It's just a few simple steps!

Register for a FREE pixiv account!

Enhance your pixiv experience!

Welcome to pixiv

"愛人 5", is tagged with「腐向け」「R18」and others.

ふわっとした設定しかないですが、一話を参考にしてください。8月に一度も更新できず...

かおる@超全ケイ東3ホ06a

愛人 5

かおる@超全ケイ東3ホ06a

9/3/2016 16:10
ふわっとした設定しかないですが、一話を参考にしてください。

8月に一度も更新できずすいません。遅くなりましたが5話です。しばらく(ずっとか?)つらたんターンが続きます。今回東堂さん出てません(笑)

いつも通りキャプションでなく以下は近況なので興味ない人は読み飛ばしでどうぞ(笑)

更新できなかった言い訳じゃないけれど、8月前半はお盆まで忙しくしてたんですが、8月14日のことです。
SM@Pの突然の解散宣言。
彼らのデビュー日の9月9日(スペバイの初日でありますが)には何か動きがあるだろうとずっと覚悟してたけど、まさかここで!オリンピックの真っ最中、終戦記念日の前日!大きくニュースに取り上げられたくない事務所の姑息な戦略にここまでやるかと打ちひしがれながらも、無念を滲ませる日本一Kさんと「ごめん」と謝るリーダーNに、現実を受け入れないわけにはいかないんですが。
ですが、21年スマヲタです。Nファンです。
いいともの火曜日に末っ子と出始めたころ、身体を張ったジェスチャーコントをやっては「俺こんなことやるためにジャ○ーズ入ったんじゃねぇよ」と決め台詞を言う彼の、沼ではなく、谷底に落とされました。
21年。
人生はSM@Pと共にでした。
かつてはK(日本一くん)×N(リーダー)で腐活動、薄い本も作り、現在もずっとその気持ちは変わりません。東巻、ペダルに熱中していても、K×Nは永遠です。
そんなわけで、この衝撃的な現実にとても書く気も起らず、毎日幽鬼のごとくすごしております。10月スパーク&絵巻の新刊もあるので、また更新速度が下がると思いますが、最後まで書くつもりでいるので気長にお待ちください。

ここに来てくれてる方にはまったく興味のない話ですが、ちょっとKNの話を聞いてください。
私にとってKNはとても東巻に近いCPです。
はー、どこが?と突っ込まれること必至。
知ってます。
特にNと巻ちゃんのどこが???って思いますよね。
わかります。わかります。
まあNに関しては、Kに対してツンデレなところと、Kに性的な目で見られてることに対して、ものすっごく防御してた(二十代のころ)ことかな。今ではそれも受け入れているようです。もうKはこういう生き物なんだってwww
まあ、いまでもKはある意味性的な目でNを見ているように見受けられますが、Kは究極の無自覚ですから!
自分の行動が危険行動だって本当にわかっていないので。
だから28年もずっと隣にいられるんだろうな。
そしていつまでも公共の電波でNに対する気持ちを垂れ流しにするんでしょうね。いいぞ止めるな、もっとやれ。

さてそんなKです。
Kのいわゆる日本一のカリスマ的なところは私の中では大変東堂様に通じるものがあり、Kは私の中でのリアル東堂像です。たぶんこんな風に大人になっていくんだろうなぁって。アイドルとロードレーサーではずいぶん違うところがあるだろうけど、メディアに露出するときの東堂様のことを思うと、Kみたいだといいなぁって思います。ポスターとかCMとか。

