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【社説】

河野外相訪韓 非核化に日本も役割を

 河野太郎外相が十日、韓国を訪問した。四月下旬に開かれる南北首脳会談を前にした調整だが、日本は、韓国に協力し、北朝鮮の非核化に積極的な役割を果たす考えを表明すべきだ。

 日本の外相の韓国訪問は二年四カ月ぶり。河野氏は十一日までの滞在期間中、文在寅(ムンジェイン)大統領と会談し、今月二十七日に予定されている北朝鮮と韓国による南北首脳会談で、拉致問題を取り上げるよう求める考えだ。

 これに続き今月中旬には、安倍晋三首相が訪米する。金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長との米朝首脳会談を控えるトランプ米大統領と意見交換し、やはり拉致問題を会談で提起するよう求めるという。

 日本にとって拉致問題は、人権に関わる重要な問題だ。

 ただ、北朝鮮は約六十発の核を持っているとされる。全ての問題を最初から提起するより、対話ムードを維持しつつ、非核化に集中する工夫も必要だろう。

 南北首脳会談を前にした韓国政府は、北朝鮮への圧力を維持しつつ、人権や南北の経済協力問題は、深く議論しない方針だ。

 日本は現在、朝鮮半島をめぐる情勢の中で、北朝鮮と接点を持てず、「蚊帳の外」にいる。

 状況を見極めるつもりなのだろうが、朝鮮半島の情勢を安定したものにするためにも、より前向きに動くべきだ。

 例えば、非核化を実現するため、国際原子力機関(IAEA)の査察費用の負担だ。米韓首脳を通じ、北朝鮮に直接対話の意向を伝えることも考えられる。

 将来の国交正常化を念頭にした日朝間の交渉が始まれば、国際的に孤立した北朝鮮が、核・ミサイル廃棄に踏み出す動機となる。

 拉致問題も結局は、外交的な解決しか方法はない。韓国側も、日本の役割に期待を持っている。

 今のところ安倍政権は、北朝鮮の非核化の姿勢に懐疑的だ。もちろん過去の経緯を考えれば、簡単に信じることはできない。

 しかし、米国との水面下の接触で北朝鮮は、非核化を首脳会談の議題として受け入れる考えを伝えている。会談に向けた準備も進めているようだ。

 一方トランプ氏も、米朝首脳会談が「五月から六月上旬」に行われるとの見通しを示し、「世界にとって、とても興味深いものになるだろう」と期待をかけている。

 緊張緩和の動きを確実なものにする段階であり、今こそ日本は外交力を発揮してほしい。

 

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