26歳「発達障害」の彼がやっと見つけた天職

引きこもり、入院、いじめられた過去も

学校に行くのが嫌で引きこもっていた宮長さんだったが、引きこもり中に出会ったのがプログラミングだった。きっかけは親戚からもらったお古のパソコン。最初のうちはパソコンに内蔵されているゲームをプレイしていたが、次第にプログラミングすることにハマっていった。

「プログラミングってルールが決まっていて、書けば書いたとおりに動いてくれる。それが楽しくて、小学5年生のとき、フリーソフトを作りました。保存もできないただのメモ帳(テキストボックス)で、今で言うと付箋アプリのようなものです。でも、それを使ってくれる人がいるということで、すごく承認欲求が満たされたんです。自分は絵も描けないし、歌もうまくないので、発表できるものがたまたまプログラミングだったんです」(宮長さん)

宮長さんは「すごくシンプルなものですよ」と笑っていたが、ITに疎い筆者からすると、小学5年生にしてフリーソフトを作り上げるとは天才少年を想像してしまう。

入院生活で自分を見つめ直すも、不登校が続く

やがて、中学校に入学した宮長さん。中学でも特別支援学級に入れられ、学校生活は苦痛だった。なぜ学校が嫌だったのか聞いてみるも、宮長さんからはっきりした答えが出ることはなかった。ただ、母親からは「あなたは小さいときから相手の気持ちを考えられず、すぐに自分からケンカをふっかけていっていた」と言われたことがあるという。コミュニケーションの取り方に問題があったのかもしれない。そして、中学2年生のときに3カ月間だけ心療内科で入院生活を送ることになる。

「当時、ASDの権威の先生に診てもらっていたのですが、『そこまで君はひどくないから、一度、自分よりも大変な症状の患者さんと一緒に入院してみたら?』と、荒療治された感じでした。とりあえず、そういう環境に身を置けば良くなるかもしれないと」(宮長さん)

基本的に病院の敷地から出ることはできなかったが、敷地内にはコンビニや図書館もあり、生活するうえで困ることはなかった。個室はなく4人部屋で集団生活だった。昼間は隣にある特別支援学校へ通い、定期的にカウンセリングを受けた。普段はごく普通なのに、時おり精神状態が不安定になって暴れる患者もおり、そのような患者は隔離された。

ケガや病気での入院生活が楽しかったと言う人は少ない。宮長さんもさぞかしつらかったのかと思いきや「つらくはなかったし、自分の症状は軽いのだと思えた。自分にとって折り合いをつけるための入院で、自分を見つめ直せた」という。3カ月間の入院生活を経て、それまで通っていた地元の中学校に3年生で復帰した。心新たに頑張ろうと思っていたのに、現実はそうはいかなかった。

次ページ教室にいづらくなってしまい、再び不登校に
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAMEd2e9887b7b97
    この世で「最も発達障害ではない人」の「人間像」って、どんなんだろう?
    up113
    down2
    2017/12/25 08:08
  • NO NAME348219b2d506
    障害かどうかの医学的定義は、「自分はおかしいんじゃないか?」式の観念的なもんじゃなくて、単純にそのせいで実際の社会生活が困難になってるかどうかだけ。
    自分の個性のクセの強さを気にするの自体はともかく、障害者が苦しむのは圧倒的に仕事がなかったり、あっても待遇悪かったりみたいな社会環境のほう。
    能力低いなら仕方ない、役立たずに食わせる飯はないみたいな福祉ガン無視の考え方も最近強いしね。
    まぁ健常者でも生きづらい世の中だし。
    up120
    down15
    2017/12/25 08:40
  • NO NAMEecca6b551658
    過去、今で言う発達障害と言われた人のなかにはすばらしい才能を開花させた方は大勢いらっしゃいます。
    彼らの才能を開花させたのは、自身の努力や気づきによるほか彼らを支える周りの親兄弟や教師それに社会の仕組みなどの影響が大きいです。
    彼らの才能を見つけ出すための色々な試みをし、夫々の才能に早く気づいてあげることです。
    特に教師の役割は重要にもかかわらず、残念ながら文科省の教員養成プログラムには彼らへの指導プロトコルは僅かです。教師自身の才能や裁量に委ねられている部分が大きいのです。
    多くの教師は彼らに対してどう対応して良いかわからず、それによる生徒間の問題も解決できないまま放置し悪化しているケースが多いのではないでしょうか。これはいじめ問題にも通じます。
    成功例を全国に広めて、正しい指導できる教師を増やして行くことが肝要だと考えます。
    up92
    down18
    2017/12/25 09:34
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
日米とも深刻<br>職場ストレス死

NHKと電通で起きた過労死事件。米国でも劣悪な労働環境が原因で年約12万人が命を落とすと推計される。スタンフォード大学教授に聞く「死なない職場づくり」。今、何ができるのか。