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「世界最大の平和の祭典」とされるオリンピックはサイバー攻撃や物理的なテロを目論む者にとっては、格好の標的となる。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも例外ではない。日本の安心・安全を守るのに、テクノロジーはどう貢献するのか。東京オリンピック・パラリンピック大臣の鈴木俊一氏は、常に有事を想定した対策が求められると語る。
2020年の東京大会まで残り850日を切りました。安全に運営するための考え方を聞かせてください。
安全を守るのは開催国の義務です。選手をはじめ観客など、海外から多数の来場者が訪れます。オリンピックは「スポーツの祭典」であり、「平和の祭典」とも言われています。安全の確保は運営に不可欠で、非常に優先順位を高く位置付けています。
2020年大会は、日本の優れた文化や技術力を世界に発信する絶好の機会です。日本が持つ価値を発信するチャンスでもあります。その中でも「安全」は、世界に誇る価値の一つです。
開催に向けてテロへの具体的な対策が必要です。
いまやテロは世界各国で頻発しています。その対象は、重要施設などに比べて警備が緩い「ソフトターゲット」です。テロの実行方法でも、自動車とかトラックとか、入手しやすいものを使っています。
テロを想定して「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会等を見据えたテロ対策推進要綱」を策定しました。政府が一丸となって情報収集や水際対策、警戒警備などを強化していきます。
ロンドンでもリオでもサイバー攻撃
脅威の代表例がサイバー攻撃です。2月の平昌大会では開会式のタイミングで攻撃があったと聞いています。ロンドン大会、リオ大会でもありました。それぞれの大会では運営に大きな影響はなかったようです。
東京大会でもサイバー攻撃を予測して対策しなければならない。むしろ、そうした攻撃は無ければ「奇跡」だと思います。多かれ少なかれ、「何かある」という気持ちでいなければいけない。
特に重要インフラが狙われる可能性がある。電気や水道などの供給がダウンすると大変なことになると思います。東京は大都市です。重要インフラを担う事業者との連携が必要です。サイバー攻撃に関するいろいろな情報を共有する体制が求められます。
個々の事業者がそれぞれリスクを評価して対応策を取るわけですが、国としても対策を取ります。事業者に任せっぱなしということではありません。方針をきちっと示します。行政の関係機関も加わり、国民の安全を守ります。
平昌のオリンピック、パラリンピックを視察して得られた知見はありますか。
平昌は必要な体制を構築し、サイバーセキュリティも含めて、テロ対策をしていたと思います。軍隊というよりは警察が前面に出ていた印象です。競技大会には関係者を含めて現地に乗り込み、大会開始前から視察しました。専門的な知見も得られたと思います。それらの知見を2020年の東京大会にも生かしていきます。
東京大会では民間の警備会社の位置付けをしっかり決めて、体制を整備してもらう方針です。大会期間中は多数の人が集まり、移動するわけですから交通における整理などもきちんとやっていきたい。