阪急2路線実現へ前進 北梅田―十三と十三―新大阪

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関西
2018/4/11 21:36
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 阪急電鉄が計画する新規2路線が事業化に向けて前進する。国土交通省が11日発表した調査によると、2031年開通予定のなにわ筋線の北梅田駅(仮)と阪急十三駅を結ぶ「なにわ筋連絡線」や、十三駅とJR新大阪駅を結ぶ「新大阪連絡線」の採算性が良いとの結果だった。実現すれば阪急沿線の神戸や京都方面、新大阪駅と関西国際空港とのアクセスが改善する。阪急はなにわ筋線との同時開通を目指す。

 数百億円から1千億円単位の建設費がかかる鉄道の新線計画は鉄道会社1社では実現が難しい。事業費負担の割合は未定だが、国や地元自治体の補助金も必要となる。今回の結果は実現に追い風となりそうだ。

 今回の「近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査」では阪急宝塚線の曽根駅と大阪国際(伊丹)空港を結ぶ「大阪空港線」を含めた阪急3路線の事業性をまとめた。阪急は結果を参考に自治体と協議して、国から事業計画の認可を得て事業化する。

 調査結果は31年春に関空と北梅田を1本で結ぶなにわ筋線の開通が前提。阪急沿線と接続するなにわ筋連絡線は建設費が約870億円、輸送人員が1日9万2千~10万2千人と試算。開業から24~31年目に累積損益が黒字化する見通しだ。

 さらに、なにわ筋連絡線に加えて新大阪連絡線を整備した場合も試算。新大阪連絡線のみで建設費は約590億円、輸送人員が1日5万5千人。開業27年目で黒字となる。また両路線を同時に整備した場合、輸送人員も増え、建設費が1割安くなる。累積の黒字化が約10年早くなるという。

 阪急は新線計画に意欲的だ。両路線が開通すれば神戸線や京都線などの沿線から十三で乗り換えて関空や新大阪に行けるようになる。混雑する梅田駅やJR大阪駅を経由する必要がなくなるうえ、なにわ筋線との相互乗り入れで関空から十三や新大阪まで1本で結ばれる。阪急は「計画を後押しする結果となった。今後は関係者と調整して事業化に向けて積極的に進めていきたい」と話す。

 一方で大阪空港線は建設費が約700億円、輸送人員が約2万5千人だった。収支採算性では開通40年間で黒字転換する可能性が低く、国から補助金を得られる最低ラインを下回った。

 伊丹空港は夜間の離着陸禁止などの規制があり、今後も旅客数の大幅増は見込めない。阪急は「採算性を高める施策を検討したい」と実現を諦めない姿勢だ。

■十三駅周辺 再開発の足音

 なにわ筋連絡線と新大阪連絡線が実現すれば、乗換駅となる十三駅周辺の再開発が進む可能性がある。同駅には阪急神戸線や宝塚線、京都線が乗り入れており、1日の乗降客数は6万7千人と阪急の全駅で6番目に多い。これに地下で両路線が加われば、5路線が交差する巨大ジャンクションとなり、関西国際空港や新大阪から乗客が流れ込む。

 阪急電鉄は3月に武田薬品工業から十三駅近隣にある運動場を買収した。面積や買収金額は明らかにしておらず、使用目的も未定という。ただ将来的な再開発をにらんでいるとの見方もある。

 十三は駅前に多くの飲食店が集まる歓楽街で、近年は古き良き大阪の姿を求めて観光客が目立つ。新線の開通で訪日外国人客が増えれば、ホテルなどの建設が進みそうだ。

(阿曽村雄太)

▼近畿圏における空港アクセス鉄道ネットワークに関する調査
 なにわ筋線など近畿圏の鉄道の新線整備は近畿地方交通審議会が2004年に定めた答申が方向性を示してきた。訪日外国人の急増など04年から状況が大きく変わり、新線構想の議論を活性化するため、17年7月に国土交通省が調査を始めた。結果は国の許認可などに直接影響はないが、鉄道会社が事業化を進めるうえでの参考データとして使われる。

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