そこを踏まえて、KのNに対する態度気持ちなどなどが、東堂さんの巻ちゃんへの行動と丸被りするところがあるからこそ、Kは私のリアル東堂様。

KとNは28年のつきあいになります。今ではもう気分は熟年夫婦です。
が、そんなKとNも十代のころはグループを引っ張っていく上二人としていろんな葛藤がありました。まさに光のK影のNです。いろいろあったことは掻っ捌きますが、KとNは常に背中合わせでチームの中でお互いの背中を託してずっと大人たちと戦ってきました。その積み重ねと勲章が今に繋がっています。
光を羨んで、俺だってと葛藤してきた影も、いつしか自分にしか行けない道に気が付いて、認め合いチームを引っ張ってきました。そうして20年、ほぼ毎日テレビ画面に出ている偉業を達成してるのです。
さて次にKについてですが。Kは10代のころからNの顔を「俺の母さんにそっくり(事実)」と公言してまして、大変あの顔がお好きなようです。恐ろしいことに、今でも時々言います。私も実際ライブなどで何回か聞いてます。
そんなKの東堂さんとの共通点ですが。
常にNの行動を見ているところです。
よくアイドルパロの東巻を見るときに、巻ちゃんに執着してる東堂さんは鉄板ですが、実際に5万5千人収容のドームライブにて、オープニングから最初のセクションを歌い終わり一人ずつの挨拶をする場面です。
K「Nさー、もう休んで水飲んでたよね」「さっき、靴紐結べなくて困ってたでしょう」などなど(これは別々の会場の話です)。
うん、確かにNはそんな行動をしてたね。知ってますよ、私は双眼鏡で見てましたからね。が、しかし、K、おまえはどこを見てる?5万5千人の客は?目に入らないの?お水飲んでたN見てたの?靴紐結べないN見てたの?君、何してるの?
と、なったことはライブに行けばよくある風景です。
件の靴紐結べなかった時には、とうとうNは結ぶのを諦めて、Kに来てもらって、歌ってる真っ最中の間奏でKに結んでもらいましたとさ(事実です)。
Kったら世話焼き屋さん♡。
といっても、こうした行動は下の子たちにはしません。N限定です。
アンコールでビジョンに移すカメラを持ったKがNを追いかけまわし、スパッツ一枚の姿を足元から顔まで舐めるように撮りあげたこともあります。
うーん、東堂さん!
また割愛して、看板テレビの話をします。
ご存知の通り、料理コーナーありますね。まあ、何度餌付けか?と思うようなN
の好物を作ってきたか。まあそれも置いといて。ある時ゲストが食べている時間に、やっぱり好物をボールに入れてNに食べさせているとき、ゲストから「そういうことやると猫は居着いちゃいますよ」と言われた応え。「この子猫はね、自分の好きな時にしか寄ってこない猫なんだよ」
うーん、巻ちゃん!
しかも、猫をさりげなく子猫って言いなおした!言いなおしましたね!(重要)
そして某1月謝罪のあった日です。
レストランでごはんをゲストに振る舞っていました。そのとき、さも当たり前のようにもう一人前多く作った食事を末っ子に顎で指示して運ばせる始末。もちろんNにです。
体調の悪さとか、食べれてないのわかってるんだなって。本当に心からの愛情を感じました。
うーん、東堂さん!
ここに挙げたのは数例ですが、このようにKの行動は大変こうだったらいいなあ東堂さん、という萌えと同じ行動をするのです。ゆえに私の中でのリアル東堂なわけです。こんな風に東巻も年を重ねてくれたらなぁと妄想してます。

よかったら今度Kを目にするときにはリアル東堂か、と思ってもらえればwww

そんなわけで、実は私もつとぷ愛でてたよ!今でも好き!って方がいらしたら握手!

長々とありがとうございました。
続き、がんばりますね。
2016.9.3
 豪奢な構えではないけれど、品の良い広めの門扉を車で潜ると、深い緑の木々の真ん中を、弦のような幹と葉を茂らせたグリーンのアーチがしばらく続いてた。ところどころに白い小さな花が咲いている。なんという名前だろうか。
 巻島はグリーンの涼しげな陰をゆっくりと徐行していく車の中からそれらを眺めていた。
 しばらくすればアーチは途切れた。すると目に鮮やかな色とりどりの花が咲き誇る庭園が目の前に開けていた。
 夏に咲く花と言えば、ひまわりくらいしか思いつかないのに、庭園には白、黄色、ピンク、薄いブルーに濃い紫。数え切れないほどの種類の花が咲いていた。
 庭園の花々は整然と、というよりは少しずついろんな種が入り乱れながら、それでいてとてもよく纏められている。とにかく見ているのが楽しくなる光景だ。巻島は一望しただけで、この庭園の風景を好ましく思った。
 そんな花々に囲まれた庭園の奥に、やはり大きくはない邸がぽつりと建っているのが見えた。そんな車宿りの前に誰か立っている。
 麦わら帽子を被ったその人物は、まだ少年のように見えた。
 徐行していた車はことさらゆっくりと、静かに車宿りに停まった。運転席から黒田が降りる。そのまま後部座席の扉に回ってくるのを車中で巻島は待った。

