日　時　：　２０１５年２月７日（土）６時―９時
場　所　：　神保町区民館（ひまわり館）洋室Ａ
　　　　　　水道橋駅から徒歩１０分、神保町駅から徒歩５分
テーマ　：　アイヌ文化から北方諸島の問題を考える
講　師　：　結城幸司さん、福本昌二さん
資料代　：　１０００円
主　催　：　実行委員会[グループ“シサムをめざして”（首都圏）・朝日健太郎（先駆社）・国富健二（新時代社）・松下知（新時代社）・宇佐照代（ヤイレンカ）・宇佐幸将・宇井眞紀子]

今年も、日本政府が１９８１年に閣議決定した２・７「北方領土の日」を迎えようとしています。樺太を含めた北方諸島は、日本政府のいうように「固有の領土」といえるでしょうか？

千島（クリル）列島と樺太（サハリン）からなる北方諸島は、アイヌ（エンチゥ）、ウィルタ、ニブヒら北方先住民族の領域でした。諸民族はここを舞台に大陸やカムチャツカ方面との交易で栄えました。北方諸島では先住民族の独自の文化圏が育まれていたのです。エンチゥは「樺太アイヌ」と他称されてきた人々の自称で、主にサハリン南部に住んでいました。言語はアイヌ語圏にあるがその他の文化面ではウィルタやニブヒに近い面があるとされます。北方諸島でアイヌは外洋船イタオマ チプに乗って交易をくりひろげ 、毛皮などを売り中国産品「蝦夷錦」などを得ました。

１３世紀にエンチゥ－アイヌは元朝－「靺鞨（まっかつ）」と戦争し（ニブヒ・ウィルタと戦争したという説もあります）、それが英雄叙事詩ユカラに反映されたとも言われます。アイヌ民族楽器のトンコリは樺太で残存していたため今日に伝わり、アボリジニのディジュリドゥに似たへニュードはウィルタ・ニブヒからアイヌに伝来したとされます。要するに北方諸島では先住民族の文化が花開いていたのです。アイヌ文化を伝承する活動は続いており、刺繍、木彫り、アイヌ語教室、歌、踊り、ムックリ、トンコリの演奏、「七五郎沢の狐」へと継承されています。

ところが北方諸島は、１８５５年の日露通好条 約以降、日本とロシアの近代国家形成や帝国主義的な領土分割によって、勝手に国境が引かれました。諸民族は自由な交易を断たれてしまいました。国境画定にともないエンチゥ（樺太アイヌ）やロシア語・英語を話せるためスパイ扱いされた千島アイヌは強制移住で翻弄されました。

第二次大戦後は、日ロが「北方領土問題」を争っています。しかし、日本がいう「固有の領土論」もロシアがいう「戦勝論」も、先住民族を無視しており大きな疑問が残ります。今もなお、日ロ両政府はアイヌ民族を無視して「領土交渉」を進めようとしています。日ロ両政府の接近と交渉に関しては両政府とも意欲を示していますが、ウクライナがらみでアメリカが難色を示しています。

日ロ両政府が、「領土交渉」を行うのなら、アイヌ民族の先住権・自決権を認めてアイヌ民族の参加を保証すべきです。なぜなら北方四島をふくめてクリル（千島）列島、サハリン（樺太）、北海道は、アイヌ民族がアイヌモシリ（人間が住む大地）と呼んできたようにアイヌ民族や北方諸民族の先住の地だからです。

２００７年に成立した「先住民族の権利に関する国連宣言」は、第３条で自己決定権、第4条で自治権を定めています。エンチゥ、アイヌらには先住権－自治権があります。同宣言に賛成した日本はこれを尊重すべきで、棄権したロシアは態度を見直すべきです。２００８年にはアイヌ民族を先住民族とすることを求める決議が国会両院で採択 され、政府もこれを踏襲しています。それでも、「アイヌ民族はもういない」と発言する札幌市議が登場しているので、このことの意味をさらに深めていく必要があるのではないでしょうか。

このような中、結城幸司さん　福本昌二さんをお招きして、アイヌ文化から北方諸島の問題を考えていきたいと思います。当日は、アニメ「七五郎沢の狐」試写会を行う予定です。結城幸司さんは、函館の廃棄物最終処分場を題材に、環境保護を訴えるアイヌ語のカムイユーカラを創作し原画を手がけました。音楽はトンコリ奏者の福本昌二さん達、監督は映像作家杉原由美子さんです。