33歳の時に米フェイスブック社(FB)に入社した森岡康一さんは、同社史上初の英語が話せない社員だった。試行錯誤の末に、耳と口の集中トレーニングの大切さに気付き、NHKニュースと海外ドラマで耳と口の集中トレーニングを開始する。2年間で飛躍的に英語力を高め、今では海外企業のキーマンたちから英語で最先端の情報を集めている。
私は2010年、33歳の時に米フェイスブック社(FB)に入社しました。それまでは日本のヤフーで他社との技術連携を推進する部署の部長を務めていたのですが、FBからスカウトの声がかかったんです。
英語力にはまるっきり自信がありませんでしたが、日本での勤務が条件でしたし、FBはSNSの普及という当時の最先端の領域に挑戦していました。迷わず決めましたね。しかし、入社した後で知ったのですが、私はFBで史上初めて雇われた「英語が話せない社員」だったんです(笑)。
英語が話せないのになぜ採用されたかというと、FBは日本が特殊な市場だと理解していて、英語は話せるが日本でのビジネス経験が乏しい人間より、日本のビジネスに精通しているが英語はダメという人間の方が、力を発揮してくれる可能性が高いと考えていたんです。私の方も「何とかなるだろう」と気楽に構えて、英語は半年で習得すると約束してしまいました。でも、実際に仕事が始まってみると、その甘い予想は無残に打ち砕かれたのです。
「I'd like to~」が聞き取れない
例えば、本社の米国人上司とテレビ電話を使った1対1の打ち合わせが毎週あり、直近1週間の進捗を報告しなければいけません。30分の短い打ち合わせですが、英語が話せない私は、事前に英語が得意な日本人の同僚に手伝ってもらって、報告事項を読み上げるための「原稿」を準備しました。しかし、発音がまずくてなかなか伝わらないし、質問されても何を聞かれているのか分かりません。同僚のフォローで何とか事なきを得るという状態が続きました。
文法書を買って勉強してはみたものの、学んだ文法を基に話そうとしても発音がダメで伝わらない。気がつけば、あっという間に約束の半年が過ぎようとしていました。そんなある日、本社との打ち合わせで聞き取れなかったフレーズを同僚に聞いてみると、“I'd like to(~したい)”だったと知ったんです。
赤ちゃんのように学ぶ
文字で見れば分かるこんな簡単な表現が聞き取れないなんてとショックを受けました。結局のところ、耳が英語に慣れていないのが問題で、赤ちゃんが言葉を学び始める過程のように、まずは英語を毎日浴びるように聞いて耳を英語の音に慣れさせるしかない。
そこで、毎日寝る時に英語を流しっぱなしにしたのです。教材として選んだのは、NHKが配信する英語のニュースです。日本人向けのニュースを英語にしているのでとっつきやすく、無料で聞けるんです。でも初めは単語1つ聞き取れず、15分も聞いているとぐっすり寝入っていました。
英語の「耳」を作るのに最適
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