厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によれば、日本ではこの1995年以来20年間、一人あたり賃金は伸びていないのだそうだ。
さらに、非製造業において顕著で、1997年以来、伸びていない、ではなく減少を続けている。
最近景気が良く、企業の内部留保も上がっていると言われるなか、なぜ賃金が上がらないのか?については三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「企業はなぜ人件費を上げられないのか?」というレポートに詳しくのっている。(前述した統計データも詳しく載っている)これによれば、得られた利益を人件費に分配するよりも、内部留保と配当へ回っているのだそうだ。
日本経済が先行き不透明なのは誰が見たってわかる。少子化だし、生産性は悪いと言われているし、高齢化社会だ。東京オリンピックが終わったら「祭りのあと」のように寂しくなってしまうかもしれない。そんな経済情勢の中、全員一律給与をアップしよう、という意思決定を企業はしにくいだろう。
これは企業側の論理だ。一方でもらう側の論理だってあると思う。
Fringe81は、なぜ従業員同士で給与を送り合う、ピアボーナス、というムーブメントをやっているのか。
それは全く新しい利益分配方法がテクノロジーによって実現可能になったからと感じているからだ。
※ユーザーエクスペリエンス設計やリアルタイム処理技術をテクノロジーと呼んでいます
まず、会社から分配されるお金とは何か。
お金には「色」がある。きっと。それは2つの要素によって変わるのだと思う。
1つ目は、同じ値段を持つお金でも、「誰からもらうか」でその感じる価値は変わる。もらった感情の振れ幅は明らかに異なる時がある。例えば、もし私がGoogleに勤めていたとして、ラリー・ペイジからお礼のメッセージと共に1000円を直接もらったとしたら、会社からもらえる給料の何倍も嬉しいと思う。おそらく神棚に奉って拝むレベルでうれしい。なぜなら彼は僕にとってはヒーローだから。同じ報酬でも「誰からもらったのか」というのはその価値を何倍にもする。
2つ目は、お金は「もらう理由」によってもその価値は変わる。同じ報酬でも、やったことが高く評価されたうえでの報酬なのか、年次のベースアップで、他の人と変わりなく一律にあがった報酬、どちらがうれしいかというと、明らかに前者だと思う。
つまり、報酬(お金)は、「誰からもらったか」と「もらう理由」で価値は変わる。特に感情面は。額面は変わらないのかもしれないけれども。
そもそも会社というものができてから、歴史上、様々な人事評価制度、それにともなう報酬制度が設計されてきた。MBO/OKRのような目標設定のやり方や、グレード制、給与テーブルなど、いかにして評価の納得性を高めて得られた利益を分配するか、という発明や工夫が過去ずーっとなされてきた。
一人ひとりにたっぷりと時間をかけて1円単位までシステマチックにちーんと出て、完全に納得いく分配方法ができれば良いのだけれど、現実的にそんな事は不可能だ。それを実行する人事の人のリソースだけでも、何人も何人も必要だろうし、そんなにちーんと出るほど会社は単純でもない。数字だけではかれる仕事なんて会社の仕事のほんの一部だ。
よく、●●手当みたいなものを政府が導入しようとすると、「バラマキだ!」みたいな批判が起こる。こういう批判が起こる理由もよくわかって、「誰からもらったか」はよくわからず(お上とでも言うのだろうか。)、そして半ば強制的に配られると「もらう理由」もはっきりとしないからだと思う。でも、1億人単位で何かを実行しようとすると、バラマキくらいでやらないと、オペレーションが回らなくなるのも事実なんじゃないか。一人ひとりの使いみちを分ける、とか難しそう。これが、完璧な人事制度も配布方法たる給与制度もできなかった理由ではないか。
つまり、納得性を高めようとすればするほど、複雑さは増し、「誰からもらったか」と「もらう理由」もだんだんと薄れる。ようは「ありがたみ」が薄まる。(ありがたみを漢字で表現すると有り難み、めったに無い、となる)
さらに、最近、ますます「企業に属すこと」の魅力が薄れつつあると思う。もう年功序列でもないし、終身雇用で一生身分が保証される事も少なくなってきた。副業だってOKな時代だ。特にミレニアル世代は、会社にそれほど期待もロマンも感じてない。彼らは日本が成長している、景気の良い時なんて体験してない。ミレニアル世代は、給与に対しては、「もらう理由」と「誰からもらったか」という「有り難さ」を求めている。
その新たな答えとしての給与が「ピアボーナス」なのか?
従業員同士でボーナスを送り合う、というピアボーナスという概念や行為自体は、全ての企業で何らか実行されているアイデアだと思います。上司や人事部だけが評価するのではなく、社員同士で感謝の気持ちを伝え合ったり、サンクスカードを送ったり、おごったりするのもピアボーナスの一種と言えます。では、ピアボーナス、とうたっているUniposは何が違うのか?というと、
私は、Uniposは体験型給与だと思うのです。
よく、Uniposの話をすると「あーホメ合うサンクスカードですよね?」とか、「エンゲージメント率上がりそうですね?」と言われるのですが本質はそこではないのです。ホメる事も大事です。エンゲージメント率も確かに効果あります。
ですが、Uniposは単に人事制度や給与制度を導入しよう、という制度ではなく、ピアボーナスという「体験」が、リソースを投じなくとも簡単にできる、という事が本質なのです。体験が重要なのです。なぜなら、「誰からもらったか」と「もらう理由」は、体験そのものだからです。
制度を導入することでも、ホメまくり合うということが本質なのではありません。Fringe81の発明はこのうれしい「体験」の設計にあると思っています。単なるピアボーナスシステムというのは誰でもできます。
が、ピアボーナスというものを通じ、従業員の方や経営者の方へ、誰から・どんな理由でもらったか、そのうれしさや感情を深めるという「体験」を開発することにおいて、Uniposは一歩も二歩も進んでいますし、比較されるものでもないし、簡単にパクったり追いつけるものではないと自信を持って思います。
これからは制度やシステムの開発ではなく、「体験」の高度な開発こそが、本当に使われるサービスになっていくと信じています。Uniposはものすごい人手がかかるような制度でもシステムでもありません。人事制度でも給与制度でもない、うれしい「給与体験」を実現したいのです。
私たちは何も、既存の給与(基本給と成果給)にとって変わってやろう!とは思っていません。僕はピアボーナス原資は、総人件費の1-2%程度が望ましいと思っています。基本給も成果給も、普段の自分に与えられている主要な仕事の評価と、その結果としての給与分配のやり方として、とても重要です。
ピアボーナスはそういったものでは拾えなかった、会社のバリューに沿った行動であったり、良かれと思ってやってくれたリアルタイムの評価すべきものを評価しようじゃありませんか、そして社員同士でやりませんか、というものです。
テクノロジー(ユーザーエクスペリエンス設計やリアルタイム処理技術をテクノロジーと呼んでいます)によって「体験型給与」が実現できるようになったのです。一律ベースアップするのもOKですが、こういった利益分配方法もありなのではないでしょうか。
このムーブメントに賛同していただく人を増やすべく、今後もがんばっていきます。
ピアボーナス「Unipos」へのお問い合わせはこちらからお願いします。