「あー、本当に巻島さんだぁ」

 どうぞと言われて黒田の開けた扉から降りると、声と共に少年が寄ってきた。

「いらっしゃい、巻島さん。俺、ずっと、ずっと巻島さんが来るの待ってたんですよ」

 にこりと笑うその顔をどこかで見た覚えがある。けれど思い出せず、ことりと巻島は首を傾げる。

「真波!」

 真波と呼ばれた少年のどこに粗相があったのか、黒田がぴしゃりと叱りつけたので、巻島は自分が叱られたわけでもないのにびくりと身体を震わせた。当の真波を見遣ればまったく気にもしなかったようで、のんびりと謝罪の言葉を口にしていた。

「あー、黒田さん、ごめんなさーい」

 それでも黒田の叱責は理不尽なものではなかったようで、真波と呼ばれた少年は理不尽な表情はしていない。しかしすぐにまた悪びれない表情で巻島に目を向けた。

「いらっしゃい、巻島さん。お久しぶりです」

 やはり初対面ではないらしい。ぺこりと頭を下げた真波の顔を、巻島は記憶から掘り出すように頭の中で探しはじめた。

「ねぇ、見てくださいよ。綺麗な庭でしょう。全部俺が手入れしてるんですよ」

 少し威張るように言い放つ少年に、巻島は口許を緩めた。年のころは置いてきた坂道と同じくらいだろうか。まあ坂道にはこんなにも自己主張のつよいところはないけれど。

「今の時期は・・・」

 説明しだした横顔をずっと見ているうちに、ああ、と巻島はやっと思い出した。
 真波は東堂の本宅にいた庭師の息子だ。
 東堂の本家には、東堂に年の近い子供が幾人かいた。黒田のように補佐を目的にしているもののほかにも、こうした使用人の子供だったり、護衛の訓練を受けている子どもだったり・・・。巻島が訪れれば、そのほとんどの時間を東堂と二人で過ごしたけれど、ときどきは邸内にいる子どもたちも遊びの輪に加わった。人数が多いほうが楽しいときもあるのだ。
 立場上と、年齢で、その中でいつもリーダーシップを取るのは東堂だった。なぜか邸内にいる子どもたちは、みな東堂や巻島より一つ二つと幼い者たちばかりだったせいもある。それに東堂はその性質から、どんな場所でも常に中心になり、尽八さん、尽八さん、と子どもたちが慕う東堂を、巻島は幼心にも誇らしく思ったものだ。
 この男が将来を共にする伴侶かと思えば、胸が高鳴るばかりだった。
 一通り庭の説明を聞き終えてから、巻島はおずおずとその名を呼んだ。

「真波・・・」

 呼ばれて、真波は巻島を振り返る。そしてまた屈託のない笑顔を向ける。

「あれぇ、巻島さんったら薄情だなぁ。俺のこと忘れてましたね」

 会った瞬間に巻島が思い出せなかったことを指摘するけど、全然いやそうな顔はしない。真波はそういう子供だった。いつもにこにこしていて、東堂の後をちょろちょろと付いて回っていた幼い姿が思い出される。
 東堂と外で遊んでいれば、庭師の父親について仕事をしていたのに、ほっぽって「尽八さん!」と駆け寄ってきた笑顔が変わっていない。

