NTTドコモは2018年夏をめどに、LTE-Advanced通信サービス「PREMIUM 4G」の最大通信速度を下り988Mbps・上り75Mbpsに向上する。2018年夏商戦向けの新機種の一部から対応する。2018年度以降にはこの速度を下り1Gbps以上・上り100Mbps以上に引き上げる計画だ。
合わせて、同社は通信の多い地域におけるエリア対策の一環として、「マンホール型基地局」の試作を進めている。3月6日から実証試験を開始しており、2018年度内に実用化する計画だ。
(記事中の通信速度は全て理論値)
下り通信速度の高速化は、1.7GHz帯(Band 3)の通信に「4×4 MIMO(4多重通信)」を一部エリアで適用することと、電波を束ねる「キャリアアグリゲーション(CA)」を一部エリアで最大5波対応(5CA)とすることで実現する。
具体的な下り最大通信速度は以下のようになる(※印のある周波数帯は4×4 MIMO適用)。
Band 3は東名阪エリア(関東・東海・関西地区)限定で使える周波数帯であるため、これらの最大速度は同エリアにおける数値となる。ただし、東名阪エリア以外でも「Band 3の代わりに1.5GHz帯(Band 21)を使った速度向上を実施する」(担当者)予定だ。
一方、上り通信の高速化は、変調方式(データの伝送密度)を「16QAM」から「64QAM」に変更することで実現。これにより、上り通信速度は従来比の約1.5倍となる75Mbpsに向上する。
特に都市部では、通信トラフィックが「右肩上がり」となっている。その対策として、ドコモでは人が多く集まる場所に「スモールセル基地局」を設置してトラフィック分散を図っている。
しかし、観光名所や景勝地では、景観の都合から“あからさまな”形状のスモールセル基地局を設置することが難しい。そこで、同社は“地面”に着目。歩道などに埋め込む「マンホール型基地局」を試作することになったという。
マンホール型基地局は、地面にアンテナ装置を設置し、マンホール状のふたでその上をふさぐ形を取っている。アンテナ設置に必要な電源線や光ファイバーは、別途敷設する。
車両などの荷重に耐えることと、高い電波透過度を両立するため、ふたはFRP(繊維強化プラスチック)で作られている。このふたを含む基地局の耐荷重性能は、大型の緊急車両の停車に耐えられる「T-25規格」を満たしている。景観に合わせてふたのデザインを変えることも可能だ。
この基地局は、3月6日から札幌市内にあるドコモの施設で試験を行っている。対応周波数帯はBand 21で、地中10cmの所にアンテナを設置し、基地局から半径90mの範囲をエリアとしてカバーする。
試験環境では、地上3階程度の高さのビルからも通信できることや、積雪環境下でも特に大きな支障なく通信できることが確認できたという。
今後、2018年夏ごろに沖縄県南城市、2018年冬ごろに東京都渋谷区でも実証実験を行う。南城市では札幌市と同様にBand 21を利用する基地局を設置し、台風などで大雨が降った際の試験などを行い、渋谷区ではBand 42を利用する基地局を設置し、高トラフィックエリアでの稼働試験を行う予定だ。
3箇所での実証実験を通して、年度内の実用化を目指す。
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