妖精<人間とは物事がうまくいかなかったときに理由を求める生き物である。状況やタイミング天気や運勢。さまざまな言い訳を引っ張り出しては自分を慰める。「こんなはずではなかった」「もう一度やり直せれば」と。やり直せればホントにうまくいくのだろうか?一度目でできなかったことが二度目でできる自信はどっから来るのだろうか?>
男の名前は岩瀬健。今この男の本当の実力が試されている。キスには成功したものの肝心の告白を避けていては結婚はおろか恋愛に発展するはずもない。果たしてこの男に幸せは訪れるのであろうか?
礼さん大学2年の秋。礼さんの誕生日がきっかけでお二人の距離が徐々に近づいていくのであります。
「わたしの十代って何だったんですかね」って言ってた気がするけど。
多田でもこの日頑張ったお陰でコンペで大賞取れたんだし無駄じゃなかったんじゃない?
健《礼が二十歳を迎えた瞬間一緒にいたのは多田さんだった。何で無理してでも会いに行かなかったんだろう。どうして真っ先に祝ってやれなかったんだろう》
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戻って礼の誕生日祝ってやりてぇけど写真に俺写って…》
いないとダメなのかと思って。勝手にダメだときめつけてチャレンジもせずにあきらめる。
ぶつかりもせずに自らの手で奇跡の扉を閉じていては幸せなど舞い込むわけがない。
「当たって砕けろ」って言葉があるがホントに砕けた人間なんて見たことあるか?
幹雄だから浮気なんかしてないって言ってんじゃん。昨日の夜は健のウチにいたって。
優子いっつも都合が悪くなると「健のウチ」って嘘ついて。
尚さあいよいよ一騎打ちの様相を呈してまいりました!
幹雄レンタルビデオ屋に行って健がビデオ借りるのつきあってた。
西尾バカ!お前。今これめちゃめちゃはやってんじゃねえかよ!
西尾これが店用。保存用はもう1個ウチにあんの。壊すなよ。
幹雄オッケー。分かった。じゃあ合鍵ポストに入れとくわ。
エリっていうか何でわたしたちまで手伝わされてるわけ!?
尚3年ぐらいじゃない?つーか終わるときあっけねえな。
尚あーっ。おでこにチューだ。白昼堂々おでこにチュー。あっ。
尚はぁー。つーかいちばんダメージ大きいの健だな。無駄に水かぶったもんな。
おごるつったら普通あれだろ!(幹雄)バーカ。そんな金ねえよ。
俺らいつになったらすき焼き定食を卒業できんのかね?
俺1回食ったことあるよ。(尚)あっ!裏切り者!お前なんか…。お前なんかもう友達じゃないぞ!
はあ!?お前すき焼きのほうが全然大事!よっしゃー!
重人黒く濁った海から牛肉を救い出し卵の黄色い湖にそっと浮かべる。
重人アッハハハハハ!青年に捧げたいことはただみ言に尽きる。「すなわち働け。もっと働け。あくまで働け」だ。バイビスマルク。
わたしには無理。人間には向き不向きがあると思うし。
エリ多分さ向いてるとか向いてないとかじゃないんじゃないかな。
失いたくないものがあるときにさ格好悪くても思いきって一歩が踏み出せるかどうかなんだろうね。
多田コンペに出品する予定だった3年生が取りやめたんでぜひ吉田さんにと思って。
《あのときのコンペか…》(エリ)すごいじゃんこれ。副賞が本場米沢牛すき焼きセットだって。
《この年礼は最年少でコンペの大賞を取った。そして希望だった大学院の推薦をもらった。そう。
礼の人生にとってこのコンペはすごく大事な意味を持っていた》
尚ああでも締め切り今日の消印有効って書いてある。間に合うの?これ。
多田あれに多少手を加えればこのコンペのテーマにも合うと思うんです。中央郵便局なら24時までに出せば消印を押してくれますし時間的にもギリギリ間に合います。大賞も狙えると思うんです。
エリ今日は礼の十代最後の日だからみんなで夕飯食べてその後カウントダウンパーティーの予定だったんだけどね。
じゃあこの前の課題見てみます。そうしましょうか。はい。
多田今回のコンペのテーマなんですけどパブリックな空間かプライベートな空間かは自由に決めていいそうです。
わたし風邪ひいて二十歳の誕生日迎えるの絶対嫌だから。
《人生の重要な時間を戦っている彼女を邪魔する権利なんて俺にはなかった。頑張ってる彼女に何もしてやれない自分がもどかしかった》
誕生日プレゼントこれで済ませようと思ってるんでしょ!?
もうー!ケンゾーなんかにかまってる場合じゃないの!
お金ないんだからさせめて時間止めるとか時間戻すとか。
中学3年の卒業式前に手紙書いてさ好きだった人を待ち伏せしてたのね。
礼ずーっと待ってたけどその日にかぎってそこに来なかったの。
そんときわたしたちってこういう運命なのかなって思っちゃったの。
それでもいつか渡そうと思ってずっとその手紙持ってたんだけど渡せないままずっと来ちゃった。
ちゃんとぶつかんないと永久に引きずっちゃうのかも。
今日働かせてくんねえかな?(幹雄)えっ!今日!?いやいきなりは無理だろ。頼むよ。ちょっと聞いてみてよ。
幹雄だってお前風邪ひいてんじゃん。それ無理。無理だって。
幹雄お前さぁたまに妙に優しくなるときあるよな礼に。そうやってコロコロ態度変えるのって作戦なの?