「・・・ごめんショ」

 巻島は自分の不義理を謝った。

「いいんですよぉ」

 間延びした声で答えて、また、ああ、と付け加える。

「ごめんなさい、玄関先で引き止めちゃって。でもお部屋の用意はちゃんとできていますから。お茶の支度もすっかり終わってます。案内しないといけませんね」

 黒田に促される前に思い出せてよかったと言わんばかりに、真波は玄関の扉を開けた。それから真波は、この庭はもちろんのこと、邸の中のことはだいたい自分に任されていることを巻島に告げる。
 邸は見たとおり、それほど大きなものではない。むしろ東堂の所有しているものなら小じんまりとしているほどだ。とはいっても、本宅や巻島の行ったことがある別邸に比べればという程度だ。ふつうの住宅に比べれば十分に大きくて広い。
真波の案内で中に入ってみると、一つ一つの部屋を大きく取ってあるせいで、部屋数はそんなにも多くはなかった。一階には玄関ホールを挟んで食堂と居間。二階には大きな寝室とその続きの居間は東堂のための居室だろうか。それに書斎が一つ。ゲストルームが二つ。主寝室にはもちろん広々としたバスルームが付いているし、ゲストルームにもそれぞれバスルームがある。主だった部屋はそれくらいだった。
どんな目的で建てられた別邸なのかは知る由もないが、東堂が一人で過ごすのならば、部屋数はさほどいらないのだろう。
 別邸というよりも、隠れ家といった趣だろうか。ふだん暮らすにしては規模が小さい。けれど中心街からはさほど離れていないので、車での移動ならたいして時間もかからない。短い休暇などを過ごすには不自由は感じないのだろう。
そう考えれば巻島を一人隠しておくにはちょうどいい場所なのかもしれない。
けれど・・・。
巻島はしばし考えを落とし込む。
本当はどんな目的で建てられたのだろうか。
そのむかし、東堂は巻島一人だけだと豪語していた。
けれどこんな邸があればそれも疑わしい話だ。まあ、今となっては巻島には関係なく、どうでもいいことだけど。
それにどうせこれからは自分が棲むのだから。

「巻島さんはこちらの部屋と寝室をお使いください」

「あ、でも・・・」

 真波に案内されたのは明らかに主寝室で、そこを自分が使うなんておこがましい気がした。けれど愛人という扱いならそれも妥当なのだろうか。巻島は逡巡する。
 それなら東堂もここで生活をするのなら、一緒に部屋を使うのだろうか。

「・・・・・・ここ、東堂が使ってた部屋じゃねぇの?」

「いいえ」

 真波は即答するが、次は躊躇するように言葉をつなげた。

「・・・・・・この部屋を使っていただくようにちゃんと尽八さんから言い使っていますから。御心配には及びません」

「でも・・・」

 日当たりのいい南向きの部屋は、大きく窓が取られていて、そのむこうは広いバルコニーにつながっている。落ち着いたクリーム色の壁紙の部屋の中に整えられた家具はどれも巻島に好ましい物だった。

「必要なものは午後には届くって聞いてます。それから足らないものがあったら教えてくださいね。すぐになんでも整えますから」

 真波はぐるりと部屋を見回して言った。
 部屋の真ん中に置かれた猫足の着いた丸テーブル。書き物用の飾り机の彫刻もとても美しい。いまは夏で使わない暖炉も、どこもかしこも掃除が行き届いていた。
そんな痕跡はまるでないけれど、いままでにも誰か棲んでいたのだろうか。
 ふと思いついた考えに胸がツキンと痛む。

「・・・・・・きれいにしてあるんだナ」

 疑わしきから、ぽつりとこぼした巻島の言葉に、真波は一瞬キョトンとした表情を見せた。けれどすぐにまたにこりと屈託のない笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます。だって俺、巻島さんが来てくれるの、ずっと待ってたんですよ」

 ずっと。
 真波は玄関先でもそう言っていた。
 ずっととは、どういう意味なのだろう。
 真波は、いつからのことをずっとと言うのだろうか。
 ここに巻島が移ることを以前より聞いていたのか。
 それでも東堂と再会したのは三週間前の夜のことだ。それからだとしても、ずっとという表現は少しおかしい。
 巻島はことりと首を傾げた。
 だいたい、巻島がこの邸に移るように東堂から言われたのは今朝の話だ。朝食の席で突然東堂が告げたのだ。

