[森友口裏合わせ] 8億円の根拠が崩れた
( 4/11 付 )

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省の常識外れの対応が明らかになった。
 「ごみの撤去費用が相当かかった、トラック何千台走ったといった言い方をしてはどうか」
 財務省理財局の職員が、森友側にこう持ちかけていた。ごみの処分量をごまかすため、口裏合わせを依頼していたという。
 ごみの処分量は、土地を売却した際に値引きした約8億円の根拠である。8億円分のごみは本当にあったのかと疑わざるを得ない。「適正な価格で売った」という財務省の説明が根底から崩れたことになる。
 土地は評価額9億5600万円から、ごみの処分費用8億円余を差し引いて1億3400万円で売却された。この8億円の値引きに対しては、これまでも再三疑義が指摘されてきた。
 会計検査院は昨年11月、ごみ処分量の推計根拠が定かでなく、実際の処分量は推計の3~7割だった可能性があるとする検査結果を公表した。
 また、昨年2月には衆院予算委員会で野党議員が「約8億円かけてごみを搬出するとダンプカー4000台になる。確認したか」と追及した。これに対し、当時の佐川宣寿理財局長は「8億円は(国土交通省)大阪航空局が専門的知識に基づき計算した」と正当性を主張している。
 値引きが適切なら口裏を合わせる必要はない。だが、理財局職員はその3日後、森友側に口裏合わせを持ちかけた。佐川氏の答弁との整合性を取ろうとしたのだとしても、あまりに常軌を逸しているといえる。
 8億円の根拠が崩れた今、土地取引を巡る疑惑はますます深まり、疑問は膨らむ一方だ。口裏合わせを誰が指示したのか、その背景についても明らかにしていかなければならない。
 佐川氏が正当性を主張した同じ日に、安倍晋三首相は国会で「私や妻が関係していたならば、首相も国会議員も辞める」と言い切った。首相の発言が口裏合わせの依頼につながった可能性もある。
 財務省は国有地売却を巡る決裁文書を国会に開示する際、複数回登場する「安倍昭恵総理夫人」「特例的な内容」との記述を削除していた。政権に影響が及ばないよう官僚が忖度(そんたく)したことをうかがわせる改ざんである。
 共同通信の世論調査では、森友問題に関して証人喚問を受けた佐川氏の証言に、72%が「納得できない」と回答している。官僚の暴走と片付けず、政治の責任で真相を解き明かすべきである。