テスラが抱える三重苦、経営危機に陥る?

自動車トップブランドとはどこに差があるのか?

2018年4月12日(木)

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3月23日にカリフォルニア州で発生したテスラ車両の事故現場(写真提供:KTVU/AP/アフロ)

 2018年度がスタートした。新たな企業戦略や企業方針策定のもと、チャレンジングな展望を進めるところ、着実な事業拡大を標榜するところ、保守的な戦略で安定を求めるところ――など各社各様であろう。

 そんな節目の時期に、いろいろな事態が生じている。自動車業界では自動運転と電動化を両輪として、激しい開発競争が繰り広げられている。そういう状況下でカリフォルニア州では、米テスラの自動運転車両が3月23日に死亡事故を起こした。運転支援機能であるオートパイロットが作動している中での死亡事故とされている。この事故は世界に衝撃をもたらした。

 この事故をどのように考えるべきなのか。日米欧のトップブランド各社が自動運転の開発に余念がない。それだけに留まらず、世界の大手自動車各社が自動運転を巡って覇権争いの状況を呈しつつある。そんな中での事故だった。

テスラが実証した自動運転覇権争いの弊害

 2016年8月、米フォード・モーターが21年までにレベル5の高度完全自動運転を実用化すると発信した。立て続けに、独フォルクスワーゲン(VW)と同BMWも同年の量産化を発表したことで、自動車業界に大きなインパクトを与えた。米国自動車技術会が定義した自動運転の定義を以下の図に示す。

欧米勢自動車各社の積極果敢な戦略

 そして本年1月11日になると、米ゼネラルモーターズ(GM)がレベル5とはいかないが、基本的にドライバーに委ねないレベル4を19年に量産すると発表した。この報道は、21年と発表したフォード、VW、BMWの開発計画よりも時期が早く衝撃的であった。

 日本の自動車各社は、このような実用化時期に関しては明言していない。3月に発生したテスラの自動運転死亡事故を受けて、トヨタ自動車は暫し自動運転車の公道実験を中断すると発表した。かといって、欧州の自動車各社はこの事故を冷静に見ているし、地元の米国自動車各社も公道実験を中止するようなことは現時点で発信していない。

 とすれば、欧米自動車各社は、テスラの事故は起こるべくして起こっている、あるいは技術が未成熟なまま公道実験を急ぎ過ぎていると分析している可能性が高い。日本勢が公道実験を保留にしている間に、欧米勢がいち早くこのような量産化に向けて推進していけば、日本勢の立場は後手に回ってしまうだろう。

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「テスラが抱える三重苦、経営危機に陥る?」の著者

佐藤 登

佐藤 登(さとう・のぼる)

名古屋大学客員教授

1978年、本田技研工業に入社、車体の腐食防食技術の開発に従事。90年に本田技術研究所の基礎研究部門へ異動、電気自動車用の電池開発部門を築く。2004年、サムスンSDI常務に就任。2013年から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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