「まだ眠いよ……」

「文句言わない。ほら、仕事に遅れるぞ?」

「うぅ……分かったよ……」

不満そうにふてくされ、着替えはじめる。

彼女は去年から会社勤めを始めている。と言っても、朝は弱いし夜更かしも止めない。ちゃんと教育してきたつもりなんだけどな。

がさつで大雑把……ひまわりは、間違いなく母ちゃんの娘だな。

「――お兄ちゃん!行ってきます!」

「こらひまわり!ちゃんと父ちゃん達に挨拶したのか!?」

「えええ!?時間ないよ!」

「時間がないのはお前のせいだろ!ほら!さっさと挨拶する!」

「……分かったよもう!お兄ちゃんは変なとこだけ真面目なんだから!」

ひまわりはスーツ姿のまま、仏壇の前に手を合わせる。

「――お父さん!お母さん!遅刻しそうだけど行ってきます!」

そう叫ぶやいなや、ひまわりは忙しく玄関を飛び出していった。

「……ほんと、騒々しい奴だな……」

窓から走っていくひまわりを見送った後、今度はオラが仏壇の前に座る。

 

「……父ちゃん、母ちゃん。ひまわりは今日も元気です。――行ってきます」

窓の外から、家の中に暖かい日射しが射し込んでいた。

「――野原くん、この企画の件だが……」

「はい。これはですね……」

会社の中で、オラと係長は、次の企画について話をしていた。

この会社に勤めてもう9年……仕事にもすっかり慣れた。高校卒業と同時に入社したこの会社は、会社の規模は小さいが給料がいい。

おまけに上司も温かみのある人が多く、色々とオラを助けてくれている。

「――あ、もうこんな時間!帰らないと……」

「ああ野原くん!この後、一杯どうかね!」

「あ……すみません係長、これから家でご飯を作らないといけないので……」

「少しくらいいいじゃないか」

「はあ……でも、妹がお腹を空かせて帰りますし……」

「……そうか。キミは、妹さんと二人暮らしだったな……分かった。早く帰ってあげなさい」

「本当にすみません。それでは……」

足早に会社を出て、そのまま家に向かう。その帰りにスーパーに寄り、食材を購入する。

ひまわりは料理が苦手だ。たまに教えるんだが、母ちゃんに似たのか、飽きっぽくてすぐに止めてしまう。

ホント、似なくていいところばかり似るもんだ……

「――ただいまー!」