「棲まわせる邸の準備が整った。午前のうちに黒田に送らせるから準備しておけ」

 有無を言わせない物言いだった。
 もちろん巻島に異議などない。
 押し掛けの愛人候補なのだ。東堂に言われることには諾と応える術しか持たない。それに準備というほどのものもない。巻島がこの邸に持ち込んだものは、東堂の婚約パーティーで着ていたスーツと小さな小箱だけだ。あと持っていってもいいと言うのなら、東堂が揃えてくれた日用品や着替えくらいしかない。



   □
 


 東堂の婚約パーティの夜からは三週間が過ぎていた。
 その間には巻島の世話のためにメイドも部屋を出入りしていた。
 躾の行き届いた者たちばかりなのだろう。巻島を見ても表情一つ動かさず、どのメイドもただただ主人である東堂の命に従うばかりだ。
 まったくそれにしても婚約したばかりの本家の嫡男の部屋に、ベッドに、得体のしれない玉虫色の髪をした男が入り浸っているのだ。どう考えても外聞悪いだろう。
 愛人を志願した巻島の方も、もちろん居心地がいいわけがなかった。けれど東堂の命令は絶対だ。誰一人として巻島を邪険に扱う者はいなかったし、側人筆頭の黒田に至っては、むかし通りに接してくる。東堂の伴侶として認められていたころのものだ。それはかえって巻島の居心地を悪くした。
 だって、勘違いしそうになるからだ。
 もうそのような扱いを受ける身でもないくせに、顔も見られなかったあの女。あの女がいるはずなのに、それでも東堂を手に入れたのは、あの女ではなくて、やはり自分なのだと錯覚しそうになった。そんなわけないのに。
 そんなわけないのに。
 


 今日からここで暮らすのか。
 巻島はもう一度ぐるりと部屋を見回した。
 ずいぶんと居心地のよさそうな部屋だ。
 南向きの大きな窓からはたっぷりの日差しが入り、部屋は明るい。揃えられた家具は最近の
流行ではないけれど、丁寧に保管されていたのだろう。色褪せたり、痛んだりしているところはどこにもない。むしろ毎日磨かれていたのだろう。どこもかしこもピカピカだ。

 何のために、誰のために建てられた邸なのだろう。

 昨今建てたわけではなさそうだから、あの女のためではないと思いたい。
 それは巻島にとって少しの救いだった。
 けれど、だったらいつ頃に東堂が建てさせたのか。
 もしかしたらまだ自分のモノだったころからあったのだろうか。こんな密やかな隠れ家が。
 そう思うと気持ちが重たくなった。

 『俺には巻ちゃん一人だけだから』

 何度も繰り返し聞かされた言葉だった。いまさら真意を疑いたくはない。
 でも・・・。
 巻島はふるふると頭を振った。
 そんなこと、いまはどうでもいいだろう。
 東堂は棲み屋を巻島に与えた。
 この邸に、この部屋に、巻島を囲うことにしてくれたのだ。
 言葉にははっきりとされていないけど、この待遇こそが愛人のそれだろう。
 東堂は巻島の希望を叶えてくれたのだ。
 ここに棲み、東堂の訪れを待つ。
 それが今日からの巻島の新しい生活なのだ。



「さっき言いましたけど、必要なものがあれば何でも言ってくださいね。すぐに用意しますから。午後に荷物が届くって黒田さんから聞いてます」

「あ、の・・・・・・」

「はい?」

「じ・・・・・・東堂は?・・・・・・夜には、ここに?」

「いいえ」

 思い切って訊いてみると、真波はいままでの屈託のない表情を崩した。どこか悲しそうに歪んだ顔を巻島は不思議そうに眺めてくる。

「ごめんなさい。今日は尽八さんはこちらにはいらっしゃらないそうです」

「来ないショ?」

「はい。そう聞いてます。その・・・・・・来ることがあれば連絡すると言われているので」

 酷く落胆した真波の声と同じように巻島の心も落胆する。
 今夜来ないどころか、いつ来るかも決めていないのか。
 これでは体よく本宅から追い出されただけではないか。
 東堂がこの邸を訪れることがないのなら、愛人でも何でもない。
 追い払い、遠ざけて、巻島が自らいなくなるのを待つつもりなのだろうか。

