シリア空軍基地への空爆、イスラエルが実施=シリアとロシア

シリア中部にあるT4・ティヤス空軍基地の衛星写真(2018年) Image copyright Google/DigitalGlobe
Image caption シリア中部にあるT4・ティヤス空軍基地の衛星写真(2018年)

シリア中部ホムスに近い軍用飛行場が空爆を受けたことをめぐり、シリア政府と同盟国のロシアは9日、イスラエルが空爆を実施したと述べた。

空爆はT4と呼ばれているティヤス空軍基地が標的となった。英国に拠点を置くシリア人権監視団は、複数の国籍の戦闘員14人が死亡したと明らかにした。複数の国籍とはこの場合、イラン人やイランが支援するイスラム教シーア派の民兵を意味する。

シリア国営通信は軍事筋の話として、イスラエルによるT4へのミサイル攻撃を防空警備システムが迎撃したと報道。ミサイルを発射したのは、レバノン領空を飛ぶイスラエルF15戦闘機だと伝えた。

ロシア国防省は、発射されたミサイル8発のうち5発が迎撃されたが、3発が空軍基地の西側に到達したと明らかにした。

過去にシリアを空爆したことがあるイスラエルはコメントしていない。シリアは当初、米国とが空爆を実施した疑いがあるとしていた。

これに先立ちシリアでは、ダマスカス近郊の反体制派支配地域にあるドゥーマに対する攻撃で化学兵器が使われた疑いが出ており、国際社会の懸念が高まっていた。

ドナルド・トランプ米大統領はツイッターで、シリアのバッシャール・アル・アサド大統領を「けだもの」と呼び、同盟国のイランやロシアと共にアサド大統領が「大きな代償を払うことになる」と警告した。

「シリアで無謀な化学攻撃があり、女性や子供を含め、大勢が死んだ。残虐行為のあった地域は封鎖され、シリア軍に包囲されているので、世界はまったく立ち入れない。プーチン大統領とロシアとイランに、けだものアサドを支援した責任がある。大きな……」

「……代償を払うことになる。医療支援と査察のため、ただちに地域を開放しろ。またしても何の理由もない人道的な大惨事だ。病んでる!」(太文字は原文で大文字による強調箇所)

一方、ドゥーマに残っていた反政府勢力は降伏し、シリア政府との合意に基づき、バスによる退避を行っている。

イスラエルが関与した可能性は?

イスラエルは今年2月、シリアを標的とした大規模な空爆を実施している。

攻撃はイランのドローン(無人飛行機)によるイスラエル空域侵入を受けたもので、さらに、最初の空爆でイスラエルのF16戦闘機が撃墜されたことを受けて、再び空爆を行った。

イスラエル軍はイランとイランの革命防衛隊はティヤス空軍基地を長らく使用してきており、イスラエルに敵対的で、シリア政府軍と同盟関係にあるレバノンのイスラム教シーア派集団、ヒズボラなどへの武器提供に使われていると指摘している。

イスラエル軍は、自国空域を侵入したドローンも、この基地から飛ばされていたと主張している。

ドゥーマでの攻撃との関連性は?

トランプ大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は8日、共同声明を出し、疑われる化学兵器使用に「強力な共同の対抗措置で連携する」と表明した。

米政府高官は、米国はシリア政府軍の基地を空爆していないとしている。国防総省は発表文で、「現時点で、国防総省はシリアで空爆は実施していない」とした上で、「しかし、我々は状況を注視しており、シリアあるいは別の場所で、化学兵器の使用者の責任を問うために現在行われている外交努力を支持している」と述べた。

フランスも同様に空爆を否定している。

国営シリア・アラブ通信(SANA)は、ティヤスへの空爆について「米国による攻撃の疑い」と報じていたが、その後米国への言及を削除した。

米国は2017年4月に、巡航ミサイル「トマホーク」59発をシリアのシュアイラート空軍基地に向けて発射した。反政府勢力が支配する北西部イドリブ県ハンシャイフンで化学兵器による攻撃が行われたことを受けた。

シリアのホムス(Homs)、ダマスカス(Damascus)などの位置
Image caption シリアのホムス(Homs)、ダマスカス(Damascus)などの位置

ドゥーマで何が起きたのか?

医療関係者らによると、7日のドゥーマへの攻撃で数十人が死亡している。

「ホワイト・ヘルメッツ」として知られるボランティア団体「シリア民間防衛隊」が撮影したビデオでは、家屋内に複数の男女と子供たちが遺体となって横たわる様子が映っている。遺体の多くは口から白い泡を出している。

しかし、何が実際に起きたのか、死者数について独立的に確認できていない。

国連安全保障理事会は、ドゥーマでの化学兵器使用疑惑に関する緊急会合を9日に開く予定。

シリアとロシアは化学兵器による攻撃を否定している。両国は、ドゥーマを支配する反体制派「ジャイシュ・アル・イスラム(イスラム軍)」と撤退について合意が得られたとしている。

ロシアは、ドゥーマでの軍事行動は終了したと述べた。合意に基づき、8000人の戦闘員、家族・親族の4万人がバス100台で破壊された町から撤退した。反体制派勢力によって人質にされていた人々も解放された。

これにより、政府軍は東グータ全体を掌握した。

アナリストらは、アサド大統領にとって、2016年に北部の主要都市アレッポの陥落以来の軍事的成功になったと指摘した。何週間にもわたる政府軍の攻撃で1600人以上が死亡した。

(英語記事 Syria conflict: Israel blamed for attack on airfield

関連トピックス

この話題についてさらに読む