイレがないことで生じるさまざまな困難を目の当たりにしてきたという石山さん。
みずから手がけた格安便器は今インドをはじめとした15か国で合計120万台使われています。
世界の国々が抱える課題を解決する可能性を秘めた日本のトイレ技術。
ほかにもあります。
こちらは、水道設備がいらない水洗トイレです。
中を見てみると。
あらかじめトイレに蓄えられた水で排せつ物を流すと、汚れた水と排せつ物を微生物が分解し、きれいな水に戻します。
くみ取りも不要なんですね。
これ、もともとは震災などの災害現場で使うために開発されたもので、去年7月の九州北部豪雨でも活躍しました。
上下水道がなくても清潔に使えるため、水道設備の整っていないアジア、アフリカなどの国々での活用も期待されています。
片岡さん、インドで普及しているこのトイレ、本当にシンプルなトイレですよね。
でも、これが、安全を高め、生活の安全を高めて、社会を大きく変えているわけですか?
私がね、注目したのはこの開閉式のふたのところなんですよ、これ。
これですね、私が子どものころにくみ取り式のトイレで、臭いがトイレに充満しないようにするために使われていた技術なんですよ。
つまり、日本が豊かさを手にする途上で使ってきたローテクをうまく利用しているんですね。
重要なのは、たった一つ、このふたを付けることで、トイレは不浄なものだから、家のそばに作りたくないというインドの人たちのマインドを変え、さらに外で用を足すという危険な行為をも、減らすことができたんですね。
このふた一つ。
でも、そこに気付いた石山さんはなかなかアイデアがありますね。
僕はポイントは、日本に籠もらず、バックパッカーとして、世界の貧困地域をみずからの目で見てきた経験、これがやっぱり大きいですね。
だからこそ、開発途上国の側の立場に立った開発が、商品開発ができたんじゃないかと思いますね。
ただ片岡さん、これ、ビジネスとなりますと、これって、採算合うんですか?
ゼロですよね。
これね、私の見立てでいうと、樹脂成形してパーツ2つでしょう?大体2、300円で売っても、これ、利益出ると思う。
2、300円をどんだけ売っても、でも利益ってどうなんですか?
でもね、そのことよりも重要なのが、あの歌ですよ。
勉強は学校でという、トイレはっていうですね、あれ、別にメーカーの人がPRソング作ったわけじゃなくて、現地の方々がこのトイレに感謝をして、みずから作ったものなんですね。
つまり、これ、インドもだんだんと豊かになっていきますよね、そのときに、あっ、われわれの発展に貢献してくれた日本のトイレ、使い続けたいなっていうふうになるっていうことですよね。
そういうことを期待できますよね。
そして加藤さん、中国ですけれども、トイレ革命の号令がかかって、これ、ハード面ではトイレ、どんどんどんどん改善されますよね。
でも問題は、どうきれいにキープしていくかっていうソフト面ですよね。
そのあたりはどう見てますか?
最近、何度か中国に呼ばれまして、彼らと話していると、たぶんですけど、物は作れると、われわれできると。
ただ、ちょっとできないことがある。
それは、きれいさを、どう維持し続けるか。
ここは非常に悩んでいるみたいで、それを日本から、もしかしたら学ぼうとしてるんじゃないかなと思います。
実際、加藤さん、どう関われるんですか?
例えば教育とか、マナーとか、お掃除とか、いろんなことが日本のやり方でトータルコーディネートができるんじゃないかなというふうに思っています。
トータルコーディネートなんですね。
片岡さん、これ、日本はまだまだやれること、ありそうですね。
やるべきことがいっぱいあると思います。
やっぱり今、不衛生で安全じゃないトイレを使い続けている人っていうのは、世界で23億人いるといわれてるんですよね。
そういう人たちのために使える、例えば節水技術もそうですし、健康技術、ありとあらゆるジャパンブランドの技術っていうのが日本にありますから、そういうのをどんどん使っていってほしいですよね。
トータルコーディネートとおっしゃった、まさに文化の部分。
このトイレ文化を、目に見えないこの文化を、ビジネスとして、海外に輸出できたらすてきだなと思います。
今回、中国で取材しておりまして、トイレは文明の窓ということばをよく耳にしたんですね。
2018/04/11(水) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「日中印・トイレ大革命!▽病気を発見するトイレまで登場?」[字]
東京五輪前に和式一掃作戦▽危機回避!スマホでトイレの空き状況を確認▽中国ではトップが大号令!農村にも個室水洗を▽インド・日本の格安便器で感染症・性犯罪防止に挑む
詳細情報
番組内容
【ゲスト】NPO法人日本トイレ研究所代表理事…加藤篤,NHKディレクター…片岡利文,【キャスター】鎌倉千秋,田中泉
出演者
【ゲスト】NPO法人日本トイレ研究所代表理事…加藤篤,NHKディレクター…片岡利文,【キャスター】鎌倉千秋,田中泉
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