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コンビニエンスストアの2倍近くの数があるといわれる「クリーニング店」。皆さんの家の周りにもあると思うが、実はクリーニング業界はここ20年以上、縮小し続けている。その要因は、人口減少や家庭用洗濯機の高性能化、ファッションのカジュアル化など、構造的なものが多くを占めており、今後、需要が拡大する可能性は限りなく低いといわれている。
クリーニング店は個人経営が多く、売上が減少する中でスタッフを集めるのも難しくなってきている。そんな厳しい状況を打開するため、機械学習を使って“省人化”ができないか……と考えたのが、福岡県田川市でクリーニング店を8店舗展開するエルアンドエーの取締役副社長、田原大輔さんだ。
もともと福岡市内でDJ(ディスクジョッキー)をやっていたという田原さんは、家業を継ぐ形で2004年にエルアンドエーに入社。現在は、Googleが提供している機械学習用のオープンソースライブラリ「TensorFlow」を使い、独自にクリーニング店用の画像認識システムを開発している。開発経験がないどころか、これまであまりITに縁がなかった田原さんは、画像解析に挑むために独学で技術を学び、さまざまな試行錯誤を繰り返しているのだという。
エルアンドエーの本社がある福岡県田川市は、かつては炭鉱で栄えていたが、石炭から石油へのエネルギー転換が進み、炭鉱が閉山したことで人口が減少。現在の人口は約5万人で、過疎化と高齢化も著しく進んでいる。それは同社も例外ではなく、従業員には70歳を超える人もいるそうだ。
「自虐的な意味でもありますが、田川市には今後日本が直面する課題が詰まっています。これらの問題に加えて、クリーニング店の市場規模はここ20年ぐらいで半分以下にまで落ち込み、各店舗の売り上げも落ちています。十分なスタッフを置くのも、難しくなってきているのが現状なのです」(田原さん)
こうした課題に対処するため、田原さんは社内のIT化に取り組んだ。「脱電話、脱メール、脱Excel」というスローガンを掲げ、ビジネスチャットツール「チャットワーク」を使ってメールを廃止し、2008年には電話をSkypeに置き換えた。店舗と工場のやりとりは全てビデオチャットで行うとのことで、「70代の従業員も問題なく使っている」(田原さん)という。
Excelについては、Googleスプレッドシートへの一本化を試みたが、従業員全員が十分使いこなすのは難しかった。そこで、田原さんは方針を変え、数回のボタン操作で完結するような、誰でも使える業務アプリの開発に着手した。小さな企業であるため、開発会社に外注する費用などない。業務の傍らYouTubeの解説動画を見たり、本を読んだり、ときにはeラーニングも駆使して勉強し、2013年ごろから7~8個のアプリを開発した。
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