たまに優しかったりするのって余計相手傷つけるだろ。
お前だって50万もする業務用のカメラ買うために必死にバイトしてんじゃん。
尚そんなのいいの。俺はこうやって二人でいれればそれでいいの。
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いや。全然風邪ひいてないっす。(店長)悪いけど帰ってもらえる?
幹雄あいつふだん金ないときは貸してくれって言うのに今日にかぎって働くってきかないんだよ!やめろっつってんのにすげえ無理してんの。もう寝てるし大丈夫だとは思うんだけど。
エリ会えなくても我慢する。もうわがままも言わないから!
仁王今の俺にはもうエリと向き合うだけの気力残ってないんだ。
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ゲリラ作戦失敗であります。負傷者1名相当なダメージであります!
大体なお前がバカだったら俺どうなっちゃうんだよお前!
おっおう!もう。もうこっから…。もうこっから向こうに行かない。もう一歩も引かない!
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《礼の誕生日をちゃんと祝ってやったことは一度もなかった。
祝ってもらってるばっかりでおめでとうのひと言も言ったことがない》
《過去に戻ってきてもこうしてじっと寝ていることしかできないなんて》
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エリ失いたくないものがあるときにさ格好悪くても思いきって一歩が踏み出せるかどうかなんだろうね
多田自分に一から向き合わないと納得いく答えなんて見つからないですよね
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礼ごめんなさい。わたしやっぱりちょっと行ってきます
十代のうちにどうしても解いておかなきゃいけない問題があったのに。今日まで本当の答えを知るのが怖くてずっと逃げてました。
でも思ったんです。向き合わないまま二十歳になるのは嫌だなって
多田このコンペを犠牲にしてでも行く価値のある問題なんですか?
勝手なこと言ってるのは分かってます。でも十代最後の今日きちんと向き合っておかないときっと一生後悔すると思う
ああいいえ。自分の気持ちに素直であることは決して悪いことではないと思います
吉田さんの思うとおり悔いのないようにやってみるのがいちばんです。もしそこに答えがなかったとしてもまた別の問題を見つければいいんですから
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いつも近くにいるからなかなか素直に言えないことたくさんあってさ。
わたしケンゾーのことがね。ケンゾーのことがずっと!
℡(留守電アナウンス)「ただいま留守にしています。恐れ入りますがピッと鳴ったらお名前とご用件をお話しください」
℡(男)あっ健?ふざけんなよ。携帯ずっとつながんないし。
お前今日の合コン連絡ないってことはちゃんと向かってんだよな?待ってるからな?
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あんたさ夕方から来てるけどこんな時間まで何してんの?
すいません。もう少しだけ待ってもらっていいですか?
どうしても今日の日付の消印を押してもらわないと困るんです。
局員いや。そんなこと言われてもさぁ。ほら。ここにも書いてあるでしょ?24時で閉まるって。ねっ?
あと10分でいいんで待ってください!お願いします!
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初めて手紙書きます。高校でもまたわたしたち一緒だね。合格発表のとき自分のよりケンゾーの番号のほうが気になりました。番号を見つけたときは本当にうれしかったです」
「口では『何で高校もまた一緒なの?』とか『マネしないでよ』とか言ってるけど会うとなかなか素直になれなくてあんな言い方になっちゃいます。許してください。ごめんね」
「小学校3年で転校してきたとき消しゴムなくって困ってたわたしに半分くれたの覚えてる?あの日からわたしにとって岩瀬健はケンゾーという特別な人になりました」
「出会ったころからずっとそばでケンゾーを見ていました」
「野球が好きなのにあんまり足が速くなかったりいっぱい食べるとすぐにおなか壊したりわたしにすぐムキになったりホントは優しいのにそっけないふりをしたり」
「ケンカもいっぱいしたし頭にくることもたくさんあったけどケンゾーはわたしにとってずっとずっといちばん大切な人です。大切なので言わなくていいこともついつい言っちゃいます」
「だから本当に言いたかったことがどんどん言いづらくなってしまいました。ケンゾーと今までどおり話せなくなったら嫌だなって思ったらなかなか言いたいことが言えませんでした」
「ケンゾーのことがずっと好きでした。ケンゾーのことが大好きです」
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コンペの委員会に電話したらあしたの朝までに直接持ってくれば受け付けを認めてくれるそうです。
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僕小学校2年のとき空に浮かんでる雲をどうしても捕まえたくて親にねだりにねだって富士山登ったことがあるんです。
リュックからビニール袋をいっぱい取り出して雲を詰め込もうとしたんですがそこでがく然としました。
でも今思うとそういうことができてよかったなぁって。
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お前は彼女のためを思い課題が提出し終わってから祝ってやろうと思ってたわけだが。
彼女がホントに望んでたことはコンペに受かることじゃなかった。
お互いに相手を思うあまりすれ違ってしまうなんて皮肉なもんだな。
そう思っても自分本位に行動できないのは相手のことが好きだからなんだろうな。
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