 何ショ・・・。愛人にしてくれたわけじゃないのか。

 だったらここにいても仕方がない。
 だいたい最初から受け入れてもらえるなんて思っていなかった。
 愛人にしてくれ、なんて。
 それでも、ほんの少しの期間だけ夢が見れたと思わなくては。
 指をくわえてどこか知らない場所から眺めているだけよりも、ほんの僅かな期間だったけれど、もう一度そばに暮らして、身体だけでも繋いでもらえただけマシだっただろう。
 どう足掻いたっていずれ他人のモノになる男だ。
 とっくに自分のモノになどならない。

 わかってた。

 そんなこと、わかってたショ、裕介。

 あれは、もう、オレの尽八じゃない。

 巻島は震える身体をそっと両腕で抱きしめた。

「お茶はここで用意しますか?それとも食堂のほうにしますか?」

「ショ?」

 不意に掛けられた不穏な声に、巻島は真波を見た。
 子どものころと同じようにずっとにこにこと屈託のない顔を見せていたのに、いまの真波は言葉とは裏腹に余裕のない表情をしていた。いったいどうしたというのだろう。巻島は何も言っていないのに。まるで巻島の気持ちを見透かしているようん顔だった。

「いや、お茶は」

 もう出ていくから必要ないと巻島が伝えようとするのを遮るように真波はまた口を開いた。

「巻島さんはこの敷地からは出られませんよ」

「え?」

「敷地内ならどこにいてくれてもいいけれど、外へは出られません」

「何でショ?そんな、オレを閉じ込めるようにして」

「そんなの当たり前でしょう」

 動揺する巻島と対比するように真波は落ち着きを取り戻し、また人の食えないような笑顔を浮かべた。

「巻島さんは尽八さんの愛人でしょう。ご主人様の許可なしにここから出ていくなんてとんでもない。俺は貴方をこの敷地から出さないのが仕事だ」

「愛人・・・」

 真波の口から出た言葉を巻島は反芻する。

「そうです」

 真波はにこりと笑って肯定した。

「ここは尽八さんがそのために建てたお邸ですから」

「・・・・・・ショ」

 巻島は自らを抱いていた腕をすとんと落とした。全身から力が抜けて、今にも膝から崩れ落ちそうな気分だった。
 やはりここは誰かを囲うための場所らしい。
 たった一人だなんて、どんな気持ちで告げていたのやら。
 巻島は自分で言うのもなんだが、本当に世間知らずの子供だったから、どうにでも丸め込めると思われていたに違いない。
 東堂がこんな場所を持っていたなんて、いまさらだけど薄ら寒い気分だった。

「ここは尽八さんが決めた人を棲まわせるお邸です」
 
 真波の強く言う言葉に巻島は暗澹とした気持ちになる。
 
「お茶はどこに用意しましょうか?」

 真波はもう一度訊いてきた。口許には薄い笑みを浮かべているのに、その目はまるで笑っていない。ぞくりと巻島は身体を震わせた。

「・・・・・・降りるショ」

「食堂に、降りるショ」

 巻島が途切れそうな小声で伝えると、真波はぺこりと頭を下げた。

「はい。では下でお待ちしています」

 そのまま真波は部屋から出て行った。



   □



 自分は東堂の愛人なのか。

 本人からそんなことは一言も告げられていないけれど。
 ここはそういう邸だと、管理している真波が言うのだからそうなのだろう。
 家具の類が古いのも、綺麗に磨き上げられているのも、今までにそんな存在がここに棲んでいたこともあったのだろう。巻島がまるで知らなかっただけで。
 固い、面倒な身体よりも、やわらかく簡単な身体を東堂が望んでも仕方がない。
 所詮は金で買われた身だったのだから。
 子を成すわけでもない。
 そう思えば昔も今も変わらない待遇だ。
 ましてや今は、会いたいなどと口にする資格もない者に自ら成り下がったのだから、しかたがない。
 たとえ訪れる者がいなくても、ここに棲まうことが証というのなら。
 
 愛人なのだ。

 巻島裕介は、この邸に棲むかぎり、東堂尽八の愛人なのだ。

Send Feedback